スマ研・ニュース解説 Vol.6

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【NewsPickUp-3】

連合(日本労働組合総連合会)、働き方改革相談のLINE受け付けを実施

連合(日本労働組合総連合会)は、2018年12月11日・12日の両日、LINEアカウントによる働き方改革相談を受け付けた。連合は従来より、働き方改革相談をはじめとした労働者の相談を受け付けてきたが、LINEによる相談受付は初。今回のLINE受付は2日間限定だったが、労働者の多様化する働き方に対応するために、相談のチャネルを拡大することは、有効な試みだ。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000023559.html

【解説】

連合(日本労働組合総連合会)の名前を聞くのは春闘と、総選挙の支持政党表明時くらいという人も少なくないだろう。現在、労働組合のある企業は2割を切り、社会人になって以来組合加入経験がないビジネスマンも多い。

連合は、日本の労働組合の全国中央組織であるナショナル・センターで、加盟組合員は約700万人を数える。個々の労働組合が賃金や職場環境について、労働者を代表して企業と話し合う役割を持っているのに対し、ナショナル・センターは業界の枠を越え、働く人の悩みを共有し、課題を解決し、働く人の暮らしについて、政府と話し合う機会を設けるという役割を負っている。

また、連合は個々の組合員からの直接の悩み相談も受け付けている。労働形態が多様化する中、既存のやり方では吸い上げづらかった職場の問題に耳を傾けるために、LINEという新しいチャネルに積極的に取り組んだのは、その一環として評価できる試みだろう。

連合のサイトに掲載されている「職場で発生する様々な不安」にはセクハラ、パワハラ、不当解雇、賃金アップと並んで、ワーク・ライフ・バランスが挙げられており、従来の労働問題からスマートワークへの対応も開始されていることがわかる。

連合が取り扱う職場の問題は働き方改革と重なる
https://www.jtuc-rengo.or.jp/about_rengo/toall/necessary.html

労働組合組織の状況については厚生労働省が毎年「労働組合基礎調査」を発表している。この調査によると、労働組合員数は1994年のピーク時の1,270万人から減少し、ここ数年は1,000万人前後で推移している。2018年12月の最新の発表では、労働組合員数は1,007万人で、前年より0.9%増加しているが、雇用者数に占める組合員数の割合を示す推定組織率は前年より0.1%低下し過去最低となっている。

一方で、パートタイム労働者の労働組合員数は129万6千人で、前年より8万9千人、7.3%上昇している。推定組織率も13.0%と、前年比0.8%の上昇となり、過去最高の数字だ。これは非正規雇用の増加など、企業のビジネス形態や従業員の労働形態が変化してきたことの現われだろう。現在ではパートタイム労働者の割合は全労働者の3割と言われている。

パートタイム労働者が会社との集団での交渉を必要とする場合、企業内にパートタイム労働者も加入可能な組合があれば加入すればいいわけだが、存在しない場合には社外の合同組合に加入するという方法を取る。

就労時間も不規則になりがちなパートタイム労働者にとって、空き時間などにこうした仕組みを知り、必要な情報にアクセスするためにも、スマホの慣れた操作で行えるLINEによる相談受付というのは、有効な試みと言えるだろう。つまり、今回の取り組みは、働き方の多様化に合わせ労働者の課題解決のための方策にも多様性が求められるようになってきていることを表している。連合のような硬い組織でもこうした取り組みにトライしていっていることを考えると、企業も働き方改革のためのコミュニケーションに、SNSの利用をはじめとした多角的に選択可能な試みを、もっと進めていっていいのではないだろうか。

筆者プロフィール:狐塚淳

 スマートワーク総研編集長。コンピュータ系出版社の雑誌・書籍編集長を経て、フリーランスに。インプレス等の雑誌記事を執筆しながら、キャリア系の週刊メールマガジン編集、外資ベンダーのプレスリリース作成、ホワイトペーパーやオウンドメディアなど幅広くICT系のコンテンツ作成に携わる。現在の中心テーマは、スマートワーク、AI、ロボティクス、IoT、クラウド、データセンターなど。

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