スマ研・ニュース解説 Vol.3

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【NewsPickUp-3】

総務省がホワイトカラー労働者の勤務間インターバルの状況推計を発表。

総務省統計局は勤務間インターバルの導入状況について、平成23年と平成28年の社会生活基本調査をもとに推計、平成30年7月10日に「統計トピックスNo.112」として発表した。平成28年のホワイトカラーの勤務間インターバルでは、14時間以上15時間未満が21.7%で最も多く、11時間未満は10.4%だった。

https://www.stat.go.jp/data/shakai/topics/topi112.html

勤務間インターバルのイメージ(総務省統計局「統計トピックスNo.112」より)

【解説】

 長時間労働を改善する方法としては、まず残業時間の短縮が挙げられるが、実際に改善効果が上がっているかどうかを確認するには、勤務終了と次の勤務開始の間隔である勤務間インターバルを見ていくことが有効だ。1時間の昼休憩をはさんで9時から18時まで働く場合、勤務間インターバルは15時間になる。月80時間レベルの残業を1日4時間ずつ行うと、勤務間インターバルは11時間になる。この勤務間インターバルをきちんと取得することで、疲労回復やストレスの軽減が図れると言われている。

 EUでは労働者の健康と安全確保の観点から、労働時間指令により、24時間につき最低連続11時間のインターバルを付与することが義務付けられている。EUの施策などを受け、日本でも厚生労働省が「時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)」を設け、勤務間インターバル導入に取り組む企業に助成金を支給する、いわゆる「勤務間インターバル制度」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000150891.html)が開始されている。

 すでに大手企業でも勤務間インターバルを導入済みの企業は少なくない。AGSやKDDI、本田技研工業、ユニ・チャームなどの取り組みを集めた事例集も厚生労働省が発表している(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/CaseStudies2017.pdf)。

 労働時間の調査は毎年行われているが、勤務間インターバルについての統計は少なく、これまで総務省統計局の平成23年のデータのみだった。今回、28年データがまとめられたことによって、より最近の状況が分かり、勤務間インターバルの増加・減少傾向などの把握が可能になった。

 平成28年の勤務間インターバルの状況では14時間以上15時間未満が21.7%と最も多く、13~16時間に全体の57.7%が含まれていたが、11時間未満も10.4%あった。11時間未満の割合は男性で14.3%なのに対し、女性は4.8%と3分の1程度になっている。また、職業別では教員の11時間未満の割合が26.3%と他の職業と比較して著しく高く、ホワイトカラー全体の2.5倍となっており、最近問題視されている教員の長時間労働が裏付けられた形だ。

業種別勤務間インターバルの分布(総務省統計局「統計トピックスNo.112」より)

 平成23年のデータと比較すると、全体では11時間未満の割合は、男性で0.7ポイント、女性で0.2ポイント、わずかに上昇がみられる。また、年齢別にみると11時間未満は25~34歳の若年層で上昇が目立ち、特に25~29歳で上昇の度合いが大きい。また、教員では女性の11時間未満が10.1ポイント上昇し、男女差は5年間で縮小している。

 平成28年と言えば、社会が働き方改革の重要性に気づき、多くの企業で働き方改革の取り組みが開始され始めた時期だ。今回の調査もその意味では、働き方改革のスタートラインの状況記録ととらえるべきだろう。5年後には、勤務間インターバルの状況が大幅に改善されていることを期待したい。

筆者プロフィール:狐塚淳

 スマートワーク総研編集長。コンピュータ系出版社の雑誌・書籍編集長を経て、フリーランスに。インプレス等の雑誌記事を執筆しながら、キャリア系の週刊メールマガジン編集、外資ベンダーのプレスリリース作成、ホワイトペーパーやオウンドメディアなど幅広くICT系のコンテンツ作成に携わる。現在の中心テーマは、スマートワーク、AI、ロボティクス、IoT、クラウド、データセンターなど。

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