スマ研・ニュース解説 Vol.4

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【NewsPickUp-3】

休みを年間8日間以上取れない日本人。「グローバル5か国休暇意識調査」

世界各国のさまざまなデータ収集に特化したITソリューションを提供するSyno Japan株式会社は、新コンテンツ「グローバルリサーチブログ」の第一弾として、同社のネット調査ツールグローバルオムニバスを利用し、日本、米国、ドイツ、シンガポール、メキシコの5か国の「休暇取得に関する意識調査」を実施した。休暇取得日数では、日本は最下位だった。

https://www.synojapan.com

国別の休暇獲得日数、TOPはドイツで三週間で最下位は日本で8.76日

日本では社会人経験の少ない若者が特に休暇を取得しづらい
 

【解説】

 働き方改革や生産性向上等、企業の勤務形態を見直す取り組みが近年注目されているが、海外からは「日本人は長時間働きすぎ」「有休を消化していない」といったイメージが強い。日本人の休暇取得についての意識はどうなっているのだろう?

 Syno Japanは「休暇取得に関する意識調査」を、日本、米国、ドイツ、シンガポール、メキシコの5か国、18~79歳の一般消費者の男女を対象に、2018年4月に実施した。調査方法は同社のSynoグローバルオムニバスを使用したインターネット調査で、各国1,000名超(シンガポールのみ541名)の回答を得た。

「あなたの職場で、年間で最大何日間の休みを取得することができますか?」という同調査の問いに、最大のドイツでは3週間、5か国平均が2週間なのに対し、日本は最下位で8.76日だった。国内では多くの企業が初年度10日、勤続年数に応じて最大20日といった有給の設定をしているが、日本では初年度分の有給休暇も消化しきれていない。各国に比べ、非常に有給休暇取得率が低いと言える。

 欧州は働き方改革に先進的に取り組んでいる国が多く、このアンケートでもドイツは5か国中TOPとなり、男女ともに20日以上休みを取ることができると回答している。一方、日本は男性は12.5日、女性は4.95日、平均で8.76日と5か国中最も少ない結果となった。唯一の一桁日数であり、休暇を取ることができる環境や従業員の意識は他の国と大きく異なっていると言わざるを得ない。

 年代ごとに見てみると、日本と米国の若い世代は休暇が取りにくいが、米国では55歳以上になると休暇日数が大幅に増加する。日本は、23~35歳は6.47日と極端に少なく、若手社会人の時期は、休暇取得が困難な状況だ。一方、ドイツは年代問わず20日を超えていることから、企業内に休みを取りやすい環境が確立されていることがわかる。やはり、日本の休みの取りづらさというのは予想通りだったという調査結果になっている。

 こうした日本の有給休暇が取りにくい企業環境は「働き方改革」を推進する政府も問題視している。厚生労働省では、年次有給休暇を取得しやすい環境整備を推進するため、次年度の年次有給休暇の計画的付与制度について労使で話し合いを始める前の10月を「年次有給休暇取得促進期間」として、全国の労使団体に対する周知依頼、ポスターの掲示、インターネット広告の実施やシンポジウムの開催などの活動を行い、計画的付与制度の導入促進に努めている。(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000179301_00006.html

 年次有給休暇については、ワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議において策定された「仕事と生活の調和推進のための行動指針」で、2020年までに取得率を70%とすることが目標として掲げられているが、まだ50%を下回る水準で推移しているという。

 労働基準法が改正され、平成31年4月から、年10日以上の年次有給休暇が付与される全ての労働者に対し、毎年5日間について、時期を指定して年次有給休暇を与えることが必要となるなど、「休みやすさ」に向けた制度的な取り組みは前進している。

 もちろんこうした制度的な働きかけも重要だが、働き方改革では、制度を変更して進む部分と、労使双方の意識を変えなくては進まない部分がある。勤勉を美徳として会社への滅私奉公を尊いとする昭和の猛烈社員的な価値観が、平成も最後になってようやく解消に向かっているようには思えるのだが、職場環境はまだまだそれに追いついていないようだ。

筆者プロフィール:狐塚淳

 スマートワーク総研編集長。コンピュータ系出版社の雑誌・書籍編集長を経て、フリーランスに。インプレス等の雑誌記事を執筆しながら、キャリア系の週刊メールマガジン編集、外資ベンダーのプレスリリース作成、ホワイトペーパーやオウンドメディアなど幅広くICT系のコンテンツ作成に携わる。現在の中心テーマは、スマートワーク、AI、ロボティクス、IoT、クラウド、データセンターなど。

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