池澤あやかの 体験!スマートワークテクノロジー - 第4回

シスコの「Cisco Webex Board」が単なるデジタルホワイトボードじゃなかった



シスコシステムズ「Cisco Webex Board」

 毎回、池澤あやかさんが、さまざまな観点で働き方を変革していくソリューションを体験するレポート。今回は、会議室によく置かれているホワイトボードをデジタル化するシスコシステムズの「Cisco Webex Board」を取材してきました。「チームコラボレーションデバイス」と称するこの製品。Cisco Webexサービスと併用してディスカッションを加速させる秘密がありました。

取材/池澤あやか、文/飯島範久、写真/岡田清孝


タレント/エンジニア
池澤あやか
@ikeay
第6回東宝「シンデレラ」オーディションで審査員特別賞に選ばれ、タレントとして活躍する一方、慶應義塾大学 環境情報学部(SFC)在学中にプログラミングに目覚める。大学卒業後もプログラミングができるタレントという特技を活かして活動中。

音でペアリングしてWi-Fiで接続の手軽さ

 今回お邪魔したシスコシステムズ合同会社は、ネットワーク関連のソリューションを提供している世界的な企業です。たくさんの機器やサービスの中から、池澤さんに体験してもらったのが、会議室に設置する「Cisco Webex Board」です。一見すると会議室によく置かれているホワイトボードのデジタル版なのですが、単なるホワイトボードの代わりではありません。そんな「Webex Board」について説明していただいたのが、プロダクトセールススペシャリストの喜友名一気(きゆなかずき)さんです。

池澤あやかさん(以下池澤) 「本日はよろしくお願いいたします。今回ご紹介していただけるWebex Boardというのが、これですね」

 会議室の傍らに置かれていた脚付きのディスプレイには、丸いアイコンが並んで表示されており、まじまじと覗き込みながらの取材開始です。

喜友名一気さん(以下喜友名) 「そうです。Webex Boardはデジタルホワイトボード、4Kディスプレイ、ビデオ会議端末として使える一台三役の最新端末です。シスコと聞くと、ルーターとかスイッチのイメージが強い企業と思われがちですが、実は、コラボレーションと呼ばれる、音声やビデオ映像を使った遠隔コミュニケーションサービスや専用端末も提供していて、Cisco Webex Meetingsに代表されるWeb会議やビデオ会議でも半分近い世界シェアを持っているんです(出典:Synergy Research 2017)。

 このWebex Boardもその中の1つで、パソコンの画面を映して、データを見ながら話し合いができるだけでなく、ホワイトボード機能により画面に文字などを描けるようになっています。Webex Teamsというクラウドベースのコラボレーションサービスと組み合わせることで、会議前にチーム内でチャットを使って議論したり、必要な資料をあらかじめ共有し、会議中は共有した資料をWebex Boardに表示して議論するという使い方ができます。会議が終わった後でも、いつでもチャットで議論の続きができるので、途切れないコミュニケーションが可能になります。もちろん、途中でメンバーの追加も可能です」

池澤 「最近の働き方改革にはピッタリなソリューションですよね」

喜友名 「そうですね。Webex Teamsは無償版も提供しているので、そちらから始めていただくことも可能です。実は無償版のWebex Teamsを入れたPCやモバイル端末だけで会議を行うこともできますが、会議室に集まったメンバーが各々の小さな端末を見て会議するのはもったいないですよね。
 このWebex Boardがあればみんなで大きな画面を見て議論ができ、共有した資料にホワイトボード機能を使って双方向から書き込むという会議も出来るようになります。また通常のホワイトボードの場合、書いたものを会議の終わりに写真を撮り、後でメンバーにメールで送ったりしますよね?」

写真右が今回説明していただいたプロダクトセールススペシャリストの喜友名一気さん

池澤 「ありますあります!」

喜友名 「情報漏洩のリスクから撮影が禁止されているのに、ホワイトボードの撮影だけは黙認されている会社も多いと聞きます。Webex Boardなら書いたものは任意のスペース上に暗号化して保存されるので、セキュリティ面も高いですし、メールで送る手間も不要になります」

