ワーキング革命 - 第44回

テレワークの利用実態調査から分析するデバイス提案のビジネスチャンス


レノボ・ジャパンは、2019年の6月にインターネットで「テレワーク利用実態調査」を実施した。その結果から、いくつかの興味深いデータが得られた。注目すべきは、テレワークの利用頻度が高い企業ほど、勤務環境への満足度が高く、一方で自宅よりも職場の方が生産性が高い、という意見もあった。こうした調査結果は、新たなデバイス提案の機会にもつながりそうだ。

文/田中亘


この記事は、ICTサプライヤーのためのビジネスチャンス発見マガジン「月刊PC-Webzine」(毎月25日発売/価格480円)からの転載です。

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テレワークと勤務環境への満足度の関係

 5,922名を対象としたレノボ・ジャパンのインターネット調査によれば、テレワーク制度を導入していない企業が、勤務環境に対して28.7%の満足度しか得ていないのに対して、テレワーク制度を導入している企業では56.0%という高い満足度になっている。その差は約2倍で、テレワークによる柔軟性のある働き方が、勤務環境への満足度にいかに影響があるかを理解できる。

 この数字は、まだテレワークを導入していない企業に対して、重要な提案のポイントになる。勤務環境に対する満足度の差は、業務の生産性に影響を与えるだけではなく、従業員の定着度にも大きな差をもたらす。テレワークを積極的に推奨する企業は、従業員を大切にしている、という経営姿勢も示す。社員の裁量による柔軟な働き方を整備することは、多くの企業に求められている経営課題であり、その実践のためにITインフラやデバイスの整備も不可欠となる。それだけに、約2倍の差という数字は、テレワーク提案の大きなよりどころとなる。

 さらに、テレワークを肯定する数字としては、年代別に見る「テレワークの働きやすさ」が興味深い。この結果は、200名のテレワーク従事者に対して「出社して仕事をするときと比べて働きやすいか」を尋ねたもの。200名全体の平均が56.0%(あてはまる~あてはまらないの5段階評価で「あてはまる」「ややあてはまる」の合計値)であるのに対して、20代は72.0%が、30代は54.0%が、40代は44.0%が、そして50代は54.0%が、「働きやすい」と回答している。

 つまり、年代別に意識の違いがある。30代と50代は、ともにほぼ平均となる54.0%だが、40代が44.0%と低く、反対に20代が72.0%と高い。デジタルネイティブの世代は、テレワークを積極的に受け入れて活用していると思われる。それに対して、組織の中堅としてさまざまな業務に携わる40代は、テレワークだけで業務を完結するのが難しいのかも知れない。そうした背景を感じさせるアンケート結果が、「テレワーク制度を活用していない理由」の回答にある(対象はテレワーク制度を活用していない者)。アンケート対象の実に62.7%が「職場の方が生産性が高い」と回答し、60.8%が「職場の方が働きやすい」というのだ。

鍵はセキュリティ、データ共有、会議への参加

 テレワーク従事者に対して、「テレワークが利用しにくいと思う理由」(あてはまる~あてはまらないの5段階評価で「あてはまる」「ややあてはまる」の合計値)も聞いている。それによると、「セキュリティが心配」が42.0%、「資料などのデータの共有がしにくい」が41.5%、「職場で実施される会議に参加できない」が37.5%という結果になった。

 生活空間としての自宅と、働く場としての職場では、PCの利用環境を比べても違いがある。PCを操作しやすいデスクや大型モニターに、セキュアなネットワーク環境が整備された職場では、安心して作業ができる。それに対して、書斎のような部屋が用意できない自宅であれば、リビングやダイニングのテーブルでPCを使うことになる。そのPCもノート型では画面が小さい。

 つまり、いくら会社の制度としてテレワークを推奨しても、実際に自宅で快適にPCを使える環境が整わなければ、働く場所の柔軟性を発揮できないのだ。会議への参加となると、モバイルのミーティングシステムが必須になるが、その使い勝手なども利用を促進するか阻害するかの分かれ目となる。こうした課題を解決できるデバイスの提案が、新たなビジネスチャンスとなる。

スマートな会議システムやサブモニターを提案

 まずモバイルPCについては、レノボのThinkPad X1シリーズのようにハイスペックな1台が提案できる。キーボードがフルサイズで、画面も14インチのThinkPad X1シリーズは、いつでもどこでもオフィスでPCを使うような快適さで作業が捗る。フルHD以上の解像度で、Webブラウザーを開きながらワープロソフトを使ったり、表計算で大きなワークシートを一望したりする際など、作業の効率化に貢献する。加えて、タイピングが中心の作業であれば、ThinkPadシリーズの特長となるトラックポイントが活躍する。筆者もトラックポイントの愛好家なので、その生産性の高さは保証する。

 会議システムに関しては、「ThinkSmart Hub 500」のようにスマートなオンライン会議システムを提案できる。ThinkSmart Hub 500は、Microsoft TeamsやZoomに対応し、指でタップするだけで手早くオンライン会議を始められる。会議室に置いておくだけで、ITリテラシーがそれほど高くないユーザーでも迷うことなく操作できる。その手軽さと使いやすさで、オンライン会議を利用する回数を増やせる。

 モバイルワークのさらなる生産性を高めるデバイスとしては、「ThinkVision M14」という14インチのモバイルモニターも提案できる。給電と画面出力をUSB Type-Cで行うThinkVision M14は、ThinkPad X1シリーズとの相性がよく、並べて置くと高さのそろったマルチモニターを実現する。高さを調整する機能もあるので、X1シリーズ以外のモバイルPCともきれいに並べられる。

 テレワークは、働き方の柔軟性を実現する方法の中で、あくまでも一つの手段でしかない。それでも、これだけ多くのデバイスを提案できるチャンスはある。レノボでは、テレワークを含めた理想的な働き方のビジョンを持っている。そのトータルイメージを実現するためには、さらに整備されたIT環境とデバイスの提案が求められる。

(PC-Webzine2019年11月号掲載記事)

筆者プロフィール:田中亘

東京生まれ。CM制作、PC販売、ソフト開発&サポートを経て独立。クラウドからスマートデバイス、ゲームからエンタープライズ系まで、広範囲に執筆。代表著書:『できる Windows 95』『できる Word』全シリーズ、『できる Word&Excel 2010』など。

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