インタープレナーは社会全体のイノベーションを実現

インタープレナー(越境人材)(interpreneur)は社会の変化や課題に敏感に反応し、オープンな対話を重ねて共感できる仲間と繋がりながら、所属する組織を動かし、目的を達成していきます。ビジネスシーンでは社会起点で越境しながら働く人を指すため、「越境人材」とも呼ばれています。

似たような言葉に「イントレプレナー(intrapreneur)」があり、これは「企業内起業家」という意味で、所属する企業の中で新しい事業を作り出す人材を指します。イントレプレナーは企業内でイノベーションを仕掛け、インタープレナーは様々な組織をつないで社会全体のイノベーションを実現します。

例えば、複数の会社が一つのプロジェクトを進める場合、それぞれが自社の利益を追求すれば、協働はうまくいきません。各社のインタープレナーが対話を通じて連携していくことができれば、プロジェクトはスムーズに進みます。共創によって新しい価値を創造していくには、インタープレナーは不可欠な存在といえます。

インタープレナーの理想の姿と行動

インタープレナーは、1995年に経営学者の寺本義也氏が論文で発表した概念と言われています。日本の人材育成のシーンでも「自身の慣れ親しんできた境界を超え、新しい環境で挑戦することで学びを深め、成長すること」が注目され、経済産業省が「越境学習」を推奨しました。越境学習とはビジネスパーソンが所属する組織の枠を“越境”して、キャリア自律と企業の変革、成長を目指す育成手法です。

雇用の流動性や働き方改革が進むなか、一人ひとりの社員に自身で決断して行動できるリーダーシップが求められていますが、経済産業省はまず企業の軸となるリーダーの育成が重要と考えたようです。

経済産業省関東経済産業局と「越境人材プロジェクト」を推進しているSUNDREDによると、インタープレナーの理想の姿・行動は以下のように定義されています。

1、様々な社会の単位において、多様なメンバーとの対話を通じて社会起点の目的・課題を特定する。
2、特定した目的や課題を実現・解決するための仕組みを構想する。
3、課題解決や目的の実現のために、共感でつながって一緒に動いていくチームを組成する。
4、所属する組織など自分が動かせるアセットを自在に動かす。
5、目的の実現・課題の解決をやり切って、それに応じた適切なインセンティブ、報酬を獲得する。
6、学びやつながり、新たな興味・関心をベースに、次の目的・課題に取り組み、自由に社会と価値交換して生きていく。

よりよい未来のために組織の枠を越境し社会を動かす

インタープレナーは、大手企業、中小企業、スタートアップという産業界だけでなく、官公庁、自治体、大学・研究などあらゆるセクターに存在しています。例えば、行政関連では官僚有志が「ソトナカプロジェクト」を立ち上げました。

霞が関の「ソト」である民間企業で勤務経験を積み、その後、国家公務員として「霞が関のナカ」の人となったメンバーが中心のプロジェクトです。役所の外と中を知ることから、「ソトナカ」と名付けられました。行政課題が複雑化、高度化するなか、霞が関でも多様な人材と協業し、新しい価値を生み出していくことが必要です。人材を横につなぎ、霞が関に変化をもたらそうとする試みが「ソトナカプロジェクト」です。

また、インタープレナーたちが集まり、価値創造のための対話をする「インタープレナーコミュニティ」やイベント・セミナーなども開催され、インタープレナー人材の普及が進められています。

多様な分野の人々が境界線を越えて「よりよい未来を創る」ための対話を繰り返し共創することが、サステナビリティ(持続可能性)な社会につながっていくのではないでしょうか。

著者プロフィール

青木 逸美(あおき・いづみ)

大学卒業後、新聞社に入社。パソコン雑誌、ネットコンテンツの企画、編集、執筆を手がける。他に小説の解説や評論を執筆。