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2018/06/26

特集 働き方改革再入門 2018 - 第2回

テレワーカー活用入門「発注編」



テレワークは「する」よりも「してもらう」ほうが難しい!?

働き方改革の象徴として取り上げられることの多いテレワーク。仕事場を会社から自宅に移して働く会社員がクローズアップされがちだが、自宅その他で働く自営業者(=テレワーカー)の処遇が語られることは少ない。この回では東京都福祉保健局が発行したガイドブックをもとに、「企業がテレワーカーに仕事を発注する際の注意点・ノウハウ」を解説する。

文/まつもとあつし


拡がるテレワーカー活用

 働き方改革と共に「クラウドソーシング」という言葉もよく知られるようになってきた。主に在宅で働くフリーランス(テレワーカー)に、グラフィックデザインやプログラミング、テキストライティングなどを外注する際に用いられ、ウェブサイト上で仕事の概要を公開、問い合わせのあったテレワーカーと条件をすり合わせ、仕事を依頼するというものだ。専業・副業を合わせるとその数は120万人以上となっている。

東京都福祉保健局少子社会対策部育成支援課「企業経営をワンランクアップする在宅ワーク活用術」より。

 スピーディーに、しかも高いスキルをもったテレワーカーにリーズナブルに発注できる可能性がある一方、顔を合わせないで仕事を進めるうちに「思っていたような納品物が得られなかった」「最初に聞いていた条件と異なる仕事のボリュームだった」というトラブルに発展することも珍しくない。そういったトラブルはネット上に公開されてしまうこともあり、企業や個人の信用を損ねることさえある。

 複業・副業を認める動きが拡がるなど多様な働き方が求められており、テレワーカーの活用はこれからも拡がっていく。会社員以外のテレワークで押さえておくべきポイントを東京都福祉保健局発行の「企業経営をワンランクアップする在宅ワーク活用術~在宅ワーク発注者ガイドブック~(注:PDFファイル。ダウンロード推奨)」をもとに見ていこう。

発注は5W1Hを明確にして契約を結ぶ

 テレワーカーとの仕事のトラブルの多くは、発注内容が曖昧なために発生する。社内で部下に仕事を頼むような感覚で仕事を依頼すると、後々大きなトラブルにもなりかねない。下請法(下請代金支払遅延等防止法)に違反して罰せられることもあり得る。ガイドブックでは以下のような発注書(覚え書き)をテレワーカーと取り交わすことを薦めている。

発注書の参考例。

 ここでは、コラムの執筆を想定した内容が記されており、委託内容・金額はもちろんのこと、納品期限や、検査の結果修正を求める場合があることについても明記されている。テレワーカーは複数の発注元から仕事を請け負うことが多いため、金額だけでなく「自分がいつまで拘束されるのか」が発注の段階でわかると作業の予定が立てやすく、結果的に納品物の品質向上が期待できる。

 加えてトラブルになりやすいのは、著作権の帰属だ。上記例ではテレワーカー側に著作権が残る(帰属する)形式を取っているが、例えばWebシステムなどを発注した際には、他社での流用を避けるために著作権も譲り受けたいという場合もあるはずだ。作業内容や対価も当然変わってくるので、やはり発注段階で明確にしておくべきなのだ。

 これ以外にもガイドブックでは、同じ当事者間で受発注が繰り返される場合の基本契約(業務委託契約)のひな形も示されている。ぜひ参照してみてほしい。

テレワークでも欠かせない「コミュニケーション」

 ガイドブックで目を引くのは、遵守すべき法令や留意点だけでなく、コミュニケーションの重要性にも多くのページが割かれている点だ。オンラインで完結しがちな、テレワーカーへの仕事の依頼だが、トラブルを避けるだけでなく、よりよい成果物を得るためにも「目的の共有」や「顔が見える」コミュニケーションを通じて信頼関係を築くことが大切だとされている。

 例えば、フリーランスである筆者も時々遭遇して困ってしまうのは、「いつまでにこれを」と納品物の仕様と納期だけを伝えられて、「あとはお願いします」という発注だ。なぜこの仕事が求められているのか? 発注者は何を目的としているのか? といった目的が共有されないと、要件の解釈を巡って齟齬が生じやすいし、何よりもテレワーカーが創意工夫を凝らした高いクオリティの成果物は生まれにくい。

 その目的の共有のためにも、「顔が見える」コミュニケーションが重要となってくる。ガイドブックでは定期的な対面での打ち合わせや電話でのやりとりが薦められているが、スマートワーク総研の読者であれば、ぜひテレビ会議システムや、グループウェアの導入・活用も検討してほしい。地方や海外のテレワーカーや、介護等で移動に制約があるテレワーカーなど、発注先の多様性を考慮したコミュニケーションが可能となるからだ。

 円滑なコミュニケーションは、テレワーカーのモチベーションを高め、成果物のクオリティを向上させる。もう一方で留意が必要なのはセキュリティ面だ。

 テレワーカーは会社から提供されるようなセキュリティ対策を整えていないケースも多い。仕事を進める上で、取り扱う情報によっては、発注者側から注意を促すことはもちろん、契約でその取り扱いを定めたり、十分な情報管理が保てる環境(ソフトウェアなど)を支給する必要も検討しなければならない。その際には、個人情報保護法のような法規を遵守することはもちろんだが、ガイドブックでも紹介されているIPA(独立行政法人 情報処理推進機構)の「SOHO・家庭向けセキュリティ対策マニュアル(Ver1.20)」や、スマートワーク総研で紹介しているソリューションも参考になるはずだ。

『検討しなければならないことが多くて大変だ』と感じた読者も多いかもしれない。これまで日本の会社では、家族・学校のような感覚で「曖昧に仕事を頼む」ということが日常的に行われてきた、ということもその背景にある。しかし、働き方改革を進める上では、5W1Hを明確にしたコミュニケーションは社外だけでなく社内でも欠かせないものになりつつある。テレワーカーの活用を契機として、仕事の進め方を再検討すべき時期にさしかかっているとも言えるのだ。

「特集 働き方改革再入門 2018」
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※テーマは予告なく変更する場合があります。

筆者プロフィール:まつもとあつし

スマートワーク総研所長。ITベンチャー・出版社・広告代理店・映像会社などを経て、現在は東京大学大学院情報学環博士課程に在籍。ASCII.jp・ITmedia・ダ・ヴィンチニュースなどに寄稿。著書に『知的生産の技術とセンス』(マイナビ新書/堀正岳との共著)、『ソーシャルゲームのすごい仕組み』(アスキー新書)、『コンテンツビジネス・デジタルシフト』(NTT出版)など。

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