助成金で中小企業のテレワーク導入の負担を最大150万円軽減する「職場意識改善助成金」



働き方改革の1つの方法として推進されるテレワーク。東京オリンピックの交通渋滞対策にもつながるとして、今年7月24日には総務省が主導するテレワーク・デイも実施された。しかし、テレワークを導入するには様々な準備が必要で、費用もかかるため、なかなか導入に踏み切れない中小企業も多いのではないだろうか。そこで利用したいのが、今回紹介する「職場意識改善助成金(テレワークコース)」だ。

文/陣武雅文


テレワーク導入資金の4分の3、最大150万円を支給する助成金に注目!

 労働効率の向上、そして育児・介護などでフルタイム就業が難しい優秀な労働力の確保といった課題の解決策として注目を集めるテレワーク。

 しかし、導入を考えてみたいが手が回らない、導入資金で躊躇する、そもそもどう手を付けたらよいかわからないといった企業もあるだろう。特に中小企業の場合、いわゆる情報システム部門が設けられていないケースが多いこともあり、やむを得ず見送っているケースが少なくない。

 そのような中小企業にぜひ活用してもらいたいのが「職場意識改善助成金(テレワークコース)」だ。この助成金は、従業員のワークライフバランスを整えたいと考えている中小企業事業主に対し、テレワークを実施するために必要な機材やサービスの導入だけでなく、専門家への相談などに掛かる経費についても助成が受けられる仕組みだ。

 その助成額はテレワーク導入に掛かった経費のうち、最大で4分の3(上限150万円)。初期負担が大きく軽減するだけではなく、導入時のコンサルティング費用までカバーできるのは、中小企業にとって大きな助力になる。

 そこで今回は助成金を活用するための手順と、躓きがちな箇所をまとめてみた。締切は近いが、2014年から3年間継続している助成金ということもあり、来年度分の申請に向けて今から勉強しておくことも悪い選択ではないだろう。

 そしてこの職場意識改善助成金(テレワークコース)は申請マニュアルが充実しており、書類の様式も揃っているため、煩雑で費用対効果に見合わないといったことが起こる可能性も低いと思われる。この手の申請が未経験の企業は二の足を踏んでしまいがちだが、まずは申請マニュアルの熟読をおすすめする。正直、申請の心配は肩透かしだったと感じる担当者がほとんどのはずだ。

コンサルティングや就業規則整備など、導入前の経費も支給対象に。

企業規模と助成金の支給対象は?

 支給対象となるのは、資本金や従業員数が下記の範囲かつ、労働者災害補償保険の適用事業主だ。そのほか当然ながら、テレワークを新たに導入する企業(試行的に導入している事業主も含む)、またはテレワークを継続して活用する事業主である必要がある。

■中小企業事業主の範囲(AまたはBの要件を満たす企業)

業種A:資本または出資額B:常時使用する労働者
小売業(飲食店を含む)5000万円以下50人以下
サービス業5000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
その他の業種3億円以下300人以下

 本助成金の支給対象は、テレワークに活用される通信機器などの導入や運用費用、保守サポートやクラウドサービスの導入費用のほか、就業規則・労使協定の作成・変更、テレワーク導入についての研修・啓発、専門家のコンサルティング費用なども含むことができる。ただし、パソコンやタブレット、スマートフォンなどは支給対象にならない。

 支給額は成果目標を達成すれば経費の4分の3、未達成の場合は2分の1が支給される。対象経費にその補助率を掛けた金額が助成額だが上限が定められており、目標達成の場合はテレワーク対象1人当たり15万円、1企業当たり150万円が上限となる。目標未達成の場合はそれぞれ10万円、100万円が上限で、計算した助成額と比較し、低いほうの額が支給される。

 達成すべき成果目標は下記の3つ。

  • 1:評価期間に1回以上、対象労働者全員に、在宅またはサテライトオフィスにおいて就業するテレワークを実施させる
  • 2:評価期間において、対象労働者が在宅またはサテライトオフィスにおいてテレワークを実施した日数の週間平均を、1日以上とする
  • 3:年次有給休暇の取得促進について、労働者の年次有給休暇の年間平均取得日数を前年と比較して4日以上増加させる、または、所定外労働の削減について、労働者の月間平均所定外労働時間数を前年と比較して5時間以上削減させる

 上記の達成状況で支給額が変化することになる。また、評価期間とは助成金申請者である事業主が1ヵ月から6ヵ月の間で設定するものだ。

職場意識改善助成金(テレワークコース)の申請前に準備すること

 助成金を申請するということは、実際にテレワークを導入することと同義だ。それではテレワークには何が必要だろうか。従業員が外部で作業を行うための通信機器、ソフトウェア、Web上で会議を行うシステム、そして忘れてはならないセキュリティの確保も必要だ。また助成金支給時には、在宅やサテライトオフィスで就業していたことを証明する資料も必要となるので、GPSによるログ情報などを取得する機器・仕組みも用意しなければならない。

 とはいえ、実施人数や規模に応じた最適なソリューションを中小企業単独で選ぶことは正直、難しい。ここは社会保険労務士、中小企業診断士、経営コンサルタントなどの専門家や、ソリューションを販売している業者に相談するのが近道だ。その場合、コンサルティング費用などがかかる場合は、その費用も助成金の対象となる。

 このようなソリューションの選定においては、その金額が適正な価格であるかを確認するため、相見積もりをとり、複数の見積書を用意する必要がある。この見積書は助成金申請時に写しを提出しなければならない。

