顧客満足度の高いサポートを提供するデルの宮崎カスタマーセンターの秘密


一人のエンジニアが責任をもって最後までサポート

クライアントからサーバー・ストレージ環境まで、さまざまな企業を支えるデルは、1989年に日本法人を設立。以来、約30年日本市場に深く浸透しています。近年はサポート体制の充実に力を入れており、日本人の日本人による日本人のためのサポート体制を敷いています。その拠点となるのが宮崎カスタマーセンター。顧客満足度の高いサポートを生み出す原動力について取材しました。

文・撮影/飯島範久


サポートと業務はすべて正社員が従事

デルの日本法人は神奈川県川崎市に本社を構え、全国に営業拠点がありますが、テクニカルサポートを行っているのは、川崎と新宿そして宮崎の3拠点です。新宿ではEMCのストレージ製品を、川崎では、よりハイエンドなエンタープライズ製品やソフトウェア製品をサポートしています。

宮崎にカスタマーセンターができたのが2005年の12月。それまで中国の大連でのサポートが中心だったものを方針転換。現在も一部個人向けのベーシックサポートは大連で行っているものの、そのほかに関しては国内でサポート体制を敷くべく、宮崎の地を選んで設立しています。

なぜ宮崎県を選んだのでしょうか。その理由の1つとして宮崎の県民性が挙げられます。サポート業務を行うには、ホスピタリティ溢れる人材が必要ということで、当時「親孝行ランキング」で1位を獲得した宮崎県に注目。自治体の協力もあり、デパートだった建物をオフィス用に改装するため、改装中は県の準備室を借りながらスタートしました。当時若手だった社員もいまやベテランとなり、このサポートセンターを支えています。

市街地中心にあり駅から徒歩10分と近い。繁華街も5分ほどにあり、通勤の利便性とともに、社員のアフター5の楽しみにも貢献する立地。空港からのアクセスがいいのもポイント。

2018年にセンター長に就任した石口靖信さんは、「就任した年と比べ、サポート部門のスコアが向上しており、日経の顧客満足度調査で2年連続1位を獲得しました。サポートに携わるメンバーとしても大変名誉のある賞だと考えています」と語りました。

表彰された楯がオフィスに並んでいる

約8年前に宮崎カスタマーセンターへ赴任し、2年前にセンター長となった石口靖信さん。

デルは、この宮崎の地にサポートの拠点を開設するにあたり、サポートするエンジニアはすべて正社員として雇用しているのが最大の特徴です。現在は、480名の正社員がこのオフィスで業務を行っており、個人向けと法人向けのサポート、そしてスモールビジネス系やパートナー営業、保守延長の契約などを行う営業の内勤業務の部門があります。

テクニカルサポート部門にはそのうち350人が在籍。個人向けのプレミアムサポートのほか、法人向けのクライアントとサーバー・ストレージ製品に関してもこの宮崎でサポートを行っています。

「採用にするにあたり、新入社員や中途入社でもITのスキルよりはお客様のサポートをするスキルを持っている人を選んでいます。そして、スキルアップを行うために、パソコンの基礎から6週間かけてトレーニングを行い、技術的なスキルをきちんと身につけつつ、段階的にステップアップしていくようにしています」と石口さん。

4半期に1度全社員ミーティングを宮崎で開催。社長を中心に各部門のリーダーが業績や取り組み、新製品情報などを全社員にメッセージとして伝えています。デルで働いているという喜びを感じる各種イベントを開催し、働く意欲の持続につなげています。

取材した日は、パソコン組み立て教室を開催。インターンの学生を交えて、取り組んでいる。ほかにも、ハロウィンなどのアクティビティや社会奉仕活動などにも積極的に参加している。

また、人事から言われて異動するのではなく、キャリアアップ形成の1つとして、新しい部門にチャレンジするという取り組みを行っており、各部門のマネージャーは社員一人ひとりのキャリアアップをしっかりサポートし、宮崎だけでなく、川崎や新宿へ異動も可能で、モチベーションのアップにもつながります。

各種資格の取得もサポート。壁には取得した資格と顔写真がズラリと並ぶ。

顧客による満足度の調査を実施し、満足度90%以上を目標

サポートの品質は顧客満足度を重視しており、一人ひとりのエンジニアが行った調査、お客様対応を行ったあとに、メールによる満足度調査を行っています。サーバー・ストレージに関しては、電話による第三者機関のアンケートを行っており、0から10までの11段階で評価。7以上が満足評価で、顧客満足度90%以上をそれぞれの社員が目標にしています。

