もっと知りたい! Pickup スマートワーク用語 第2回 サブスクリプション
2019/11/07
ワーキング革命 - 第43回
中小企業の働き方改革は“人材不足”が大きな課題

中小企業の働き方改革をおせっかいする企業であるあしたのチームは、中小企業の経営者を対象に、働き方改革の実態に関するインターネット調査をこの春に実施した。その結果、働き方改革に取り組んでいる中小企業はまだ3割で、特に地方では人材不足を理由に働き方改革に取り組めていない実態が明らかになった。
文/田中亘
残業時間の削減が第1位
あしたのチームは、2019年2月19日から21日の3日間に、インターネットを使って全国の5名以上~300名未満の企業経営者に質問を実施した。対象は20~79歳の男女で、有効回答数は300だった。そのうち、東京都と大阪府に本社を置く経営者は150名で、それ以外の地方は150名だった。主な質問の内容は、「あなたの会社では、現在働き方改革に取り組んでいますか」というもの。この質問に対して、都市部では30.0%が、地方では33.3%が、「取り組んでいる」と回答した。また、「今後の検討」は、都市部が46.0%で、地方は43.3%となった。この結果から、働き方改革への経営者の意識については、都市部も地方も大きな差がないと分かった。
実際に「働き方改革として現在取り組んでいること」については、「残業時間の削減」が第1位で、都市部が88.9%、地方が74.0%の割合だった。第2位は「休暇取得の促進」で、以下は「労働時間の短縮」「働く環境・場所の改善、多様化」と続く。「IT導入による生産性向上」については、都市部で35.6%、地方で34.0%と低かった。こうした現状は、逆にIT商材やソリューションをまだまだ中小企業に売り込む機会が多いことを示唆している。
地方の人材不足を商機に変える
今回のインターネット調査を実施した背景について、あしたのチームは「導入企業の中で離職防止という視点で評価制度を検討される企業が増えてきた」ことを理由に挙げている。そして、地方の中小企業の経営者が切実に感じている「人材不足」については、「ITを活用すれば生産性が上がるので、生産性につながるITの利活用により、残業削減や労働力を質で確保して人手不足に備えられる」と指摘する。
実際に「働き方改革として現在は取り組んでいないが今後取り組みたいこと」という質問に対しては、都市部で26.7%が、地方で18.7%が「IT導入による生産性向上」と回答している。ここでも、都市部と地方で差が出ているが、その背景にあるのはIT人材不足ではないかと推測できる。
ITの利活用という提案は、多くの企業経営者が重要だと考えてはいても、働き方改革に結び付くITとなると、範囲が広くてどこから手を付けるべきか悩んでいるのではないだろうか。本連載でも、数多くのIT商材を働き方改革と合わせて提案してきたが、そのソリューションは多岐にわたり全体像を正確に把握するのは難しい。
一方で、個人や小規模事業者にとっては、スマートフォンとクラウドサービスだけでも、働き方を変革できる。もう少し規模の大きな事業者では、人材管理や人事評価などのシステムから、テレワークを促進するソリューションにつなげられるケースもある。さらに、SkypeやZoomのようなWebミーティングの導入をきっかけに、社内での労働時間を削減しつつ、営業やフィールドサービスの対応時間を増やして、売上増につなげた企業の例もある。こうした働き方改革につながるITのセンスを備えたIT人材が、最も求められているのだ。
ITの教育サービスもセットで提案
今回のあしたのチームのアンケートでは、地方の中小企業に特化した例として人材不足が注目されたが、この課題は企業の規模や本社の所在地に限らず、多くの経営者が共通して抱える働き方改革の難題だとも捉えられる。都市部に本社がある一部上場企業であっても、ITを活用して働き方改革を実現している例は少ないからだ。
大手企業というと優秀な人材が集まっているように感じられるが、誰もがITに精通しているわけではない。新しいITデバイスやクラウドサービスに対しては、誰もが素人なのだ。ただ、それでも大手企業が有利なのは、素人を育てる教育体制が充実している点にある。社内に適当な人材がいなければ、外部の取引業者などに依頼して、教育カリキュラムを実践する。そうして、多くの社員が同時並行的に使わなければ価値がない企業内SNS系サービスも使いこなせるようになる。
それに対して、中小企業では教育への投資が後手に回りがちになる。さらに地方となると、充実した教育人材も不足気味だ。その結果、社員でITを活用できる人材を育成できずに、働き方改革が頓挫してしまう。
こうした背景から、地方の中小企業に提案するITソリューションでは教育をセットにした働き方改革への貢献が求められている。テクノロジーを紹介するだけではなく、それを活用できる人材を育てるトータルなソリューションを提案することで、説得力のあるIT商材となるのだ。
例えば、数十名の中小企業で、数名の社員だけがLINEのようなSNSを活用したコミュニケーションを実践しているのであれば、無償のSNSを使うリスクを説明して、Microsoft Teamsのような企業向けのSNSを社員教育とセットで提案できる。また、バックオフィス系の事務部門であれば、テレワークの実践方法を教育することで、クラウド系のサービスへの切り替えをセールスできる。さらに、Office 365やG Suiteのようなクラウドサービスも、全社員が有効にモバイル活用できる導入教育を提案することで、働き方改革の有力な商材になる。
いずれにしても人材不足というのは、経営者が求める理想の社員が不在なのではなく育っていないだけなのだと捉えて、ITと教育の両輪で提案することがポイントとなる。
(PC-Webzine2019年10月号掲載記事)
筆者プロフィール:田中亘
東京生まれ。CM制作、PC販売、ソフト開発&サポートを経て独立。クラウドからスマートデバイス、ゲームからエンタープライズ系まで、広範囲に執筆。代表著書:『できる Windows 95』『できる Word』全シリーズ、『できる Word&Excel 2010』など。
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