ahamoの大盛りオプションで100GBに

 ドコモのオンライン専用料金プラン「ahamo」が、6月1日から「ahamo大盛り」を開始する。通常はデータ容量が20GBのahamoだが、「大盛りオプション」を足すことで80GBが追加され、計100GBの大容量プランとして利用できるようになる。各キャリアとも、メインブランドでは大容量プランがデータ容量無制限になっているため、100GBという区切りでどこまで通信が利用できるのかは少々分かりづらいかもしれない。ここでは、100GBプランで実際にどのようなことができるのか、実体験を交えつつ試算してみた。

ドコモが6月から開始する「ahamo大盛り」は、計100GBの大容量プランだ

ドコモが6月から開始する「ahamo大盛り」は、計100GBの大容量プランだ

動画視聴のデータ使用量

 大容量というとすぐに思いつくのは、動画視聴だろう。1秒間に24枚なり30枚なり60枚なりの静止画をつないで動きを表現しているためで、写真1枚に比べるとデータ量は上がりやすい。解像度が高いと、そのぶんだけデータ量はさらに増えることになる。これを数十分から1時間以上繰り返すため、動画はデータ消費量が多くなるコンテンツの筆頭と言っても過言ではない。キャリアが大容量プランの利用シーンとして挙げているのも、やはり動画だ。

 どの程度のデータ量になるのかはサービスによってまちまち。独自の圧縮をかけ、モバイル回線でのデータ消費量を最小限に抑えているケースもある。例えば、Netflixには画質ごとにデータ消費量がどの程度になるのかの目安が記載されている。モバイル回線の場合、「データ使用量:小」に設定していると、1GBで6時間の視聴が可能だが、画質は低下する。

Netflixでは、目安として設定ごとのデータ使用量が記載されている。「データ使用量:小」の場合、1GBで6時間も再生が可能だ

Netflixでは、目安として設定ごとのデータ使用量が記載されている。「データ使用量:小」の場合、1GBで6時間も再生が可能だ

 これに対し、「データ使用量:多」は、端末や再生するコンテンツに合わせた最高の画質になる。フルHD(1080p)以上のディスプレイを搭載した端末で、それに合わせたコンテンツを再生すると、20分で1GBを超えるケースもあるという。実際、メインディスプレイの解像度がQXGA+(2208×1768ドット)と高い「Galaxy Z Fold3 5G」でNetflixの「ULTRAMAN」(シーズン1)を1話、約25分間再生してみたところ、同アプリのデータ消費量は300MBを上回った。

 とは言え、同作はシーズン1が13話、シーズン2が6話で計19話。1話あたり約300MBとしても、5700MB=約5.6GBで、データ容量の上限である100GBにはまったく届かない。同等のコンテンツを1日1話程度見たとしても、9GB程度に収まる。仮に、視聴時間を1日1時間程度に増やした場合、データ使用量は1日につき約1.2GB。30日換算で36GBになり、これでも100GBを使い切ることはできない。

Netflixで25分程度のアニメを1話見たあとのデータ使用量。元々500MB程度利用していたため、差し引きで約300MBを消費したことになる

Netflixで25分程度のアニメを1話見たあとのデータ使用量。元々500MB程度利用していたため、差し引きで約300MBを消費したことになる

アプリダウンロード、ブラウジング、データアップロード

 次にデータ消費量が多いのは、アプリのダウンロードだろう。ゲームなどの超大作アプリであれば、1本あたり数GBというものもある。ブラウジングも、チリも積もれば山となるで、月に数GBから数十GBになることもあるだろう。筆者の場合、5月は本稿執筆時点の24日まででChromeに12.55GBを使用している。4月は16.2GB、3月は16.61GBのため、おおむね同程度、ブラウジングで消費しているようだ。

大作のゲームアプリになると、1本あたり数GBの容量になるケースも

大作のゲームアプリになると、1本あたり数GBの容量になるケースも

画像や動画をどれだけ使っているかにもよるが、Chromeなどでのブラウジングも意外とデータを消費しやすい。筆者の場合、月におおむね16GB程度、サイトを閲覧している

画像や動画をどれだけ使っているかにもよるが、Chromeなどでのブラウジングも意外とデータを消費しやすい。筆者の場合、月におおむね16GB程度、サイトを閲覧している

