スマ研・ニュース解説 Vol.3

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【NewsPickUp-2】

「働き方改革に関する実態調査【企業の取り組み編】」で見える、働き方改革の進行具合

ジャストシステムは、20歳から65歳までの会社員の男女を対象とした「働き方改革に関する実態調査【企業の取り組み編】」を2018年7月20日に発表した。調査は、マーケティングリサーチの情報サイト「Marketing Research Camp」で、ネットリサーチサービス「Fastask」を利用して実施した。有効回答数は1,000で、在籍企業の働き方改革への取り組みの内容や効果などを公表している。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000317.000007597.html

在籍企業の取り組み(「働き方改革に関する実態調査【企業の取り組み編】」より)

【解説】

 アンケート調査には、常にサンプルが適当かどうかという問題が付いて回る。インターネットを利用した調査も、当初はインターネットを使える人というフィルターがかかるとして疑問視され、インターネットの普及率が上がるまではあまり利用されなかった。

 企業アンケートでは、企業規模や従業員数といった項目とのクロス集計で、大企業の傾向と中小企業の傾向を比較するなどして、分析を行うことが多い。「働き方改革に関する実態調査【企業の取り組み編】」では、従業員規模に加え、年代別のクロス集計を行うことで、世代的な働き方改革への取り組みや評価などを見られる調査になっている。

 また、働き方改革に取り組む前提としての「現在の業務量(の過多)」や「在籍企業の働きやすさ」といった質問項目が用意されているため、調査対象である従業員が自社における現状の業務をどう評価しているかを知ったうえで、働き方改革への取り組みを評価することが可能だ。

 現在の業務量については「自分がこなせる業務量を完全に超えている」が7.9%で、「かなり業務量が多いと思う」「やや業務量が多いと思う」を合わせると全体の72.5%になり、業務量が多いと感じている人が多いことがわかる。しかし、在籍企業の働きやすさについては「とても働きやすい」と「働きやすい」の合計が42.4%で「どちらともいえない」が34.8%と、働きにくさを感じている人は少数派だ。

 これらの数字は、生産性の向上を求められ、個々人の仕事量は増加しているが、社会的にそうした傾向があるのだから、自分の在籍企業が特別ブラックというわけではないと感じている従業員が大半だということを示している。

 在籍する企業の働き方改革への取り組みの効果については「効果を感じている」10.3%、「効果を少しは感じている」38.4%とほぼ半数が効果を感じ、「効果はあまり感じられない」26.5%「効果は感じられない」21.9%の合計と同じような数字だが、全く感じていない層が2割強なのに対し、少し感じている層が4割弱というのは、まだ働き方改革への取り組みが途上であることをうかがわせる。

 働き方改革で効果を出すために必要なことという問いでは選択肢の中で「あてはまる」「ややあてはまる」の合計が高かったのは「現場の実態を人事や経営がもっと把握するべきだ」「制度そのものを現場の実態にあったものにするべきだ」「業務プロセスをもっと効率的にするべきだ」などで、逆に「ひとりあたりの業務量をもっと減らすべきだ」や「採用活動の仕方そのものを見直すべきだ」などの値は低い。従業員は働き方改革による生産性向上の必要性は感じているが、まだ現場にフィットした形での施策が企業として導入されていないと感じているようだ。

 就業中の会社で取り組んでいる働き方改革では、「有給休暇の取得促進」が最も多く(27.2%)、次いで「ノー残業デー」(19.1%)、「再雇用制度」(16.2%)だったが、業種別で見てみると、金融・保険業では「ノー残業デー」(42.3%)、広告・マスコミ業では「育児・介護休暇の取得促進」(28.6%)、官公庁・団体では「再雇用制度」(25.0%)が最多となっている。業種・業態によって、優先すべき施策、取り組みやすい施策が異なっているためだろう。

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