スマ研・ニュース解説 Vol.9

PREV
1
2
3
NEXT

【NewsPickUp-2】

産業医の約7割が、働き方改革による「長時間労働の改善を感じる」と回答

産業保健支援サービスを提供する「first call」が2019年6月に産業医500人を対象に行った、働き方改革による「長時間労働の改善を感じるか」についてのアンケート調査の結果、産業医の52%が「少し改善されていると感じる」、14%は「かなり改善されていると感じる」と回答した。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000196.000010134.html

【解説】

 長時間労働の是正は、働き方改革のなかでも最も早く取り組みが開始された。平成27年の「日本再興戦略」改訂2014で働き過ぎ防止のための取組強化が盛り込まれるなど行政側の要請も強く、また継続的に長時間労働を強いるようなブラックな企業体質では、少子高齢化による労働人口不足の中で労働力確保が難しいという危機感も加わり、長時間労働の是正は多くの企業・団体で進められてきた。

 しかし、中には残業禁止を決定しながら、終わらない仕事を持ち帰ることを黙認するなど、有効な取り組みになっていない例もあり、日本全体で考えた場合、どこまで効果が上がっているのかと尋ねられると首をひねってしまう。

 オンライン医療相談やオンライン産業医などの産業保健支援サービスを提供する「first call」が2019年6月に産業医500人を対象に行った、働き方改革による「長時間労働の改善を感じるか」についてのアンケート調査の結果は、そんな疑問に客観性のある状況の一端を見せてくれている。

 労働安全衛生規則は、常時50人以上の労働者を使用する事業場では産業医の選任を義務付けている。産業医の職務としては健康診断や面接指導などの対人実務のほかに、労働者の健康障害の原因調査と再発防止措置なども含まれる。このため、健康障害の原因として長時間労働が考えられるようなケースでは、産業医は確かな情報を把握していることになる。

 そうしたポジションにある産業医500人を対象に実施した、働き方改革による「長時間労働の改善を感じるか」についてのアンケートの結果、働き方改革による企業の「長時間労働の是正」に向けた取り組みの成果について、産業医の52%が「少し改善されていると感じる」と回答し、「かなり改善されていると感じる」(14%)と合わせて、約7割の産業医が「長時間労働の改善を感じる」と評価したことがわかった。

 この数字を十分と感じるか、不十分ととらえるかは難しいところだが、働き方改革における長時間労働の是正が進んでいるのは確かだと言える。

 また、同アンケートでは、長時間労働の改善が上手くいっている企業において、効果が出ているのはどんな施策かについても尋ねていて、解答として、「組織的な業務改善」「意識改革」「ノー残業デーなど、強制的な残業規制」「長時間労働者の管理・指導の徹底」などが挙げられた。個別の意見では、業務自体の見直しに加え、社の体制やルールの変更が効果的だとの、以下のような意見も挙がっている。

「管理者や上長の意識改革と人事評価の見方の是正」「法令順守の姿勢がある企業は上手くいっている。また、長時間労働になる前に、月の途中で人事が本人と上司に警告している会社は、時間を意識して働けていると思います」「勤務時間、休憩時間、休日取得の把握。長時間労働者には注意勧告する。産業医出席の安全衛生委員会で毎月議題として取り上げる」「長時間残業時の産業医面談での指導を徹底」

 これらの回答からは、それぞれの企業において、長時間労働是正のために意欲的な取り組みが真剣に工夫されていることがうかがわれた。

PREV
1
2
3
NEXT