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2018/08/28

ものづくりへのIT活用事例とその効果、さらに未来を探るパネルディスカッションを開催



「DISわぁるど in 北陸 かなざわ」レポートその1

ICT・IoTの総合イベントとして毎年開催されている「DISわぁるど」。今年は「ICTで“つなぐ”伝統と革新」をテーマに、石川県金沢市で「DISわぁるど in 北陸 かなざわ」が開催された。その中で、IT活用による地元企業の働き方改革の事例紹介とパネルディスカッションを開催。来場者が真剣に働き方改革のヒントを探していた。

文/陣武雅文 撮影/篠原孝志


第四次産業革命を北陸から! 働き方改革のこれまでの動き

 新しい技術の登場やその進化によって、毎年取り組むべきレイヤーが変わっていく働き方改革。本パネルディスカッションでは、まずモデレータを務めた一般社団法人クラウドサービス推進機構代表理事の松島桂樹氏が働き方改革の近年の動きについて解説し、その後、登壇者による自社事例の紹介と、パネルディスカッションが行われた。

一般社団法人クラウドサービス推進機構 代表理事 松島桂樹氏

 第四次産業革命、あるいはインダストリー4.0という言葉の登場から、政府による日本再興戦略を経て、中小企業のIT化へ補助金などの予算がついた2016年は、その推進のための事例やツールの収集と公開、それからIT化を支援する専門家の養成が行われた。そして2017年はその普及の年となり、地方版IoTラボなどに多くの自治体が手を挙げ、普及させるための啓発的事業が進んだ。これを踏まえ、今年2018年は、IoTを経営に結びつける年と語る松島氏は「IoTはあくまで入口で、始めただけでは効果があるわけでなく、この入口を入ったところに何があるのか共有したい」という。

 現在の日本の最大の問題である人手不足を解消するためには、IoTによるデータの自動収集、そして企業間での連携、ロボット導入、AIによる異常検知などが必要と説いた松島氏は「情報を共有して一歩進みましょう」と来場者に語りかけ、ITを活用し、働き方改革を行っている3社の事例紹介に進んだ。

映像記録で生産性向上を図る小林製作所

 白山で精密板金を行い、機械の骨組みなどを作っている小林製作所。そこで行われている映像を使った働き方改革について、同社の専務取締役 小林靖弘氏が登壇し、その取り組みについて解説した。

株式会社小林製作所 専務取締役 小林靖弘氏

 小林製作所は自社でシステム開発を行い、その生産管理システムとカメラシステムも販売している。もともとは外国人研修生を採用した際、備品の紛失や設備破壊といったことが起こり、それに対応するため、防犯目的でカメラシステムを導入したが、それによって想定した以上のことに気づき始めたという。

 同社には現在180台のカメラが設置されており、10年分の映像データがあるが、生産管理システムからダブルクリックするだけで映像が取り出せる仕組みになっている。これを導入した結果、生産性や品質の向上、管理コストの低減、ノウハウの共有といった効果が出たと語る小林氏。手作業だった日報はデジタル画像で視覚的に確認できるようになり、工数も低減。さらに工程をトレースできることで様々な効果が生まれた。

 効率が重要視される製造業の中で、映像があれば、作業が早かった日と遅かった日を並べて比較し、その原因をつきとめて効率のいい作業方法を割り出すことができる。また、保存したデータを活用して職人が蓄積してきた技術を会社全体で共有できたり、商品に不具合があった場合の原因追及にも使える。

映像を残すことによって不良の原因がすぐに突き止められる小林製作所のシステム

 また、カメラを導入することで、就業状況を管理職が確認でき、従業員もしっかり見てもらえるぶん、モチベーションが上がるといった効果もあったとのこと。実際に生産性が3割向上したと、その効果が報告された。

 小林氏は今後について、「コンピュータを有効活用することで、社員を中心とした、人の可能性を引き出すシステム、人を成長させるためのシステム開発を今後も行っていく」と締めくくった。

iPod touchをIoTとして用いて生産性向上を図る共和産業

 板金・塗装・組み立てで月4000近くのキャビンを作っている共和産業。同社からは企画管理部 部長 山﨑雅信氏が登壇し、iPad、iPod touchを用いた生産管理による働き方改革が解説された。

共和産業株式会社 企画管理部 部長 山﨑雅信氏

 多品種の商品を1日180程度製作しているという共和産業では、システムが前提となった生産の仕組みが構築されており、その工程管理や作業管理にiPadとiPod touchを用いて生産性を高めている。山﨑氏によると、端末の機種を統一できること、OSなどのメンテナンスのしやすさという点で、現状、最適な選択となったのがiPadとiPod touchだったとのことだ。このiPadとiPod touchは従業員に配布され、生産指示や作業管理、実績管理などに用いられている。

 例えば、iPod touchに表示された部品について、棚のバーコードを確認しながら、指示された分量を取り上げるといったピッキング作業に用いる。事務所からは生産指示をしながら、その実績を確認。部品の使用量に対して受発注の在庫管理、サプライヤーへの発注が行える。

従業員はタブレットを用いて管理を行っている

 これらの情報はその生産性や標準時間を割り出し、生産計画を立てることにも使われる。そして、その生産性は標準時間に対し、早く終わっているか、オーバーしているかが数字でもグラフでも見ることができるので、従業員自身も生産性を確認でき、モチベーション向上にもつながる。もちろん作業日報などはすべてデータ登録で終わるようになっている。