 テレワーク導入においては、就業規則の変更や労務担当者・従業員に対する研修・啓発といった要素も必要となる。テレワーク実施の対象者は、どこでテレワークを行うかを決め、実施状況を報告するために必要な範囲の個人情報を提出する同意書に署名・捺印する必要があり、そういった社内の整備も必要となってくる。

 また、勘違いしがちなのが、助成金の対象となるテレワークは在宅勤務ないしサテライトオフィスが対象。そしてサテライトオフィスは事業主が指定した場所でなければならない。カフェや公園といった場所での作業は認められず、コワーキングスペースやレンタル会議室などを選定し、必要であれば契約を行う必要がある。ただし、サテライトオフィスの設置経費や賃料などについては助成の対象外となる。

 他に申請に必要となる書類としては、登記事項証明書の原本、労働保険関係成立届または直近の労働保険概算保険料申告書の写し1部、就業規則、労働条件通知書などの写し1部、前年度および前々年度の労働保険料の納付・領収証書の写し1部など。これら必要な書類については、申請マニュアルに記載されているので確認してほしい。

助成金申請と提出方法

 職場意識改善助成金(テレワークコース)の申請書類が揃ったら、テレワーク相談センターへ提出することになる。事業実施承認申請時に必要な書類は、厚生労働省公式サイト内「職場意識改善助成金(テレワークコース)」にWordファイルが置かれている。

 このページの下部に「申請マニュアル」として「申請様式」というWordファイルがあるので、そこからダウンロードし、必要事項を記載する。記載方法は「申請マニュアル(テレワークコース)」というPDFに詳細があるので参考にしてほしい。記載例も含まれているので、実施計画やサテライトオフィスの準備、従業員への告知などが終わっていれば、記入自体はそれほど難しいことはない。

 ちなみに、テレワーク相談センターに提出したものの、じつは必要書類が整っていなかったというケースもあるようなので、「申請マニュアル(テレワークコース)」PDF内にある申請チェックリストを活用し、提出漏れを防ぐことをお勧めする。

 メールでの提出も可能だが、申請書原本は郵送しなければならないので、すべて郵送したほうが早いだろう。なお、今年度の申請締切は2017年12月1日(金)となっており、12月1日に書類がテレワーク相談センターに到着しなければならない。この点、要注意だ。

 なお、申請が承認されると、厚生労働省から事業実施承認通知書が送られてくるので、その後、提出した計画に沿ってテレワークを実施する。実施期間が終了した後、助成金の支給申請を2月末日までに行うことになるが、その際には実施内容がわかる書類などが必要となる。とはいえ、これらの書類は「申請様式」ファイル内に含まれており、記載方法も申請マニュアルPDFに掲載されているので、そちらを参照してほしい。

 今回紹介した職場意識改善助成金(テレワークコース)だが、来年度(2018年/平成30年)の実施は現在のところ未定となっている。しかし、2014年から毎年行われている制度であり、ましてや働き方改革が流行語大賞にノミネートされるなど盛り上がりを見せている最中でもあるので、申請マニュアルの熟読が無駄になる可能性は低いと思われる。

厚生労働省「職場意識改善助成金(テレワークコース)申請マニュアル」より。手続き全体のフローチャートから書類の記入例、チェックリストまで至れり尽くせり。マニュアルや申請様式など必要書類はこちらからダウンロードできる。

職場意識改善助成金(テレワークコース)申請時に見落としがちな注意点

 ここまで職場意識改善助成金(テレワークコース)の申請について解説してきたが、最後に、見落としがちな注意点をまとめておこう。繰り返すが、マニュアル・様式が充実している助成金なので申請自体は容易だ。

1:パソコンなどのデバイスは支給対象にならない
テレワーク導入に関するコンサルティングから運用費用まで、幅広く対象となるが、テレワークを行う社員が利用するパソコンやタブレット、スマートフォンなどは支給対象にならない。申請時にはそれらのデバイスが含まれていないか確認しよう。

2:申請する対象は相見積もりが必要
テレワーク導入に必要な機器、ソフトウェア、サービスなどの金額が適正であるかどうかを確認する必要があるため、相見積もりを取り、複数の見積書を提出する。用意する資材が決定していたとしても、それ以外の同種の資材についての見積もりが必要なので注意が必要だ。申請で提出するものは見積書の原本ではなく、写しで差し支えない。

3:サテライトオフィスの設置経費は対象外
テレワークを行うサテライトオフィスなどの場所は事業主が指定する必要がある。しかし、そのサテライトオフィスの設置に伴って経費や賃料がかかったとしても、助成金の対象とはならない。

4:申請は12月1日必着(2017年の場合)
本助成金以外も同様だが、締切日に必要な書類が提出先に届いていなければならない。職場意識改善助成金(テレワークコース)においては12月1日までにテレワーク相談センターに申請書類一式が届いている必要がある。郵送の際も消印有効ではなく必着なので注意してほしい。

 さまざまな業種で人手不足が叫ばれる昨今、貴重な人材を育児や介護で失うことは企業にとって大きなダメージとなる。また、自然災害が絶えない日本では通勤困難時のリカバー手段も重要だ。どこでも仕事ができる環境作りは喫緊の課題といえるだろう。限られた人材をやりくりせざるを得ない中小企業こそ一刻も早いテレワーク導入が必要なのだ。

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筆者プロフィール:陣武雅文

元デザイナーながら、MS-DOS時代からパソコン書籍編集者を務める。インターネット黎明期からコンピュータネットワークにおけるコミュニティに興味を持ち、制作した書籍もネット関連やグループウェア関連が多い。現在は働き方改革と最新テクノロジーの関わり方に注目している。