今読むべき本はコレだ! おすすめビジネスブックレビュー - 第18回

“超簡単&時短”で出来る、思い通りに相手を動かす資料作成法


『科学的に正しいずるい資料作成術』越川慎司 著

資料作成の目的は「伝えること」ではなく「思い通りに相手を動かすこと」――。資料づくりは膨大な時間を費やす割に、必ずしも結果に結びつくとは限らない。まさに業務の鬼門だ。そこで頼りたいのが今回紹介する一冊。ほかならぬ元PowerPoint事業責任者が、5万枚以上の資料を分析し、科学的に正しい資料づくりを教えてくれる。

文/成田全


資料作成の目的は「伝えること」ではない

 デスクワークで多くの時間を費やす、得意先への提案書やプレゼン用の資料、会議で配布するレジュメ、新規事業のための企画書等の作成に、あなたはどのくらいの時間をかけ、どこにポイントを置いて取り組んでいるだろうか? じっくり時間をかけ、自分なりに納得できる内容の詰まったものができたと思ったにも関わらず、上司から何度も突き返されたり、企画コンペで採用されなかったり、なかなか提案が通らないといった経験や、働き方改革の推進で残業ができなくなり、作成する時間が足りないと感じている人もいることだろう。

 伝えたい情報をすべて詰め込み、デザイン性に優れた配置を考え、赤字や下線、矢印で強調、カラフルなグラフや図形を作成し、アイコンなどもたくさん盛り込んだ資料を作成するため、作業に長い時間をかける――もしあなたがこの内のひとつでもやっているとしたら、考え方を改める必要がありそうだ。そのために有用なのが、元マイクロソフト業務執行役員、PowerPoint事業責任者であった越川慎司氏の『科学的に正しいずるい資料作成術』だ。

 越川氏は本書で「一発OKを引き出せる」「相手を動かす」ための資料を、誰でも簡単に作れるようになるメソッドを惜しげもなく公開している。そして「資料を作成することは『目的』ではなく『手段』のはずです」と「はじめに」で指摘、目的を決めずに資料を作成してしまうことはありませんか、と問いかけ、さらに資料作成の目的は「伝えること」ではなく「思い通りに相手を動かすことなのです」と喝破している。

資料5万1544枚収集、826人に聞き取り分析、さらに実証実験も

 企業のコンサルタント業務を行っている越川氏は、様々な企業から商談やプレゼンが上手くいったものだけではなく、上手くいかなかったものも含め5万1544枚ものPowerPointの資料を収集してAIサービスで分析、さらに526社14業種、13部署の826人の意思決定者(資料の良し悪しを決定する経営者~課長クラス)にヒアリングし、成功のパターンをはじき出したそうだ。

 そしてそのノウハウが正しいのかどうか、越川氏のクライアント企業の4513人が2ヶ月にわたって実証実験を行ったという。その結果、この資料作成術でなんと94%の人が成果を残し、商談成約率が平均22%アップ(37%→59%)した一方、資料作成時間はそれまでより平均20%も減ったそうだ。

 こうしたエビデンスに基づいた、文字通り「科学的に正しい」資料作成術に「ずるい」という言葉がタイトルに入っている意図について、越川氏は「このメソッドを使うことで圧倒的に資料作成の時間を減らすことができ、成果が出やすくなるからです。これは何も知らない人からすると、思わず『ずるい』と言いたくなるほどのものでしょう」と説明している。短い作成時間で効果的、かつ成果率の高い資料が出来上がる……そんなうまい話があるのだ。

「働き方改革」ではなく「儲け方改革」を目指せ

 本書は初めに「1万人が動いた!これが最速で一発OKを引き出すパワポ資料だ!」と題し、本書の最重要事項である6つのルールがサンプルの資料とともにカラーで掲載されている。ここは本編を読み進めながら、文字とビジュアルを照合することで情報整理に役立つので、まずは読み飛ばして構わない(6つのルールは本書でぜひ確認していただきたい)。

 序章ではAIを使って導き出した「わかりにくい資料は10秒ではじかれる」「役職ごとに重視するポイントが異なる」「数字と少ない色数がインパクトを与える」という3つの勝ちパターンを提示。手段と目的を履き違え、残業してまでしこしこと作業していた人にとっては、痛いところばかり指摘されるパートだ。

 そして第1章では、資料で使用するフォントや色、見せ方など、漫然と資料作成してきた人の目からウロコが落ちる14の「ずる技」があり、第2章では資料で欠かせない画像、動画、グラフを上手く活用するための11のポイントが事細かに説明される。続く第3章では資料作成前の準備の心がけが11種まとめられ、第4章では多くの人が苦手意識を持つプレゼンでのテクニックが8つ紹介されている。最後の第5章では、年80時間を短縮するための時短術が9つ提示されており、全編を通じて誰でも今すぐ簡単に始められる内容となっている。

 越川氏は「おわりに」で、自身は働き方改革という言葉があまり好きではなく、現状は「働かせ方改革」となっていると指摘、本来目指すべきは「儲け方改革」、つまり「スマートな仕事の進め方で時短→会社の売上アップ+個人の収入アップ」をせよと発破をかけている。科学的に正しい、ずるい資料作成術で損をする人は誰もいないどころか、皆が得をする。今すぐ始めない手はない。

まだまだあります! 今月おすすめのビジネスブック

次のビジネスモデル、スマートな働き方、まだ見ぬ最新技術、etc... 今月ぜひとも押さえておきたい「おすすめビジネスブック」をスマートワーク総研がピックアップ!

