スマ研・ニュース解説 Vol.7

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【NewsPickUp-3】

地方自治体の臨時職員雇用が2020年度から大きく変更される予定だ。来年4月から施行される「会計年度任用職員制度」は、これまで自治体ごとに異なる条件で雇用されていた臨時職員の雇用を国が制度化したもので、フルタイムとパートタイムに2分され、それぞれの雇用条件等が定められている。

URL: http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/koumuin_seido/index.html

会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアルの改訂について(通知)より
http://www.soumu.go.jp/main_content/000579717.pdf

【解説】

 民間では2019年4月施行の「働き方改革関連法案」対応に関心が集まっているが、その1年後2020年4月に、2017年5月の地方公務員制度の改正で公布された「会計年度任用職員制度」の施行が予定されている。これは、地方自治体の臨時職員の雇用形態を大きく変える制度で、政府の働き方改革実行計画で掲げられている「同一労働同一賃金」の実現に向け、地方公務員の正規・非正規格差の是正に向けた取り組みと位置付けられている。

 総務省の統計では、地方自治体の臨時職員や一般非常勤職員は全国で64万人以上が存在し、これは日本の就業人口のほぼ1%に当たる。これまでは自治体ごとに勤務条件などが異なる形で雇用されてきたが、これらを「会計年度任用職員」として給与体系や勤務条件を整備し、処遇改善を進めることを狙いとしている。

 名前が示す通り、会計年度を越えない形で、毎年3月31日までには必ず任期が切れ、再度の任用については可能だが、保証されるものではない。実質的には継続的に雇用されている非常勤職員もおり、その部分で不十分との指摘も一部にはあるが、全国的な基準が設けられたことは、自治体の臨時雇用職員の「働き方改革」への第一歩だと評価したい。

「会計年度任用職員制度」では、これまで多様であった非常勤雇用を常勤職員と同一労働時間の「フルタイム」と、それ未満の勤務時間の「パートタイム」の2種に分け、それぞれの給付の考え方を示している。全員への期末手当の支給や、フルタイム職員への特殊勤務手当や地域手当の支給、社会保障の統一基準などが定められたため、条件面での従来からの改善が期待される。最近、過重労働が注目されている公立校の臨時教員なども「会計年度任用職員制度」の対象となるため、働き方の改善につながることを期待したい。

会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアルの改訂について(通知)より
http://www.soumu.go.jp/main_content/000579717.pdf

 一方で、地方自治体では既存の制度に対する条例などによる次年度施行対応が急がれており、人事や会計処理では、「会計年度任用職員」の服務管理や給与計算など管理業務の増大も予想される。これに対しては「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」が提供されている。事務処理の変更に対応するためにはソリューションの導入等が必要になるケースも多いだろうが、すでに自治体用LG-WAN対応のSaaS(サース/サーズ)型ソリューションも登場している。

 企業と自治体、働き方改革へのアプローチは異なるが、法整備を受けて具体的な取り組みに向かうという点では共通する部分もあり、どちらも目的は働く人が幸せなワークライフバランスを築けるように努力していくことだ。「会計年度任用職員制度」の施行が自治体、民間の双方に好影響を与えることを期待したい。

筆者プロフィール:狐塚淳

 スマートワーク総研編集長。コンピュータ系出版社の雑誌・書籍編集長を経て、フリーランスに。インプレス等の雑誌記事を執筆しながら、キャリア系の週刊メールマガジン編集、外資ベンダーのプレスリリース作成、ホワイトペーパーやオウンドメディアなど幅広くICT系のコンテンツ作成に携わる。現在の中心テーマは、スマートワーク、AI、ロボティクス、IoT、クラウド、データセンターなど。

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