「社員一人ひとりの目標が、チーム全体、部門全体、そして日本全体となり、グローバルでも同様のターゲットになっています」(石口さん)。

6以下は満足ではないという評価は、日本では実に厳しい設定です。日本人は「良くも悪くもない」という評価をする傾向にあり、7以上の評価を得るためにはかなりの努力が必要ではないでしょうか。

デルのサポートは、オペレーターはすべてエンジニアであるため、問い合わせを受けてから次へ回すのではなく、問題解決まで一人のエンジニアが対応します。ただし、24時間稼働しているため、同じエンジニアが受けられないケースも出てきます。その場合は、顧客管理ツールを活用して、ほかのエンジニアでも対応できるような仕組みになっています。オーナーのエンジニアは出社したら、対応を確認して最終的にフォローアップし顧客へ連絡。問題を解決しています。

コールを監視する仕組みとしてディスプレイを設置。エンジニアがいち早くお客様の待ち状況を確認でき、電話を待たせないため、パソコンやサーバー・ストレージ製品に対するサポートの待ち状況、サービス状況を表示。

マネージャーの席にもひと目で分かるように状況が逐次表示されている。

こうした体制が、顧客の満足度を高めている1つの要因でしょう。

「コールセンターとしては、AHT(Average Handling Time:顧客からの問い合わせを処理する時間の平均)を含めて、いくつものKPIを使いながら生産性を高めています。当然、生産性を高めるだけでなく、効果的にできているのか測るために、1回の修理で解決したのか、1回の電話で顧客が理解できたのかなども調査し、バランスを取りながら社員一人ひとりのパフォーマンスを測って、スキルを高めていっています」(石口さん)。

この日は週末のため、サポート人員は少なかったが、フロアはかなり広く一人ひとりパーティションで区切られたスペースで作業していた。

エンジニアの出張修理・パーツの配送については、パートナー企業に任せていますが、プロセスに関しては、川崎にあるグローバルコマンドセンター部門で監視をしており、きちんと滞りなく遂行されているか確認しています。さらに、災害時は支援体制を備え、リスクや問題、作業などの遅延を予測し、情報を収集して共有を行っています。

「より複雑で解決できない問題のうち、技術的な問題はレベル2エンジニアとコミュニケーションしながら対応します。また技術的な問題以外は、チームリーダーと相談しながら対応していきます。さらに業務停止を伴うような問題が起きた場合は、レゾリューションマネージャーへつなぎ、単一の窓口として復旧までお客様と直接コミュニケーションをとりながら対応にあたります」(石口さん)。

ほかにも、プロサポートプラスという上位のサポートでは、テクノロジーサービスマネージャーが、お客様専任の窓口としてアサインされます。運用から月次の障害の状況の把握、クリティカルなファームウェアやドライバーがリリースされたら、お客さまのシステムに合わせて適切に案内するなど、お客様とサポートとの間を結ぶ重要な担当として活動しています。

デルのサポートサービス概要

ツイッターサポートでは、製品などのキーワードを検索して、困った状況のツイートを確認すると、DMを送り反応があればサポートへつなげるようにしている。そのほか、LINEによるサポートも開始した。

また、ダウンタイムを減らす取り組みとして、無償でツールを提供しています。これまでは、障害の発生を確認してから連絡がきて、いくつかの手続きを経てトラブルシューティングまで行う必要がありました。「Support Assist」というツールを導入すれば、自動的に受付してログを解析し、デルの方からコールバックをするという体制ができるため、時間短縮しつつ、シンプルなトラブルシューティングができるようになっています。

オフィスツアーを実施してデルのサポート体制の認知をアップ

パソコン教室に訪れた親子を案内する石口さん

こうした努力により、冒頭で紹介した顧客満足度調査で1位を獲得したほか、3年前からICTの業界団体が宮崎でコールセンターコンテストを開催しており、コールコンテスト部門と企業アピールの2部門で優勝。2019年2月に開催された第2回でも優勝し、2冠を達成しています。

宮崎で行われたコールセンターコンテストでのトロフィー(右)。

また、オフィスツアーを開催してデルのサポート体制を見学してもらっています。「2018年は、200社以上のお客様が来社。2019年上半期も、同程度のお客様が見学に来ています。法人だけでなく、学生も来て頂いており、社内の作業風景やサポートの状況など、宮崎のサポート拠点としてお伝えする機会が増えてきています。また正社員がサポートすることに多くのお客様が価値を求めていただけていることが、ツアーを実施して感じているところではあるので、このカスタマーセンターをしっかり維持していくことが重要な役割だと思っています」と石口さんは語りました。