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2020/02/06

特集:ペーパーレス最前線 2020

法改正は十分。ペーパーレス推進に必要なのは企業の「決意」


“紙とハンコ”による契約・承認・情報共有という日本のビジネス慣行。税法や会社法で、紙は絶対に必要と思っていたが、規制緩和によってこうした状況はどんどん変化している…。公認会計士・税理士という資格を持ち、ペーパーレス化を実現するアプリケーション開発を行うペーパーロジック株式会社社長の横山公一氏にその状況を聞いた。

文/豊岡昭彦


日本の労働生産性はG7で最下位 その象徴は「紙とハンコ」のワークフロー

「実は、“ペーパーレス”という言葉は嫌いなんです」と、ペーパーレスについて取材しようとする我々をのっけから煙に巻くのは、ペーパーロジック株式会社代表取締役社長兼CEOの横山公一氏だ。

電子稟議(ワークフロー)や電子契約、電子書庫などのペーパーレスを推進するクラウドサービスを開発・販売するペーパーロジックの横山氏がこのようなことを言う意図は、「ペーパーレスというと、紙をPDFにすればいいのでは」と思っている人があまりにも多いからだ。

横山氏の言葉の意図は、今求められているペーパーレスの目的が単に紙をデジタルに置き換えることではなく、 “仕事の効率化”にこそあるからだ。

公認会計士・税理士でもある横山氏は、以前自らが創業した会計事務所で、1500件以上のプロジェクトを抱え、数千個のハンコを管理、膨大な量の紙の書類を前にして、こんなことは無駄だと実感したという。契約書にハンコを押し、それをスキャンしてクライアントに送付したあとに、原本をバイク便で送る。しかも、1つの紙の契約書が1mの高さに及んだものもあった。

ペーパーロジック株式会社代表取締役社長兼CEO 横山公一氏

ストラクチャードファイナンス(証券化の仕組みを利用して資産のオフバランスや資金調達を行う手法)に特化した会計事務所という、当時最先端の会計事務所でありながら、やっていることは実に前時代的、ローテクだということに横山氏は愕然とした。

ペーパーレスの必要性について、横山氏は次のように語る。

「世界の企業時価総額のランキングで、平成元年(1989年)には上位50社に日本企業は32社が入っていましたが、30年経った平成30年(2019年)には1社だけ、トヨタしか入っていませんでした。その理由の最たるものは、日本のビジネスの効率が悪いことです。日本の労働生産性は、経済協力開発機構(OECD)加盟36カ国中で21番目(2018年)で、先進7カ国(G7)の中で最下位です(日本生産性本部調べ)」

日本の労働生産性の低さを象徴するのが、紙とハンコによる承認システムだと横山氏は指摘する。

「例えば稟議書を例に取ると、担当者からその上司、その上司と順にハンコを押すことになっていて、私が見た最多の稟議書は32個もハンコが押されていました。よくよく考えれば、これは紙ベースのワークフローなわけです。その32人に知っておいて欲しい情報を共有するためにハンコによる承認システムがあるわけです」

この場合、ITを使えば、アクセス制限をかけた稟議書をその32人がチェックすれば、確認と情報共有の作業は数分で終わる。もちろんこの場合、32人もの承認が必要なことにも大きな問題があるわけだが、このワークフローをデジタルに置き換えることが、非効率な業務フローそのものを見直すチャンスにもなるのだ。ペーパーレスを進めることは、紙をPDFに置き換えることではなく、業務自体を見直し、労働生産性を上げること、それによって企業の競争力を高めることにこそある、と横山氏は言う。

さらに、ペーパーレスには意思決定の迅速化など、ビジネスの効率化、生産性の向上に加え、コストの削減でも大きな効果があると横山氏は言う。

「電子契約を導入することで収入印紙の添付が必要なくなるので、印紙税が数千万単位で節約できる企業もあります。さらに、紙代や印刷代、郵送費も節約になり、そのほか紙を保管管理するファイリングコストや倉庫代も節約になるでしょう」

ペーパーレス化することで、企業にとってのメリットは非常に大きいように思えるし、世界中の企業が積極的にITを業務に取り入れ、デジタル化(ペーパーレス化)を進めている中で、日本でのペーパーレス化はほとんど進んでいないのが現状だ。

規制緩和や法整備はすでにできている 日本人の変えたくない気持ちが邪魔に

これだけメリットがあるペーパーレスがなぜ日本では進んでいないのか。

横山氏は、日本では20年ほど前から、順次デジタル化を推進するための規制緩和や法改正が行われてきたという。その主なものは次のようなものだ。

1998年 「電子帳簿保存法」制定

2001年 「電子署名法」制定

2005年 「e-文書法、電子帳簿保存法、スキャナ保存制度」制定

2016年 「官民データ活用推進基本法」成立

2016年  スキャナ保存制度で「金額基準撤廃、電子署名不要」など大幅規制緩和

2017年  スキャナ保存制度で「スマートフォンやデジカメによる記録運用」が可能に

2017年  不動産分野でIT重説※解禁

2019年 「労働条件通知書のデジタル化」が可能に

2019年  電子帳簿保存法で「重要な国税関係書類を過去に遡って電子化」可能に

※IT重説 テレビ会議などを利用して行う、賃貸借契約の重要事項説明

「日本にはビジネス文書等を紙で保存することを義務付けた法律が約300ありますが、こうした法改正や規制緩和策によって、経理・総務・法務などの業務で使用されるビジネス文書の9割以上、ほぼすべての文書は、デジタル化(ペーパーレス化)できるようになったといっていい」と横山氏は言う。