『デジタルマーケティング2.0 AI×5G時代の新・顧客戦略』(安岡寛道、稲垣仁美、木ノ下健、松村直樹、本村陽一 著/日経BP)

AI×5G時代の新しい顧客戦略モデルを全図解。「15のキーワード(7つの主要コンセプトと8つの補完コンセプト)」と「50のソリューション(業種別・機能別)」で次世代モデルを提示。「7つの主要コンセプト……リアルタイムマッチング、コラボレーション/シェアリング、IoT/セルフ化による自動化、パーソナライズ/カスタマイゼーション、ダイナミックな需要予測/プライシング、MR化/ライブ化、OMOのレコメンデーション」「8つの補完コンセプト……XaaS、X-Tech、スコアリング/信用価値算定、アバター/エージェント化、マルチデバイス化、シームレス決済、スマートミラー活用、スマートシティ化」(Amazon内容紹介より)

『不平等と再分配の経済学――格差縮小に向けた財政政策』(トマ・ピケティ 著、尾上修悟 訳/明石書店)

大著『21世紀の資本』で世界的なブームを巻き起こしたピケティが、不平等に関する経済理論の骨格を簡潔にまとめた書。経済的不平等の原因を資本と労働の関係から理論的に分析するとともに、その解消のために最も重要な方法として、租税と資金移転による財政的再分配の役割を説く。『21世紀の資本』では論じられていない人的資本や教育の問題も分析しており、併せて読まれるべき書である。大学生や専門家を中心ターゲットとした教養新書・Reperesシリーズの一冊として刊行され、この20余年のうちに版を重ねている。(Amazon内容紹介より)

『言葉ダイエット メール、企画書、就職活動が変わる最強の文章術』(橋口幸生 著/宣伝会議)

 なぜあなたの文章は読みづらいのか理由は、ただひとつ。「書きすぎ」です。伝えたい内容をあれもこれも詰め込むことにより、言葉に贅肉がつきパフォーマンスが悪化。その結果、読みにくくなってしまうのです。なので、解決方法もただひとつ。ムダな要素を削ぎ落とすこと。つまり「言葉のダイエット」です。(Amazon内容紹介より)

『事業計画に落とせるビジネスモデルキャンバスの書き方』(西田泰典 著/クロスメディア・パブリッシング)

「ビジネスモデル・キャンバス」とは、『ビジネスモデル・ジェネレーション』(翔泳社)でアレックス・オスターワルダーとイヴ・ピニュールが提唱したビジネスモデルを検討するためのツールで、9つの要素を埋めることで1枚の紙にビジネスモデルを図示するフレームワークです。本書では、「ビジネスモデル・キャンバス」を活用してビジネスモデルを考える方法、そして、生み出したビジネスモデルをどう事業計画書に落とし込むかを解説しています。新規事業の企画がなかなか通らない新規事業担当者や、事業資金獲得をしたい起業家のみなさんに、ぜひ読んでいただけたらと思います。(Amazon内容紹介より)

『“シェアリング"のオフィス戦略――ビジネス・経営・働き方を変える』(大西紀男 著/日本経済新聞出版社)

近年、シェアリングエコノミーの高まりを背景として、日本国内でも「シェアオフィス」を筆頭に「コワーキングオフィス」「サービスオフィス」など、様々な形態のオフィスが登場しています。本書は、長年オフィスビル開発やオフィス賃貸業を営む著者が、これらの新しい形態を「スモールオフィス」を総称し、各々の機能の違いや、使用例を解説。また一般の賃貸オフィスと比較しながら、コストや活用にあたってのメリット・デメリットを詳説。著者独自の調査による豊富な使用事例も紹介しています。(Amazon内容紹介より)

筆者プロフィール:成田全(ナリタタモツ)

1971年生まれ。大学卒業後、イベント制作、雑誌編集、漫画編集を経てフリー。インタビューや書評を中心に執筆。幅広いジャンルを横断した情報と知識を活かし、これまでに作家や芸能人、会社トップから一般人まで延べ1600人以上を取材。『誰かが私をきらいでも』(及川眠子/KKベストセラーズ)など書籍編集も担当。