戸田覚の週刊「ジバラ」-自分働き方改革のススメ -【第1回】

なぜ、企業や政治の取り組みだけでは不十分なのか?



「働き方改革」が各所で話題になっている。システムやソフトウエア、ハードも働き方改革を支援する製品が目白押しで、セミナーも数え切れない。間違いなくトレンドになっているのだ。ところが、働き方改革は、会社や政治に押しつけられてもなかなか思い通りにはできない。そこで、自分なりの効率化を目指した連載をスタートする。

文/戸田 覚


政治や上司は働き方を改革できない

 古今東西の歴史を振り返っても、働き方が大きく変わったのは、政治の力ではない。産業革命など、ビジネスの大きなトレンドの変化とともに変わったに過ぎないのだ。

 直近の例を見てみよう。僕が20代の頃はコミュニケーションの主役は電話とファクシミリだった。ところが、どちらも最近は利用率が減少している。特にファクシミリを送ることはほとんどなくなった。いまや、コミュニケーションの主役は電子メールへと代わり、さらにビジネスチャットも重要視され始めている。

 これは、政治家や上司が決めたことではなく、ツールがそのように進化してきたからだ。便利な道具は普及して広く使われるようになり、結果として働き方も大きく変わる。1日に30本の電話をかけるのはとても大変だが、30通のメールを読んで返信するくらいは誰もが普通に行っている。しかも、会社に座っている必要もなく、電車の中や自宅でもメールは返せる。固定電話に縛られていた20年程前に比べると、働き方は圧倒的に変わってきているわけだ。

「効率化を極めて労働時間を減らせ」「残業をなくせ」というスローガンは魅力的に映るが、現場では「それは無理だ」という声ばかりが聞かれる。確かに、具体的な方法を提示せずに目標だけを提示しても、実現できるはずがない。

 働き方改革に必要な取り組みはさまざまで、すでに多くの企業が何かしらの取り組みを開始しようとはしているが、企業規模の大小なども影響してなかなか手がつけられない施策もあるようだ。下図は2017年に商工中金が発表した『中小企業の「働き方」に関する調査』からの引用だが、大企業とは各施策への取り組みのバランスが異なっている。

 このように会社の体制や規模などによって、十分な「働き方改革」の推進が難しいケースもある。

最高の時短は小さな物から

 もちろん、自分なりの効率化を目指すとはいっても、大がかりな働き方の改革は個人レベルで実施するには無理がある。例えば、自宅で作業する「テレワーク」はとても魅力的だが、会社が仕組みを整えて、制度を変えなければ実現できない。

 現実的に私たちが自分で取り組めるのは、ちょっとした働き方改革だけなのだ。だが、細かなことだからといってバカにしてはいけない。5分、10分の効率化を積み重ねることで、週に数時間、月間で数十時間の効率化につながる。

 例えば、書類やファイルを探している時間は、やり方を変更すれば、数分の1、数十分の1にできる。メールで届いた作業の指示をTODOリストに登録するのが面倒だが、こちらも効率的な操作方法を知っていれば、数秒で登録できるようになり、うっかり忘れも激減できる。本連載では、このようにすぐにできて効率的な「自分働き方改革」の方法を順次説明していくのでご期待いただきたい。

 なお、「自分働き方改革」は略して「ジバラ」と呼ぶことにしたい。「自分働き方改革」の「ジバラ」は、「自腹」と違って懐が痛むことはない。ジバラを少しずつ推し進めて、自分で働き方を変えていこうではないか!

 次週は、仕事でメモとして記録した写真を、手間をかけずに整理する方法を紹介する。

筆者プロフィール:戸田 覚

1963年生まれ。IT・ビジネス書作家として30年以上のキャリアを持ち、「あのヒット商品のナマ企画書が見たい」(ダイヤモンド社)など著作は150冊を超え、IT系、ビジネス系を中心に月間40本以上の連載を抱えている。テレビ・ラジオ出演、講演なども多数行っている。