Z世代が生まれた背景と特徴

一般的に、1990年代後半から2012年頃に生まれた人を「Z世代」と呼びます。もともとは米国から広まった世代分類を指す言葉。65〜80年生まれを「X世代」、81〜95年生まれを「Y世代(ミレニアル世代)」と名付けたので、続く世代をZ世代としました。ミレニアル世代の次であるため「ポストミレニアル世代」と表現されることもあります。

Z世代が生まれた時代はインターネットが急激に普及し、アナログからデジタル社会へと変化してきた時代でした。バブル崩壊後の経済停滞やリーマンショック等の経済不況に見舞われた時代でもあり、これらの社会背景が、Z世代の根幹となっています。

Z世代をライフスタイルの観点から見ると、以下の特徴が挙げられます。

スマホやSNSに関するリテラシーが高い
様々なインターネットサービスに触れながら成長した、「デジタルネイティブ」世代。また、初代iPhoneの日本発売が2008年なので、早くからスマホに慣れ親しんでいる「スマホネイティブ」でもある。このため、スマホやSNSに関するリテラシーが非常に高い。反面、マスメディア離れが顕著で、新聞やTVをあまり見ない。

リアルな体験に価値を感じる
デジタル世界が身近だからこそ、リアルな体験に価値を見いだす傾向にある。ハイブランドや有名ブランドの所有に興味が薄く、「自分の価値観に合うかどうか」が重要。何かを買う時はWebサイトやYouTubeなどで、口コミのチェックはもちろん、コンセプトや開発ストーリーなどを入念に調べる。また、過去の文化に興味を示し、アナログ志向を持つZ世代も多い。

タイムパフォーマンスを重視
自分が使う時間の価値を大切にしていて、短時間で満足感を得ようとする。費用対効果である「コスパ(コストパフォーマンス)」と同様、費やす時間に対する「タイパ(タイムパフォーマンス、「タムパ」ともいう)」を重視。例えば、動画を倍速で視聴したり、映像を飛ばしながら見る「スキップ再生」を利用したりする。コスパやタイパの悪い消費を嫌うため、「クルマ離れ」「お酒離れ」と呼ばれる現象も起こっている。

社会問題への関心が高い
経済低迷期に生まれ、景気の良い時代を知らない世代。東日本大震災などの大きな災害や新型コロナを体験し、未来に不安を抱いている。また、SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みが当たり前の社会に生きているため、環境問題や人種差別といった社会問題に対する関心が高い。多様性を尊重し、インクルージョンの意識が強い。金銭感覚は保守的で無駄な消費を好まず、安定や生活の充実に重きを置く現実主義者でもある。

X世代やY世代、α世代とどう違うのか

Z世代の比較対象として、X世代やY世代がよく取り上げられます。さらにZ世代の次の世代として「α世代」も目にします。これらは、Z世代とどう違うのでしょう。

X世代(1965〜80年生まれ)
日本では学生運動と高度経済成長期が終わった頃に生まれた世代。個人主義で独立心が強く、転職に対しても肯定的。まだ、インターネットは普及しておらず、主な情報源は新聞・雑誌・テレビなどのマスメディア。消費行動は慎重で、コストパフォーマンスを重視する。ブランドの価値より、機能性が重要と考える。

Y世代(1981〜95年生まれ)
物心ついた頃にインターネット環境が整い、ITに触れる機会が多く、デジタルネイティブといわれる。ネットだけでなく、雑誌や新聞などの紙媒体のメディアでも情報収集する。日本では就職氷河期を経験したことから「氷河期世代」とも呼ばれる。消費行動は「モノ」より、購入するプロセスや体験である「コト」に重点を置いている。

α世代(2010年以降)
ラテン文字で「Z」の次が「α」なので、α世代と名付けられた。Z世代に続く消費の中心に位置付けられている。1つ前のZ世代と同じくデジタルネイティブに当てはまり、IT技術の発達を経験しながら成長する世代。SNSや動画を通して常に情報をキャッチ。VRやメタバースに親和性が高く、AIやロボットを身近な存在と感じている。

最近では、α世代とZ世代の中間層「Zalphas(ザルファス)」が提唱されました。Zalphasはトレンドを追いかけ、クリエイティブな手段で自己表現する世代といわれています。

Z世代がビジネスで注目されている理由

Z世代は、世界的には全人口の約3割を占めています。2020年代半ばまでに、多くのZ世代が労働市場に出るため、社会や経済に対して与える影響が大きいと考えられます。2031年までにZ世代の収入が世界の4割以上に達すると予測されています。これからの消費の中心を担うのがZ世代といえます。

このように世界で注目されるZ世代ですが、日本ではどうでしょう。少子化が進む日本において、Z世代の割合は人口の5分の1以下と、世界に比べて少数派です。そのため、マーケティング上では軽視されがち。現在、日本では人数も多く、お金を持っているシニアがマーケティングの中心になっています。しかし、今後はZ世代以降のデジタルネイティブ中心の社会になります。グローバル市場で戦っていくには、Z世代を重要なターゲットとして認識し、理解を深めることが必須なのです。

Z世代へのアプローチ

Z世代は、これまでの世代とは価値観もライフスタイルも異なります。スマホやSNSのネイティブである一方、テレビをあまり見ないため、従来のマーケティングや広告戦略では十分な効果が得られません。YouTubeやTikTokといった動画系SNSを活用することで、Z世代にアプローチしやすくなります。影響力のあるインフルエンサーを起用して、自身の言葉で商品の魅力を語ってもらうのも有効な方法でしょう。

リアル体験への関心度が高いので、参加型キャンペーンも効果があります。例えば、海外のオンラインサイトの商品を試着できるオフラインのショップを展開。商品を試してから、ネットで購入するシステムを整備し、オン・オフを交えた体験を提供すれば、商品を購入する可能性が上がります。Z世代は無駄を嫌いますが、「価値がある」と感じたものには、出費を惜しまないといった側面もあります。

また、オンラインでの購入に慣れているZ世代は、インターネット詐欺などへの警戒心が他の世代よりも強い傾向にあります。情報の信頼性を担保したうえで、情報発信やコンテンツ制作を行うことも重要です。時間を有効に活用しつつ、よりお得な商品・サービスを失敗せずに購入したいと強く思っているため、誠実さや堅実さをアピールし、信頼性を高めるようなマーケティングが大切です。

著者プロフィール

青木 逸美(あおき・いづみ)

大学卒業後、新聞社に入社。パソコン雑誌、ネットコンテンツの企画、編集、執筆を手がける。他に小説の解説や評論を執筆。