 また、Googleフォトなどの自動でデータをアップロードするアプリも、データ容量を消費しがちだ。モバイル回線でのアップロードを有効にしている場合、撮ったら撮ったぶんだけクラウド上に写真や動画がアップロードされるため、データ通信の消費量は多くなる。スマホの標準的な画素数は1200万画素程度で、データサイズも数MBといったところだが、動画となると話は変わってくる。

 特に最近のモデルでは、4K(4000×2000ドット)で撮影可能なことが多く、フレームレートも60fpsに設定できる。こうして撮った動画は、簡単にGB級のサイズになってしまう。筆者が撮った動画を見てみると、4Kで50秒程度撮っただけで、サイズは315MBになった。5分間カメラを回していただけで、サイズは1.5GB程度になってしまう。こうした動画を隔日でアップロードしたとすると、データ容量は22.5GBになる。

4K以上の解像度で撮った動画は、特にデータのサイズが大きくなる。ただし、100GBプランなら、こうした動画もモバイル回線でアップロードできる

4K以上の解像度で撮った動画は、特にデータのサイズが大きくなる。ただし、100GBプランなら、こうした動画もモバイル回線でアップロードできる

ビデオ会議やテザリングは、なかなかの使用量

 双方向の通信を行うビデオ会議アプリも、データの消費量が多い。筆者のケースで言うと、5月に1回だけ、モバイル回線で「Google Meet」を使用したが、20分弱で51MBを消費していた。比較的データの消費量は少ないが、これはスライドを見ながらプレゼンを聞いていただけだったからかもしれない。多いときには、1時間で1GB弱になるケースもある。

 こうして見ていくと、いずれかのアプリ1つで100GBに達してしまうケースは少ない。データの消費量が激しいアプリを使ったとしても、100GBあれば、実質的に使い放題に近い感覚で利用できることが分かる。ここまで挙げてきたように、Netflixを毎日1時間見て、思う存分ブラウジングを行い、4Kで2日1回5分程度の動画をアップロードして、さらに月に何本かゲームアプリをダウロードして、かつビデオ会議にも参加するというのは、相当ヘビーな使い方だ。それでも、合算すると100GBには満たない。むしろ、データ容量ではなくスマホ側のバッテリーや時間の方が足りなくなってしまうおそれがある。

4月に筆者が使用したデータ通信量。スマホはWi-Fiに一切接続せず、モバイル回線だけで通信しているが、60GB程度に収まっている

4月に筆者が使用したデータ通信量。スマホはWi-Fiに一切接続せず、モバイル回線だけで通信しているが、60GB程度に収まっている

 ただし、ここまであえて触れてこなかなかったテザリングを利用すると、話は変わってくる。PCのように、複数のアプリを同時に開けて、かつバックグラウンドで遠慮なくダウンロードやアップロードを行うデバイスがつながると、通信量は飛躍的に伸びるからだ。例えば、GoogleドライブやOneDriveでデータをクラウドと同期している場合、フォルダ内に画像や動画を放り込むだけで、データ通信が始まってしまう。

 KDDIやソフトバンクが、データ容量無制限プランでテザリングに制限をかけているのは、そのためだ。こうした使い方をするのであれば、テザリングまで含めて無制限の料金プランに加入したり、データ容量の制限がない固定回線を自宅に引いたりした方がいいだろう。その意味で、100GBを無制限に近い感覚で使えるのは、スマホ単体でWi-Fiにつながず利用した場合という但し書きがつく。テザリングを使うなら無制限プラン、逆にWi-Fiにつなぐことが多ければ、20GB程度の中容量プランで十分と言えるだろう。

 もっとも、これはあくまで今の通信インフラを前提にした話。大容量のデータを瞬時にやり取りできる5Gのエリアがさらに広がり、それを生かしたメタバースなどのコンテンツが普及してくると、ユーザーのデータ利用量はさらに上がることになる。実際、ユーザーの平均通信量は年々増加している。この傾向が加速すれば、将来、100GBでは実質使い放題と言えないような状況になる可能性もありそうだ。

著者プロフィール

石野 純也(いしのじゅんや)

ケータイジャーナリスト/ライター。出版社で携帯電話関連のムック編集や立ち上げに携わったあと独立。IT関連専門媒体から経済誌、新聞等、幅広い媒体で執筆を行う。主な連載メディアはITmedia Mobile、毎日新聞経済プレミア、Engadget日本版、東洋経済オンラインなど。