ワーキング革命 - 第15回

退屈な会議を創造的な「場」に ~Cisco Spark Board~

いつでもどこからでも仕事ができる柔軟な働き方の整備は、多くの会社で意識されているか、すでに取り組みが始められている。その一方で、意外と見過ごされているのは「会議」の改善だ。ビジネスと会議は、切っても切れない関係にある。それだけに、慣習や惰性で会議を開催しがちになるのだが、そんな退屈な会議を革新するソリューションが、「Cisco Spark Board」だ。

文/田中亘


この記事は、ICTサプライヤーのためのビジネスチャンス発見マガジン「月刊PC-Webzine」(毎月25日発売)からの転載です。

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会議を変えると働き方も進化する

 東京商工リサーチが2017年2月14日から24日までに調査した「長時間労働」に関するアンケート結果によれば、残業時間を減らす努力をしている企業は、79.7%に上る。この数字は、それだけ多くの企業が自社の働き方に課題を抱えている現実を示すものだ。また2016年2月のガートナーによる調査では、企業内コミュニケーションの課題として「会議の数をもっと減らすべき」「電子メールの数をもっと減らすべき」「Web会議やビデオ会議をもっと活用すべき」が上位に入っている。

 ビジネスの多くは、人と人とのコミュニケーションで成り立っている。それだけに、人が集まる「会議」は重要な時間であると同時に、昔ながらの方法が限界にきている。そんな会議を変えるひとつのきっかけが、シスコシステムズの会議ソリューション「Cisco Spark Board」になる。この製品は、チームのコラボレーションを革新するオールインワンのデバイスだ。

 Cisco Spark Boardは1台で、プレゼンテーション、ホワイトボード、ビデオ会議の機能を提供する。AI分野でも注目されているNVIDIAの「NVIDIA Jetson TX1」というオンボードのスーパーコンピューターを搭載し、4Kディスプレイによるコンテンツの共有を実現したCisco Spark Boardは、会議を変えて働き方を進化させる注目のデバイスだ。

 Cisco Spark Boardは、シスコシステムズが提供している「Cisco Spark」というクラウドベースのコラボレーションサービスを活用するためのデバイスになる。Cisco Sparkは、Webブラウザーや専用アプリで利用できるコラボレーションサービスだ。1対1またはグループでのメッセージ機能、ファイル共有、ビデオ会議、モバイルカレンダー、連絡先の統合、オンラインセルフサービス機能、エンドツーエンドのコンテンツ暗号化機能などを無料で提供している。ちなみに、有料版では、会議室運営管理、シングルサインオン(SSO)、ディレクトリー同期、ライブサポートなどの機能が利用できる。Cisco Spark Boardは、このCisco Sparkと連動する会議室向けの大型モニターだ。

 ただし、コラボレーションだけではなく、会議で必要になるスライドなどを表示するプレゼンテーション機能と、シスコシステムズが得意としているビデオや音声による会議システムも提供する。つまり、一台三役のコラボレーションボードとなる。

会議のすべてをデジタル化

 Cisco Spark Boardは、55インチの4Kディスプレイにワイヤレスで資料を送信してプレゼンテーションを映し出す。ケーブルを抜き差しする必要がなく、複数のPCユーザーがプレゼンテーションを行うときにも、スムーズな切り替えが可能になる。またデジタルホワイトボードでは、Cisco Spark Boardがタッチ操作で描けるホワイトボードになるだけではなく、Cisco Sparkを利用しているユーザーも、専用アプリを使って全員が一つのホワイトボードを共有できる。その結果、ミーティング中にホワイトボードを共有して、アイデアを形にしていく過程に全員がさまざまな場所から参加でき、その内容をデジタルデータとして保存できる。

 おそらく、現状では多くの会議室にあるホワイトボードは、水性マジックで書き残すもので、描かれたアイデアはスマートフォンなどで撮影してメールで配布しているのではないだろうか。これでは、会議に関連するすべてのプロセスのデジタル化には至らない。「手書き」というアナログな作業は、ブレインストーミングやアイデアソンなどでは重要なプロセスだが、「共有」には課題が残る。Cisco Spark Boardでデジタル化とネットワーク化を実現できれば、その創造性やチーム力は、数倍にもアップするだろう。

 ビデオ会議機能では、高解像度な映像と高音質な音声で、業界最良のユーザー体験を提供してくれる。シスコシステムズといえば、ビデオや音声会議システムで有名なだけに、Cisco Spark Boardでもそのノウハウが数多く盛り込まれている。さらにCisco Spark Boardが革新的な会議ツールになる理由は、セットアップが3分で完了し、インターネット接続だけで、社内外から利用できる利便性にある。

 特に注目すべきポイントは、会議室にあるPCなどのデバイスを認識するために、専用アプリとCisco Spark Board間で超音波によるペアリングを行っている仕組みにある。そのおかげで、無線通信をユーザーが意識することなく、容易な接続が可能になる。ITに精通している人にとっては容易に思えるネットワークのペアリングも、一般業務を行う人には難しい。そんな煩わしさを解消してくれる独自のペアリング技術は、会議のデジタル化を促進する。

Cisco Spark Boardを利用した会議の様子。

チームワークの向上こそがワーキング革命の真価

 シスコシステムズの調査によれば、1日の37%は会議やコミュニケーションに割かれているという。また多くの会議は10分も遅れてスタートする。さらに70%の人が会議中に別の仕事をしている。こうした数字の背景には、会議に参加している人たちの多くが、その「場」を他人事と捉えている現状がある。仕事の中には「参加することに意義がある」会議もあるが、盛んなディスカッションが行われなければ、会議の場から創造的な意見や発想は生まれない。

 そう考えると、会議の質を変える会議改革は、働き方改革につながるだけではなく、企業の競争力の向上にも貢献できる。会議改革という視点でCisco Spark Boardを提案できるようになれば、顧客からの注目度も高まる。そんなCisco Spark Boardを自身で理解するためには、まずは無料のCisco Sparkに登録して、コラボレーション機能の数々を体験してみるといいだろう。

(PC-Webzine2017年6月号掲載記事)

筆者プロフィール:田中亘

 東京生まれ。CM制作、PC販売、ソフト開発&サポートを経て独立。クラウドからスマートデバイス、ゲームからエンタープライズ系まで、広範囲に執筆。代表著書:『できる Windows 95』『できる Word』全シリーズ、『できる Word&Excel 2010』など。

この記事は、ICTサプライヤーのためのビジネスチャンス発見マガジン「月刊PC-Webzine」(毎月25日発売)からの転載です。

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