スマ研・ニュース解説 Vol.5

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【NewsPickUp-3】

TISは60歳以上も処遇制度が変わらない「65歳定年制」を導入へ

TISは、職種に基づく基本給、賞与、人事評価などの処遇制度が60歳以降も変わらない「65歳定年制」を、2019年4月に導入すると発表した。労働力不足解消や、政府が主導する70歳定年制などの課題に向けた働き方の第一歩だ。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000504.000011650.html

【解説】

年金の受給開始を70歳まで引き上げた場合月額10万円以上受給額が増えるといった試算がさかんに報道されている。昔と比べれば、体もはるかに動くし、一般的な60歳の定年以降も体が丈夫なうちは働きたいという要望を持つ人は多い。企業の労働者不足も深刻で、シニアの働き手と企業のニーズはマッチしている。

しかし、制度の改正が追い付いていないため、定年以降は嘱託での雇い直しという企業が多く、60歳以降は給与も大幅に減額され、処遇も変更になるケースが少なくない。基礎年金の支給開始年齢は段階的に引き上げられており、男性は2025年に、女性は2030年に65歳からの年金支給となる。年金受け取り開始までの期間の収入減は、ライフプランから考えても問題だ。そのため、60歳以降も処遇面でも現役を継続できる仕組みが社会的に求められている。

そんな状況に一石を投じる試みが発表された。SIの受託やデータセンター、クラウドなどのITソリューションサービスを手がけるTIS株式会社は、職種に基づく基本給・賞与、人事評価などの処遇制度が60歳以降も変わらない「65歳定年制度」を、2019年4月に導入する。

TISの「65歳定年制度」では、定年退職年齢を従来の60歳から65歳に延長し、60歳までの職種・処遇制度、手当、勤務制度などが60歳以降も適用される。また、社員のライフプランも考慮し、選択式定年制により、60歳、63歳での定年退職も可能としている。

同社は以前から、多様な社員一人ひとりの成長と会社の持続的な発展を実現する『働きがいの高い会社』を目指すことを方針としており、テレワークやスーパーフレックスなどの「働き方改革」、長時間労働対策や両立支援、ヘルスリテラシー向上などの「健康経営」に取り組んできた。

現在、TISには約60名の60歳以上のシニア社員が在籍し、今後数年で現在の倍以上の社員が制度の対象となる予定だ。同社では「中高年期の社員が長く活躍でき意欲的にその能力を発揮することができる環境を整備し、会社としても高いノウハウと能力を持つ人材に意欲的に活躍してもらうことで、企業体力の強化とさらなる成長を目指す」としている。

同社の従業員はSEなどが多数を占めるため、体力的な衰えの影響は少なく、むしろ経験による貢献が期待できるという側面はある。すべての業種で同様の制度が組み立てられるかは問題だが、今後さらに進行する人材不足と、将来的に可能性のあるさらなる年金受給年齢の引き上げなどを考えると、こうした施策は社会的にも歓迎され、企業のためにもなる。TISのような取り組みを考える企業は今後増加していくだろう。そして、処遇の変わらない65歳定年制が普及した将来には、65歳以降の再雇用の問題が議論されるようになるだろう。

筆者プロフィール:狐塚淳

 スマートワーク総研編集長。コンピュータ系出版社の雑誌・書籍編集長を経て、フリーランスに。インプレス等の雑誌記事を執筆しながら、キャリア系の週刊メールマガジン編集、外資ベンダーのプレスリリース作成、ホワイトペーパーやオウンドメディアなど幅広くICT系のコンテンツ作成に携わる。現在の中心テーマは、スマートワーク、AI、ロボティクス、IoT、クラウド、データセンターなど。

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