1時間500円で貴社の会議室をシェアさせて!? 貸会議室サービス「スペイシー」驚きの仕掛け



会議室を貸したい人・借りたい人、両方のニーズをつかんで拡大中

民泊サービス、自動車や自転車のシェアサービスなど、モノやサービスを所有するのではなく、共有する考え方が拡がっています。この「シェアリングエコノミー」とスマートワークには密接な関係があります。シェアオフィス・コワーキングスペースに続く、「1時間500円~」の貸会議室サービス「スペイシー」を展開する株式会社スペイシーの内田圭祐代表取締役にお話を伺いました。

文/まつもとあつし


株式会社スペイシー
代表取締役の内田圭祐氏にお話を伺った。

40名働けるオフィスにたった4名……
『余ったスペースを貸し出せないか?』

―― 「貸会議室」といえば、講演やセミナーなどの大規模な集まりで借りるイメージがあります。価格も数万円~という設定がほとんどなので、スペイシーが提示する「500円~」はインパクトがありますね。なぜこのサービスを始めたのでしょうか?

内田 会議ができる場所をリーズナブルな価格と、簡単な手続きで提供したい、という思いからスペイシーは始まっています。

 会議に対する需要は年々増加しています。

 会議室がいっぱいで、やむを得ずファミレスやカフェに行った、という経験は多くの方がされていると思います。しかしそういった場所は守秘性が高いとは言えません。隣や後ろの席からきわどい商談が漏れ聞こえてきた、という経験も皆さんお持ちのはずです。元々会議のために用意された場所ではないので仕方がありませんが、机も小さいし、ホワイトボードもないわけです。

 スペイシーは、「カフェと同じくらいの価格と気軽さ」で使える貸会議室を簡単に見つけることができるサービスになっています。

―― たしかに働き方改革の取り組みも拡がる中、打ち合わせ場所に対するニーズの高まりは感じます。シェアオフィスやコワーキングスペースにも簡単な打ち合わせ場所は備わっていることが多いものの、守秘性という意味では不安があります。一方で、備え付けの会議室を借りようとすると予約が埋まっていたり、1時間あたり数千円~と決して気軽に使えるものではないですね。

内田 そうなんです。実はわたしが以前手がけていた事業を縮小させるときに、そういったニーズを強く感じたことが、スペイシーが生まれるきっかけになっています。

 契約の関係上すぐには解約できないため、40名ほど働けるオフィスを私含めてたった4人で数ヵ月使わざるを得なかった時期がありました。『この余ってしまった場所を一時的に貸し出せないか?』と考えたのですが、そういったニーズに応えるサービスは見つかりませんでした。それなら自分たちでできないか、とも考えたのですが、オーナーに承諾を得たり、その都度時間貸しの相手を探したり、部屋の使用前後の管理を行うのは実は非常に手間が掛かることに気がついたんですね。簡単にいえば割にあわない。

 その後、幸いにも新事業への移行が成功し、10人ほどが入れるオフィスに移ったのですが、今度は打ち合わせや込み入った話をできる場所がとれず困りまして(笑)

 そこであらためて、『こういうことは日本中のあちこちで起こっているはずだ』と思いました。経営環境が変化し続ける時代ですから、用意した物件がある日突然余ってしまったり、逆に一時的でよいから場所が欲しい、というニーズは必ずあるはずだ、と。実際、経営者が数十人集まる場で聞いてみると必ず1~2割の人がそういう状況だったりするのです。

スペイシーでは通常の貸会議室のほか、オフィス空間を持て余している会社の空きスペース(個室)なども登録されている。

シェアリング・エコノミーの市場規模は2025年に3350億ドルに達すると予想されている(総務省「平成27年版情報通信白書」より)。

―― 利用者からすると、使ってみたいと感じる非常にリーズナブルなサービスだと感じました。一方で、場所を貸し出す側にとってはどうでしょうか?

