ワーキング革命 - 第45回

Webex特別プランで新たな商機を獲得


コラボレーションツールの提供などで柔軟な働き方をサポートするシスコシステムズは、来年に迫った東京オリンピック・パラリンピックに向けて、Webexの特別プランを開始している。首都圏を中心に働き方改革が進行する中、Webexの特別プランは新たな商機をもたらしそうだ。

文/田中亘


この記事は、ICTサプライヤーのためのビジネスチャンス発見マガジン「月刊PC-Webzine」(毎月25日発売/価格480円)からの転載です。

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実質85%オフで利用できる

 シスコシステムズのWebexは、画面の共有やホワイトボードの利用なども手軽に行える会議ソリューションであり、優れたコラボレーションツールでもある。外出先からスマートフォンなどでミーティングに参加できるなど、シームレスなデバイス活用も実現している。チームコラボレーションツールであるWebex Teamsでは、チャット感覚でメッセージのやり取りが行えるなど、場所にとらわれないコラボレーションを可能にする。

 大手企業を中心にWebexを全社的な規模で導入し活用している事例は多い。特に、働き方改革に関連した法案が施行された2019年4月からは、残業の抑制や通勤時間の軽減などを目的に、 Webexの導入が進んでいるという。2020年4月からは中小企業も働き方改革の関連法案の対象になる。しかし、人手不足や予算などの面から、まだ働き方改革に関連したソリューションを導入できていないケースは少なくないだろう。そんな課題にも応えてくれるのが、Webexの特別プランだ。

 Webex特別プランは、社員数40名以上の企業が一括して全社員分のアカウントを契約することで、実質85%の値引きで利用できる料金プランになる。適用期間は1年に限定されるが、1年後には契約を見直して、アカウントを実利用者分だけに減らすこともできる。

 シスコシステムズは今回の特別プランによって、これまでWebexの導入が広がらなかった中小企業にも、新しい柔軟な働き方を提供できると考えている。Webexを全社員で活用できる環境が整備されれば、これまで推進が難しかった柔軟な働き方の土壌が、中小企業でも構築できるようになる。東京オリンピック・パラリンピックの公式スポンサーとなっている同社にとって、 Webex特別プランの提供は、日本の働く人たちへの社会貢献にもつながる。

テレワーク=ホワイトカラーは間違い

 Webexに限らず、ITを活用したコラボレーションツールの導入と利活用には、全社規模が重要なポイントとなる。一部の役員や最前線の営業担当者だけがコラボレーションツールを使える環境を整えても、バックオフィスや社内の関連部署と連携できなければ、理想的な働き方改革の達成は難しい。どこで働いている社員であっても、いつでも柔軟にほかの社員と連携できるようになってこそ、コラボレーションツールの意義がある。

 働き方改革の代表的な事例となっているテレワークと聞くと、多くの人はホワイトカラーの生産性の向上や、ワークライフバランスの実現に寄与する便利な環境だと受け止めてしまいがちだ。しかし、Webexが提供するコラボレーション環境は、テレワークを超えた新たな働き方改革を可能にする。

 その一例が、オフィスとフィールドワークの連携にある。 Webexのユーザー企業の中には、メンテナンスなどの設備保守を請け負う企業もある。そうした企業の保守要員が、出先の施設でWebexを使って、社内に待機するベテラン技術者や関連部門のスタッフとリモートで連携して、効率よく的確な保守を実現しているのだ。

 実際に現場のスタッフがスマートフォンのカメラで保守対象の設備を映し、社内のエンジニアが問題の箇所を特定する。一度に複数の関係者が、離れた場所から同一の画像を共有することで、現場に的確な指示や判断を伝えられるようになった。テレワークがホワイトカラーのものだという先入観を覆し、ビデオ会議を活用した新たなコラボレーションを実現した事例と言える。

現場力を活性化させられる

 保守点検の事例だけに限らず、Webexによるリアルタイムの映像やメッセージを活用したコラボレーションには、大きなビジネスチャンスがある。例えば、魚の養殖業などでは海や湖など離れた場所で魚を生育している。こうしたビジネスでは、本社の担当者なども定期的に現地に出向いて生育状況を確認しなければならなかった。時間とコストをかけて本社から養殖場に移動していたのだ。こうした環境にWebexを導入すれば、現場の担当者に養殖場の様子をスマートフォンやタブレットで撮影してもらうだけで、本社で現場の様子を見ながらやり取りができるようになる。現地に赴くための時間やコストを削減できるだけではなく、定期的な観察が毎日でも可能になり、問題などをより早期に発見できるようになる。

 養殖業だけではなく、林業や農業、畜産業などでもWebexは活用できる。これまで、動画を撮影してPCに保存してインターネットで送る、といった手順が煩雑で、現場では対応できなかった経過観察などの業務が、Webexならばスマートフォンで手早く簡単に実現するのだ。

 このように現場力を活性化させられるWebexの利用においては、今回の特別プランのような全社員での契約がポイントとなる。人事や総務部が机上の想定だけで利用者を特定するのではなく、いったん全社員がWebexを使える環境を整備することで、これまで考えられなかった新しい活用方法が発見される可能性が高いのだ。

 実質85%の値引きで利用できるWebex特別プランは、導入のハードルがかなり低くなっている。東京オリンピック・パラリンピックに向けて多くの商機を生み出せそうだ。

(PC-Webzine2019年12月号掲載記事)

筆者プロフィール:田中亘

東京生まれ。CM制作、PC販売、ソフト開発&サポートを経て独立。クラウドからスマートデバイス、ゲームからエンタープライズ系まで、広範囲に執筆。代表著書:『できる Windows 95』『できる Word』全シリーズ、『できる Word&Excel 2010』など。

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