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2019/06/27

あの人のスマートワークが知りたい! - 第20回

2020年に向けテレワークの機運は高まっている -日本テレワーク協会 中山洋之専務理事に聞く



テレワークへの関心は高まっているが、導入・普及はまだ十分とはいえない。7月には東京オリンピックを翌年に控え、最後の「テレワーク」の予行演習が始まる。日本におけるテレワークのはじまりとこれまでの取り組みについて、一般社団法人日本テレワーク協会専務理事の中山洋之氏に伺った

文/狐塚淳


中山洋之
一般社団法人日本テレワーク協会専務理事。富士ゼロックスで米国、中国、シンガポールなどの長い海外赴任経験を経て、2015年に日本テレワーク協会に出向。テレワーク関連セミナー等で講師として全国を訪れている。

サテライトオフィス協会からテレワーク協会へ

―― 日本テレワーク協会は、長い歴史をお持ちですね。

中山 1991年に設立した日本サテライトオフィス協会が前身です。当時はバブル景気で都心のオフィススペースが高騰していましたが、フレックス制度もほとんどなく通勤は過酷でした。インターネットや携帯電話が無い時代、NTTや富士ゼロックスをはじめとする複数の企業が都心の郊外においてサテライトオフィスの実証実験を始めたことがきっかけとなりました。その後インターネットが普及しモバイルワークなどが広がり、時代の状況に対応して2000年から日本テレワーク協会に改名して活動しています。現在は290以上の企業・団体が会員になっています。

―― 協会の主な活動を教えてください。

中山 大きく分けて2つの活動があります。1つは政府と連携してテレワークの普及・啓発を促進しています。テレワークに関連する総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省の4省が、それぞれのアプローチでテレワークを推進していますが、テレワークの普及啓発に向けたセミナー・シンポジウムの開催や、優秀事例の表彰、あるいは相談センターの開設や専門家派遣、助成金制度などによるテレワークの導入をサポートしています。もう1つが協会としての独自活動です。毎年400名以上のお客様をお招きし、経営トップによる働き方改革やテレワークの講演・議論を行うトップフォーラムを開催したり、テレワークに顕著な取り組みをした企業・団体の表彰(今年は第20回テレワーク推進賞)を行っています。また、5つの研究部会や産官学によるテレワーク推進フォーラムの運営を実施するとともに、政府・民間団体への各種提言を行っています。

日本テレワーク協会のサイト
https://japan-telework.or.jp/

2016年以降の急速な関心の高まり

―― 世間の関心の高まりに合わせて、会員数も増加している感じですか?

中山 安倍首相が2016年に一億総活躍社会に関する記者会見で「働き方改革は次の3年間の最大のチャレンジ」と表明するとともに、政府が働き方改革の切り札としてテレワークを強力に推進していることもあり、この数年テレワークへの関心は大いに高まり、会員数も急速に増加しています。それ以前の会員はテレワーク自体をビジネスとして考えているIT企業や本国では当たり前にテレワークを実施している外資系企業などが多かったのですが、最近増加しているのは、そうしたITサービスやソリューションを利用するユーザー企業や地方自治体など、一般の企業・団体です。

―― 行政の動きがきっかけになって関心が高まっているのですね。

中山 2011年の東日本大震災でテレワークが一度注目されましたが、その後徐々に関心が薄れてきていました。しかし、第二次安倍政権下で再び注目を集めました。2016年秋に「働き方改革実現会議」の第2回会議のテーマとしてテレワークが議論されたことでも関心が高まりました。そして政府のリーディングにより、2017年の7月に国民運動プロジェクトとしてスタートした「テレワーク・デイ」(2018年以降「テレワーク・デイズ」)が今大きな注目を集めています。そのほかの理由としては、テレワークのための環境作りに欠かせないICTの進化が挙げられます。テレワークに必要となるリモートアクセス、コミュニケーション、セキュリティなどの機能が劇的に進歩しています。

―― テレワークを導入する企業の動機は変化してきていますか?

中山 以前は福利厚生が中心でしたが、現在は生産性向上をテーマにしている企業がほとんどです。

―― テレワークの定義自体は、各企業などで共通しているのでしょうか?

中山 定義については企業・団体で様々な表現があるようですが、日本テレワーク協会では、「ICTを活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」としています。また、働く場所による区分としては在宅勤務・モバイルワーク・サテライトオフィス勤務の3つです。企業などのテレワークへの取り組みは導入・普及・進化の3段階にわけることができます。導入は制度づくりやテレワークに必要なICT環境の整備、普及は活用人数、時間、頻度などを制度と合わせて向上させていくこと。ただし、テレワーク導入以前に、仕事のプロセスの見直しや、ペーパーレス、さらに、より重要な、働き方改革に取り組むための意識改革は必須です。

テレワークの政府KPIの変化

―― 日本のテレワーク導入状況、推進具合を現在どう評価されていますか?