 山﨑氏は「ロボットのデータも吸い上げ、稼働率などを割り出している。今後はロボットにも重点的に取り組もうと思っている」と、次のステップについて語り、事例紹介を終了した。

社内開発ソフトで情報収集から分析まで一気に行う中村留精密工業

 国内外での工作機器の製造・販売を行っている中村留精密工業。同社からは生産本部 システム改革課 課長 中宮正人氏が登壇し、ICTを活用した生産性向上について解説が行われた。

中村留精密工業株式会社 生産本部 システム改革課 課長 中宮正人氏

 多品種少量生産に対応していくために、生産性向上が課題だという中村留精密工業。そのために行ったのは、作業工数の短縮と3M(ムリ・ムダ・ムラ)を減らすことを目標としたICT導入。そのために日報を細分化し、Excelに入力していたが、誰が入力するか、さらに誰が分析するかといったこともあり、その先につながらなかったという。そこで、タブレットと社内開発ソフトを用い、入力から分析まで一気に行えるシステムを構築した。

 タブレットには最新の生産計画を自動で読み込み、それぞれのその日の作業を可視化。作業開始、完了、次の作業開始といったタイミングでiPadをタップすることで、作業単位の工数を収集している。集められた情報はネットワークを通じて、誰が何の作業をしていて、問題が起きていないか、標準時間で進捗しているかのチェックや達成率も表示できる。そして、いち早く分析できるよう、アナライザーも開発している。

全生産現場へタブレットを導入し、3Mの削減と生産性の向上を目指している

 実際に収集した情報を見比べた際、この工程だけ同じような割合で標準時間を超えているといったことがわかるので、例えば取り付けに時間が掛かっているのであれば、加工を並行作業にすることでその時間を短縮するといったことができたとのこと。また、部品の欠品をなくしたり、作業者に運搬をさせず、組み立てに専念させることで余計な時間を省くことができるといった効果が得られたと解説された。

 また、中宮氏から今後の取り組みについて、全生産現場へのタブレット導入、図面の電子化、品質保証書になりうる精度記録書の完全電子化をはたし、完全ペーパーレスの環境を整えたいという目標も示された。

取得すべきデータと業務の自動化についてディスカッション

 3社の事例紹介の後、登壇者によるパネルディスカッションが行われた。このパネルディスカッションではIoTによって取得したデータの活用や、ロボットの導入や自動化といった、今後のトレンドとなる働き方改革に対し、意見交換がなされた。

パネルディスカッションでは、それぞれの経験則から貴重な意見を聞けた

 まずそれぞれの会社がなぜIoTを使ったデータ収集を始めたのか、そのときどのように思っていたのかが尋ねられると小林氏は「ITを活用するまでは、すべて電卓で3回検証することを行っていた」といい、「そういうムダを減らしたい」と、あくまで業務の効率化が主目的であったが、データを取ってみて初めて気づくことがあると語る。

 「溶接作業が遅い人と早い人がいて、取得した映像を比較したところ、溶接にかかる時間は変わりがなかった。しかし、遅い人は始める前に図面を見ている時間が長く、図面の読み方を教えないといけないことに気づいた。データを取得して初めて気づいたことです」と、想定していない問題に気づけるのはデータを取得したことによる効果であったことを示した。

 中宮氏も「どのようなデータを取得するか、的を絞ってしまうと、その部分しかデータを取らないので、部門によっていろいろなことのデータを取らなければならなくなる。それであれば全部取得してしまったほうがよく、思いもよらないデータが見られて改善に結びついていく」と、小林氏同様、新たな気づきについて語った。

 これに対し山﨑氏は「取得できるデータをたくさん取れとは思っていない」といい、「目的を持ったデータを取り、仮説を立てて、このデータとこのデータが必要としたほうがいい」と語る。その上で「いちばん大切なのは、どのようなデータがほしいのかという感性であり、何を求めているかといった部分に重点を置いている」と、取得したデータから必要とする対象を引き出す点が重要だと述べた。

それぞれの視点からの意見交換がなされたが、データ取得・活用が重要であるという点は3社とも同意見であった

 この後、話題はロボットや自動化に進み、登壇者それぞれの意見が語られる。小林氏は「物の運搬などについてAmazonなどですでに自動化されているが、現在の業態だと当面はまだという感じがある。似ている部品が多すぎるので、もう少し時代を待ちたい」と、時期尚早な面があることを示した。

 山﨑氏も「省人化のために導入しているが、どちらかというとロボットは品質確保の道具になっている」といい、「それを導入するための人を抱えることがたいへんなので、そういう部分はアウトソーシングするといったことを考えている」と、その導入の問題を指摘。これに対して中宮氏も「ロボットが入ってくると製造業の人間の仕事がなくなるので、人とロボットのせめぎあいがある」と現状を分析。しかし、「簡単な作業はロボットが入り、これから自動化されていく」と、今後、自動化が進んでいくという認識が示された。

筆者プロフィール:陣武雅文

元デザイナーながら、MS-DOS時代からパソコン書籍編集者を務める。インターネット黎明期からコンピュータネットワークにおけるコミュニティに興味を持ち、制作した書籍もネット関連やグループウェア関連が多い。現在は働き方改革と最新テクノロジーの関わり方に注目している。

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