年7億円相当削減! 日本マイクロソフトが「AIを活用したソリューションは働き方改革に有効」だと実証



働き方改革のリーディングカンパニーを目指す日本マイクロソフトは、Office 365 Enterprise E5のツールの1つ「MyAnalytics」を実際に4部門で4ヵ月間検証した結果、残業代換算で年7億円の削減を実現したという。そんな日本マイクロソフトが取り組む働き方改革の最新事情を代表取締役社長・平野拓也氏が発表した。

文/編集部


働き方改革を重視する企業は79%

 日本マイクロソフトによると、3月に経営者への意識調査をしたところ、売上・利益の拡大を重視が69%に対し、働き方改革を重視する人が79%と、最も働き方改革を重視しているそうだ。平野社長自身も、政府や自治体、有識者と話をしても、働き方改革がトピックに挙がるほど注目度は高いという。

 ただアジア全体で働く環境のデジタル化に対して調査してみると、社員のデジタルスキルのギャップ解消に経営者がコミットしているのは、アジア全体で32%に対し、日本はわずか5%。フレキシブルに働くために会社が支援しているのは、アジア全体で44%に対し、日本は8%、職場でのデジタル化に向けて会社が準備できてるとしたのは、アジア全体で48%、日本は7%と、全体的に日本の経営者のマインド、会社の支援は大幅に遅れている状況だ。

 そこで日本マイクロソフトは、「働き方を改革」+「働き方で改革」を推進。まず、社員自らの働き方で改革を推進するため、最新のクラウド&デバイスでサポート。AI活用による「気づき」で時間を有効的に使う「MyAnalytics」や共同作業を効率化する「Microsoft Teams」、会議のありかたを革新する「Surface Hub」というソリューションを提案している。

実際に自社でソリューションを使ってみたら効果絶大

 「MyAnalytics」に関しては、2月の発表会の記事で概要を紹介しているが、一週間をどのような時間の使い方をしているのかを、レポート形式で提示し、自らが把握できるツールだ。メールや会議、残業などの時間や誰と行っているのか、メールがいつ読まれ、どのくらい開封されているのかなどの情報を分析し、その結果をAIが判断してメッセージを投げかけてくれる。

日本マイクロソフト社内で導入したSurface Hubのあるミーティングスペース。Officeマーケティング本部 輪島文氏がMyAnalyticsによる「気づき」について解説。会議体について分析し、出席する必要のない会議は他の人に任せ、その分クリエイティブな時間に割く。

メールの実績により、コミュニケーションの最適化を行い、メール処理の時間を減らして効率化を図る。

フォーカス時間に注目し、雑務とクリエイティブな時間を切り分け、在宅勤務の日時を設定するのにも役立つ。

 たとえば、会議中にメールなどの内職をしていると、「義理で招待されていませんか?」と言われたり、「29%の会議が●●さんと同じでした」と参加者の状況を見て、会議を分担できないか提案してくれたり、「自分が開催者である会議の開始時に頻繁にメールを送信していました」と、集中を促して議題を整理し進行させることを注意されたりする。

 実際、日本マイクロソフト社内で「MyAnalytics」を利用し、4部門、4ヵ月間に渡って検証した結果、より集中し会議を行なうことで無駄な会議の時間を27%削減できたという。また、メールの処理が大幅に減ったので、コミュニケーションの円滑化が図られ、雑務とクリエイティブの時間を切り分けることで効率アップしたとのこと。4部門合計で、3579時間の削減に成功し、この時間を従業員2000人の残業時間に換算して残業代を計算したところ、年7億円の削減につながるそうだ。

社内検証プロジェクトの結果。4部門4ヵ月間で3579時間の削減に成功した。

 「Microsoft Teams」は、部門横断的なプロジェクトを会話ベースで進行支援するツール。スカイプは「コミュニケーション」だが、Teamsは「コラボレーション」にあたり、情報を共有し意見を交わす場として活用する。チーム作業の効率化アップとして「秘書bot」が導入され、たとえば会議を設定したいとき、秘書botに「会議室の調整」とメッセージを投げて、参加する人や開催時間などを知らせると、メンバーのスケジュールを確認して最適な時間帯に会議を設定、会議室も確保してくれる。秘書botのお陰で、会議のスケジューリングも短時間で行えるという。現状は、この機能しか対応していないが、カスタマイズしてさまざまな機能を実装できるようにする予定だ。

秘書botの例。会議を行なう際に、参加メンバーの空き時間の調整をスムーズに行ってくれるので、主催者は調整に苦労しなくてすむ。

 「Surface Hub」は、タッチパネルを搭載した大画面ディスプレーのWindowsマシンで、ホワイトボードに代わるものだ。日本マイクロソフト社内にも1月に30台を設置、ビデオ会議や分析ツール「Power BI」と連動して、遠隔地との会議などで活用しているという。また、働き方改革を習慣づけるため、部署ごとにルールを作り実践していくことで、社員自ら意識して改革を推進できるという。たとえば、「会議の設定は原則8時半から17時まで」「マネージャーのメール配信は平日は20時まで。休日は行わない」「テレワークの実施」「立ちミーティングの推進」といった具合だ。平野社長自身も立ちミーティングを実践し、議題への集中とミーティング時間の短縮を実現しているという。

Surface HubでPower BIのデータを表示。タッチ画面なので情報の切り替えも簡単。会議でも実際にデータを表示することで、効率よく進められるという。説明するのは、Officeマーケティング本部 冨士野光則氏。

会議中にSkype for Businessで呼び出し、詳細を聞いて判断することで、会議の効率がアップ。Surface Hubにはカメラも内蔵されている。

 「働き方で改革」に役立つサービスとして、ここまで紹介した以外にも「Skype for Business PSTN」通話を導入しPBXを廃止することで、コストを大幅に削減にしたり、企業が直面する経営課題の解決に向けてコンサルティング会社と連携し、「MyAnalytics」を活用した人事コンサルティングサービスを提供するなど、さまざまな取り組みも行っている。また、日本スチールケース株式会社と連携して、クリエイティブスペースを提案。テクノロジーと空間デザインを融合させ、より働きやすい環境の構築を手助けしていく。日本マイクロソフト社内でも夏までに一部を改装して導入する予定だそうだ。

Skype for Businessを利用した会議が行える部屋。

Skype for Businessの画面には、参加メンバーと会議室の360度映像も表示される。「Skype for Business PSTN」通話により電話からも参加できる。

働き方改革のムーブメントを起こす

 日本マイクロソフトは2011年にフレキシブルワークスタイルを導入以降、「テレワークの日」や「テレワーク週間」といった働き方改革を展開。さまざまなノウハウや経験が失敗も含めて貯まってきたという。その結果、働き方改革のスペシャリストも多数育成できたので、今後はユーザーのビジネスに貢献していくとのこと。そのために「働き方改革推進社会ネットワーク」(仮称)を新たに設置し、働き方改革におけるエコシステムの構築や、これまでの経験・ノウハウの共有、参加企業間のビジネス連携の創出、政府や自治体の取り組みへの参画など、働き方改革のムーブメントを起こすという。

 公益財団法人日本生産性本部の発表によると、日本の時間あたりの労働生産性は42.1ドルとOECD加盟国35ヵ国中20位。一人あたりの労働生産性も783万円とOECD加盟国中22位と低水準が続いている。「働き方改革推進社会ネットワーク」によって、これらの水準が少しでも上向きになるのか、日本マイクロソフトだけでなく、いま日本全体の取り組みが問われている。

OECD加盟国の時間あたりの労働生産性。公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較」より抜粋。