池澤 「パソコンとWebex Boardをペアリングするってどうやるんですか?」

喜友名 「音を使ってペアリングをして、ネットワーク経由でパソコンの画面をWebex Boardに送るということをしています」

池澤 「音でペアリング?」

喜友名 「そこが結構ミソなんです。Webex Boardのスピーカーから自分の端末情報と暗号化キーを超音波として出していて、それをPCやモバイル端末のマイクがキャッチすることで自動的にペアリングしています。Bluetoothだとすぐに上手くいかなかったり、手順が面倒だと感じている人もいると思いますがこれは自動なので簡単です」

池澤 「音でそんなことができるんですね」

喜友名 「また、Bluetoothと違い音は壁を通過していくことがないので、隣の部屋からペアリングされて内容が漏れるというリスクも排除できます。扉を閉めておけば超音波はその部屋から出ていきませんので」

池澤 「高い声で邪魔しても大丈夫ですか?(笑)」

喜友名 「大丈夫だと思います(笑)。たとえ邪魔できたとしても、きっと息継ぎしている間にペアリングしてしまいます。たとえばプロジェクトごとに作る“グループのスペース(部屋)”とペアリングできると、そのメンバー間で共有されていた様々な資料や画像をWebex Boardでも見ることができるようになります」

池澤 「開いたファイルにメモとかもできるんですか?」

喜友名 「現在は白紙に双方向から書き込んだり、PCの画面を共有してその上に書き込むということができますが、まもなくファイルへの書き込みも可能になる予定です」

池澤 「離れていてもしっかり共有されるんですね」

喜友名 「働き方改革でリモートワーク環境を作ろうと言ってWeb会議環境を整えている企業も多いですが、ホワイトボードは会議室にしかないものだったので、リモート先にいる人には見せてあげることしかできませんでした。Webex Boardを入れていただければ、離れた拠点や自宅から会議に参加している人とも1枚のホワイトボードを共有できるので、より密度の濃いディスカッションが可能になります」

実際にペンを使ってWebex Boardに描いてみた池澤さん。「Hello World!」と描くところが“エンジニア”らしい

池澤 「書き心地がしっかりありますね。ペン先がふわふわしていて、本当のホワイトボードに描いている感覚と結構近いんじゃないですかね。すごくいい感じです」

喜友名 「そのあたりは意識しています。コツコツ鳴らないというか、紙にペンで書いているようですよね」

池澤 「追従性もいいですね」

喜友名 「離れたところにいる人とホワイトボードを共有できるいちばんのメリットは、“ここを”とか“これを”といったより自然なコミュニケーションが取れることです。離れて会議に参加していると、たとえ画面に資料が映っていても、今その資料のどこに注目しているのか相手に伝わりづらいことがあります。そのため“図の右から2番目の”といった場所を指す言葉が必要になりますが、ペンで丸を書ければ“ここなんだけど”と直感的なコミュニケーションが取れます。1枚の画面を共有して双方向から書き込めるというのは、とても大きなメリットがあるのです」

離れた場所でも簡単にコラボレーションが可能に

 ここで、実際に別のフロアにいる同僚の佐藤さんとWebex Board同士で会議を行い、ホワイトボードで共有しながら議論しているようなシチュエーションを行うことに。

喜友名 「つながりましたね。実はカメラが内蔵されていて、彼から僕らはこの様に見えています」

池澤 「結構広角ですね」

喜友名 「そうですね。会議室全体を捉えられるようになっています」

池澤 「かなりキレイ」

喜友名 「実は4K解像度のカメラで撮影されています。ただ、4K画像を相手に送っているわけではなくて、その時の参加者の人数や場所に最適な画角を選択してフルHDの解像度で相手に届けています」

内部処理のイメージ。4Kカメラで撮影しても、参加人数や話している人を認識し、最適な画角と解像度で相手に届けている

池澤 「マイクはどこについているんですか?」

喜友名 「実は、端末上部にマイクが12個内蔵されていて……」

池澤 「12個も!」

喜友名 「画面の上に一列に配置されているのですが、なぜそんなに数が必要かというと、音は光に比べて遅いので、たとえば右側でしゃべると、一番近いマイクと、一番離れているマイクでは音の到達時間に差が生まれるんです。その差を利用して三角測量のように計算してどのあたりから音が発せられているのか判断しているんです」