内田 実は私たちも自社オフィスの空いている会議室をスペイシーで貸し出しているのですが、2ヵ月めから賃料を上回る収益を得ることができています。駅から近い物件だったこともありますが、平日日中は自分たちで使っているため、夜間と土日だけの貸出で全体の賃料が賄えたのは事業の立ち上げ時にはとても助かりました。

 部屋が汚れるんじゃないか? 機材が傷んだり無くなったりするのではないか? という心配も当初していたのですが、むしろ利用者のほうがその都度簡単に掃除したり、整えてくださったので、私たちも気持ちよく部屋を使えていましたね。

 もちろん月に1万5000件前後の利用がありますので、なかにはトラブルもありますが、民泊やパーティ用の貸しスペースなどに比べると発生率は非常に低いのではないかと思います。

スペイシーで渋谷エリアを検索。想像以上に豊富な選択肢から選べる。

―― なるほど。一方で、例えばカラオケ店がビジネス利用メニューを用意するといった取り組みもあります。競争もあるのではないですか?

内田 たしかに打ち合わせだけを考えればカラオケ店や、日中の居酒屋の個室なども選択肢には入りますね。ただ、居酒屋で領収書を切ってもらって会社に「会議をしました」と提出できるかといえば、ちょっと難しいのではないのでしょうか?

 スペイシーは、オンラインによる領収書発行(PDF)が可能で、請求書支払いにも対応しています。堂々と経費として申請していただけるはずです(笑)

「経費として認められやすい領収書の発行」は、スペイシーの隠れたメリットだ。

―― 目的に特化されていることの利点があるわけですね。この他にもスペイシーではワークスペースも提供しているとのことですが、これはどういったものなのでしょうか?

内田 こちらは現在開発中のサービスですが、会議室とは異なり、仕事や学習に利用できる場所をご提供するものとなります。いわゆるコワーキングスペースの登録もあれば、飲食店がオフピーク時をワークスペースとして活用されている例もあります。会議室よりもさらにリーズナブルな月額3980円という価格体系になっています。他にも月4時間までの利用なら200円と言った具合に段階的なメニューも設けています。

 スペイシーが運営しているスペースもあり、こちらは私どもが、飲食店さんと直接契約させていただき、ディナータイム以外の時間帯をお借りしている形です。弊社のスタッフがその時間帯の管理者として店舗に常駐し、コーヒーのご提供も行っています。電源・Wi-Fiも完備です。

飲食店の閉店時間などを利用したワークスペース提供サービスも開発中。原稿執筆時点では6ヵ所で試験営業が行われている。

働き方改革に最も効くのは「打ち合わせ改革」だ!

―― 最後にスペイシーが私たちの働き方、スマートワークスタイルをどのように変えていくのか。内田さんのビジョンを教えてください。

内田 様々な場所の会議室やワークスペースが使えるようになることで、「大事な打ち合わせや、重要な資料を作るためだけに会社に行く/戻る」といった移動のロスを減らし、より最適な場所で成果が生み出せるようになると考えています。

 私は打ち合わせは「未来を作る」活動だと捉えています。学生時代に世界を放浪した経験で確信したことなのですが、たとえおカネや資源がなくとも、誰かと誰かが話す場があれば、新しいアイデアやイノベーションがそこから生まれ、社会が豊かになるきっかけとなるのです。

 社内制度改革や、大規模なITツールの導入よりも、最も働き方改革に「効く」のは、打ち合わせ改革ではないかと思うのです。そのためにもスペイシーのようなシェア型サービスの積極活用が進むよう日々頑張っています。コストパフォーマンスも高く、特別なトレーニングも必要としないスペイシーを、ぜひスマートワークの第一歩として検討いただければと思います。

筆者プロフィール:まつもとあつし

スマートワーク総研所長。ITベンチャー・出版社・広告代理店・映像会社などを経て、現在は東京大学大学院情報学環博士課程に在籍。ASCII.jp・ITmedia・ダ・ヴィンチニュースなどに寄稿。著書に『知的生産の技術とセンス』(マイナビ新書/堀正岳との共著)、『ソーシャルゲームのすごい仕組み』(アスキー新書)、『コンテンツビジネス・デジタルシフト』(NTT出版)など。