中山 政府が2020年の目標値として、一つはテレワーカー制度等に基づく雇用型テレワーカーの割合を平成28年度比(7.7%)の2倍の15.4%以上に、また企業におけるテレワーク制度の導入比率を平成24年度の11.5%から3倍にするというものです。KPI達成にむけて、前者は順調に推移してますが後者は更なる推進が必要です。

―― こうした数字から何がわかりますか?

中山 これらの数字が示すのは、大企業を中心にテレワークの導入が進んでいるということです。今後の課題としては、中小企業や地方での利用をどう伸ばすかということになるでしょう。地方の場合は職住接近も多く、通勤時間のメリットだけのアピールでは難しいですが、地方にも高齢化やBCP、あるいは人材確保などの問題はあります。2016年に福岡市内で道路が陥没し数日周囲が停電になったことがありましたが、そこに社屋のあった保険会社は在宅勤務によって営業を継続できました。ケースバイケースでテレワークのメリットをひとつひとつ考えていくのは重要です。グローバル対応が必要な企業では時差の関係で夜中に在宅のWeb会議を認めることで、そのために会社に残っている必要がなくなります。また、テレワークを実施している企業の多くはオフィスをフリーアドレスにしてペーパーレス化を実現することで、結果的にコスト削減にも大いに寄与しています。このような取り組みの積み重ねにより、総務省は平成29年度の調査で、テレワーク導入企業の労働生産性は未導入の企業の1.6倍になったと発表しています。

テレワークにチャレンジするチャンスは?

―― 働き方改革のテーマとして、働く人の幸福が第一という認知が広がってきました。

中山 私の息子も子供ができたときに「テレワーク制度のある会社に移りたい」と相談してきましたが、実際に転職をした結果、現在勤務する企業のテレワーク制度を活用して子供の保育園のお迎えや料理をするなど、育メンにより夫婦で子育てをしています。働き方改革は、企業の視点と従業員の視点を合わせることで、相乗効果が生まれてきます。幸福や生きがい、やりがいを求める人に、今後柔軟な働き方を提供するためには、時間管理ではなく、欧米的な成果ベースの考え方も必要があるでしょう。

―― テレワーク導入に向けて苦労している企業の声をお聞きする機会も多いと思うのですが。

中山 日本テレワーク協会はテレワークに関する、多くの悩みに触れる機会があります。よくある質問は「テレワークに向いた仕事の有無」「セキュリティ」「コミュニケーション(マネジメント)」の3つです。解決するには成功事例をまねるのが近道ですが、中小企業の場合ICTとセキュリティ導入が壁になることが多いです。情報システム担当者もおらず投資コストの制約も多いためです。経営者の方は何かやらなくてはと考えていてもなかなか進まないケースもあります。

―― 難しいですね。

中山 ただ、現在はテレワーク導入のための支援策を活用できます。例えば、厚生労働省はテレワーク相談センターの開設や労務管理の専門家の無償派遣、助成金制度を用意していますし、総務省や東京都などの様々な支援策を提供しています。

厚生労働省テレワーク相談センターホームページ
https://www.tw-sodan.jp/index.html

―― 今年で第3回となる「テレワーク・デイズ」の実施も近づいています。テレワーク協会も共催されているとのことですが、これはもともとオリンピック開催時の交通機関などの混雑緩和に向けたイベントですよね?

中山 7月1日には「テレワーク・デイズ」のプレイベントが行われます。今年が最後の予行演習で、今回は7月22日から9月6日まで、来年のオリンピックの開会式からパラリンピック閉会式までと同じ期間が設定されていて、特別協力団体としてご参加いただける企業・団体にはテレワーク・デイズの期間に最低1週間、東京都内では2週間、100人以上にテレワークを実施していただきます。オリンピックは東京都だけの催しではなく、日本を世界にアピールする場です。「テレワーク・デイズ」も全国に参加を投げかけており、昨年も北は北海道から南は沖縄まで1,682団体、延べ30万人にご参加いただきましたが、今年は3,000団体、延べ60万人の参加を目標にしています。まだ、開催まで時間がありますので、ぜひ多くの企業に1回チャレンジをしてもらいたいと思います。「知っている」と「わかる」とは違います。まずは「とりあえず」やってみて「わかる」ことが大事で、そこからテレワークの良さや課題が見えてくるはずです。

「テレワーク・デイズ」のサイト
https://teleworkdays.jp/

筆者プロフィール:狐塚淳

 スマートワーク総研編集長。コンピュータ系出版社の雑誌・書籍編集長を経て、フリーランスに。インプレス等の雑誌記事を執筆しながら、キャリア系の週刊メールマガジン編集、外資ベンダーのプレスリリース作成、ホワイトペーパーやオウンドメディアなど幅広くICT系のコンテンツ作成に携わる。現在の中心テーマは、スマートワーク、AI、ロボティクス、IoT、クラウド、データセンターなど。

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