池澤 「なるほど、すごい。ちゃんと正しく認識できるのか見てみたい」

 池澤さん、「こんにちは!」と叫んでみるも、拡大されません。実は咳払いなどで反応することがない様にある程度喋らないと反応しない様になっているそうです。そこで、「皆さんこんにちは、池澤あやかです!」と言うと反応して池澤さんが拡大されました。

池澤 「これって導入している企業ってどのくらいあるんですか?」

喜友名 「はい、さまざまな業界、業種のお客様にご利用いただいていて、アニメ制作会社や高校、大学などもあります」

池澤 「たしかに制作会社さんでは議論が多そうですね」

喜友名 「あるアニメ製作会社では、担当者が出張などで物理的に離れているときでも、“色はこんな感じでどうですか”とリアルタイムに議論できる、ととても喜ばれています」

池澤 「確かにPhotoshopを開いて、個々の色これでいいですか? みたいなことを見ながら議論も簡単そうですね」

 佐藤さんと実際にホワイトボード機能を使って議論してみることに。

このようにWebex Boardは、単なるホワイトボードとして描き込んで共有することもできる。離れた場所からの書き込みや消去もリアルタイムで反映される

池澤 「これ2人で描くとどうなるんですか?」

喜友名 「同時に描けますよ。1つの会議に最大75台のボードが繋がり、それぞれのボードで2人まで同時に書き込みができます」

池澤 「えっ、スゴイ!」

喜友名 「相手が描いたものも消したりできます」

池澤 「あ、消された(笑)」

喜友名 「デジタルホワイトボードというとたくさんのことができる端末もありますが、Webex Boardは誰でも簡単に使えることにこだわって、本当に必要な機能だけをシンプルに提供しています。ただ、ユーザからの要望の多い機能に関しては順次アップデートにより追加していきます」

池澤 「確かに議論しているときはそんなに複雑なことはしないですし」

喜友名 「終わる時も簡単で、このバツボタンを押すだけです」

池澤 「議論したことは、グループチャットの方には残っているんですよね?」

喜友名 「その通りです。暗号化されて保存しています」

描いたものを保存。誰と共有するかも指定できる

Webex Boardで描いたものは、iPadやノートパソコンでも見られる

池澤 「こういう製品は、外資系の企業によく導入されているというイメージがあります」

喜友名 「そういうイメージがあるかもしれないですが、実際は多くの国内企業でも使っていただいています。ただみなさんが使いやすいように、部屋に馴染みやすく威圧感の少ないデザインや、カメラを目立たせない仕組みなどさまざまな工夫が入っています」

池澤 「確かに見られている感がハンパないですもんね」

Webex Board以外にもさまざまなソリューションが

 佐藤さんとのコラボレーション体験はここまでで、続いてWebex Board以外での端末でも体験してみました。

Webex Boardでなくてもアプリをインストールしたタブレット端末からも書き込める。リモートワークでも十分議論可能だ

池澤 「リモートワークをしている人にとっては、iPadのようなタブレットが使いやすいですね」

喜友名 「そうですね、アプリを入れていただければ主なモバイル端末で利用できます。ほかにも、このような小さな専用端末というのもあります。普段はパソコンのセカンドディスプレイとして活用し、会議が始まるときは通話ボタンを押すだけでビデオ会議専用端末に早変わりするんです」

 カメラの付いたこのディスプレイ(端末)は、カメラ、タッチスクリーン、スピーカーやマイクが1つになった一体型端末です。カメラを下に向けると映像が反転し、自分が見ている映像をそのまま相手に送ることができます。一体型なので在宅勤務や時差のある会議に自宅から出るなどの需要に特にマッチするそうです。



Webex Board以外にもビデオ会議用のハードはいろいろ用意されている。部屋の広さ、机のスペース、用途に合わせて選択できるのもいい。

 続いて、業務やプロジェクトごとにコミュニケーションを取るためのWebex Teamsアプリを使った例を紹介していただきました。

喜友名 「Webex Teamsは業務やプロジェクトを行う上で必要なコミュニケーションの手段を全て集めて1つにしたアプリケーションで、主な機能としてプロジェクトやチームごとに作る"グループでのチャット”や”1ファイル2GBまでのファイル共有”、”デジタルホワイトボード機能も使えるビデオ通話”などがあります」