日本政府はデジタル化を推進したいと着々と法改正に動いているのに、規制緩和が始まって20年経っても民間が動いていないというのが実体なのだ。まさに“笛吹けど踊らず”という状態。その理由について、横山氏は「日本人の変えたくない、変わりたくない気持ち」が邪魔をしていると語る。

横山氏は公認会計士としての豊富な経験を元に、ペーパーレス化を推進するクラウド型サービスを開発している

「企業トップにペーパーレス化のメリットを話して、それはいいですね、やってみましょうとなっても、経理や総務の現場は変化を求めていません。彼らは、うちの会計士が、うちの監査法人が、担当の税務署が…と理由をいろいろとつけ、さらにシニア世代はデジタルやITへの不安や猜疑心があるため、デジタル化に難色を示してきました」

こうした不安や問題は1つひとつ解消されており、セキュリティについてもブロックチェーンなどの技術革新により紙以上の安全性が担保できるようになっている。にもかかわらず、ペーパーレス化が進まないのは、日本人特有の「他社がやっていないから、うちもまだいい」という企業文化が邪魔をしてきたのだ。結果として、日本の労働生産性はG7最低レベルとなり、世界に遅れを取るようになってしまった。

一方、他社がやり始めるとウチもというのも日本企業の特徴。

「この数カ月くらいでしょうか、民間企業も働き方改革で仕事を効率化するには今までどおりではダメだと気がついたのか、監査法人が人手不足で監査ができない状況があるからなのか、どの企業もペーパーレス化に乗りだそうという機運が盛り上がっているのを感じます。弊社にも問い合わせが増えてきました」

ソリューションは整いつつある あと必要なのは“決意”

これまでペーパーレス化に一番の障害と考えられていた日本の法律がここまでペーパーレスに対応しているとなると、あとはそれに対応するソリューションがあるのかということだ。

ペーパーレスをうたった多くのソリューションは、それぞれの企業の業務に対応し、会社法や税法など、ざまざまな法律にも対応できるのだろうか。

「すべてに対応できるソリューションはまだまだ少ない」と横山氏はいう。 「ITの専門家が会社法、税法、商法、その他の法規制のすべてを把握することは難しいため、詳細に見ていくと、対応できていないということがあります。弊社のソリューションは弊社のソリューションは関連する法律法令へ全方位的に対応できる数少ないものの1つで、一般事業の会社であればほとんど対応できる」と語る。

横山氏が社長を務めるペーパーロジックは、もともと横山氏が創業した会計事務所の関連会社として、会計事務所向けに、M&A案件を処理するために複数者間の書類・情報の共有を行うクラウドアプリケーションを開発していた企業が前身。現在は、電子稟議(ワークフロー)を行うための「paperlogic電子稟議」、電子契約を行うための「paperlogic電子契約」、クラウド型ストレージの「paperlogic電子書庫」の3つのソリューションを組み合わせることで企業の実情に応じたペーパーレス化を進めることができるようになっている。 。

ペーパーロジックの3本柱の「電子稟議」、「電子契約」、「電子書庫」によって、経理・総務・法務などの業務で使用されるビジネス文書の9割以上をデジタル化(ペーパーレス)することができる

会計士、弁護士など仕業によって開発されたソリューションであるため、法規制への対応は万全と自信を見せる。

では、どのような企業がこうしたソリューションの導入に取り組むべきなのだろうか。

「従業員数が少ない企業の場合には、まだ紙ベースでやったほうが簡単ということもあるかもしれませんね。おおよそ従業員数50人以上の企業であればメリットがあると思います。また、従業員数が少なくとも契約件数の多い不動産業などの会社では、ペーパーレスにするメリットは大きいと思います」

また、数万人規模の大企業で、自社のワークフローに最適のソリューションをオリジナルで開発したいという企業に対しては、「何か新しいソリューションを追加したいというときに、また一から開発コストをかけてオリジナルを開発するメリットがあるでしょうか。むしろ、クラウドサービスのソリューションを使うことで、自社のワークフローを見直してみることのほうがメリットが大きいのでは」とアドバイスする。

さらに、クラウドサービスなら、いくつかの部門で部分的に導入して、試してみることも可能だ。

「ペーパーレス化はこれから一気に進むと思います。他社に差を付けるなら、いまがそのチャンス。“あと必要なのは決意だけ”と言ってもいいかもしれませんね」

くり返すが、ペーパーレス(業務のデジタル化)の最大の目的は、業務やワークフローを見直し、事務作業を効率化、労働生産性をアップし、それによって企業の競争力を高めていくことにある。ITの普及から20年以上が経過し、手つかず状態の日本企業は、もう「待ったなし」であることを認識したほうがいい。

筆者プロフィール:豊岡昭彦

フリーランスのエディター&ライター。大学卒業後、文具メーカーで商品開発を担当。その後、出版社勤務を経て、フリーランスに。ITやデジタル関係の記事のほか、ビジネス系の雑誌などで企業取材、インタビュー取材などを行っている。

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