池澤 「その都度、会議室を立ててという感覚ではなく、部署ごとやプロジェクトごと、チーム別などでグループを作って、そこで話し合いもしつつ、会議を設定したときに会議を行う感じなんですね」

喜友名 「その通りです。グループの作り方や、既存のグループにメンバーを追加するのもカンタンで、途中から参加しても過去のチャットの履歴も見られるので、必要な書類を別途送ったり、議論している内容を説明したりする必要がないんです。これがメールでやり取りしていたら情報を共有するのは非常に難しいですね」

池澤 「途中から参加して、それまでに悪口が書かれていたら嫌ですけどね(笑)」

タブレットで喜友名さんとチャットする池澤さん。

喜友名 「それは凹みますね。きっとそんなことはないと思いますが、メンバーになればこれまでの会話やファイルもほかのメンバーと同じように見られるので、途中から加わった人のキャッチアップはメールだけの場合より数倍早くなると思います」

 ちなみに、シスコシステムズには冒頭にもでてきたCisco Webex MeetingsというWeb会議のソリューションもあります。Webex Teamsが”各々が都合の良い時に発言(書き込み)することで途切れないコミュニケーションを行っている”のに対し、Webex Meetingsは”時間を決めて行っている会議をクラウド上の仮想会議室で行なっている”というイメージです。
以前はPCやモバイル端末同士でしか会議ができませんでしたが、現在はビデオ会議端末もつなげられるように進化しており、1会議室あたり最大200台のPCやモバイル端末をつなげたり、ビデオ会議端末75台とPC・モバイル端末125台をつないで会議を行うことも可能です。

池澤 「私、大学で講義を受けたときにWebexを使ったことがあります」

喜友名 「URLをたたくだけで参加できるので、呼ばれる側はとてもラクですよね」

池澤 「挙手とかありますよね」

喜友名 「そうです。発言しづらい環境なんだけど主催者に注目してもらいたいときに、とても便利な機能ですね」

 ふだんから、打ち合わせでWeb会議やチャットシステムはよく利用している池澤さん。今回シスコシステムズのソリューションを体験してみての感想は?

池澤 「これ1つだけあればいろんな会議とかスムーズに進行できたリ、会議前から会議後までぶつ切りになることなく作業を進められるのはいいですよね。会議のときに、『のちほど資料をお送りしますね』と言ってメールでCCいっぱい入れて送るようなこともなく、チャットもこのくらいのほうがITリテラシーの高い低いにかかわらず扱いやすいと思います。Cisco Webex Boardも書いて共有する機能は、会議では便利ですね。ここまで会議に特化したものは、ほかにはないんじゃないでしょうか。
 あと、近づいたらペアリングしてグループを作れるというのも面白いですね。参加しているメンバーの名前忘れて、『あれ、この人誰だっけ』となったときも、グループに入った人の名前が確認できるので、上司に失礼もない(笑)」

 顔はわかるんだけど、名前が出てこないというケースは確かにありますが、それにこのシステムを活用するという発想は池澤さんらしいですね。

 働き方改革によってテレワークで離れた場所からも会議に参加するというのも、だんだんと理解されては来ていますが、まだ導入に二の足を踏んでいる企業も多いと言います。ただ、試しにCisco WebexやCisco Webex Boardを一部の部署で導入して使ってみると、それを見た他部署の人がよさそうだということで使いたくなるケースも多いそうです。部署ごとにWeb会議やチャットがバラバラなソリューションを使うより1つに統一した方がいいと判断するケースもあることから、Cisco Webex Boardは両方を兼ね備えた1つのソリューションとして導入を検討してみてはいかがでしょう。

今回紹介したソリューション

チームコラボレーションツール「Cisco Webex Teams」で使えるデジタルホワイトボード

Cisco Webex Boardは デジタルホワイトボード、ワイヤレスプレゼンテーション、ビデオ会議という3つの機能を持った最新の端末です。共有、描画したデータは Cisco Webex Teams(メッセージ共有)上に保存でき、いつでも参照や再編集も可能です。