ワークスタイル変革を実現するインテルの最新テクノロジー



インテルが目指すワークスタイル変革・後編

前編では小澤剛氏にインタビューしワークスタイル変革の重要性について語っていただいたが、後編では、その中に登場した「Intel Authenticate」や「Intel UNITE」といった、ワークスタイルの変革を実現するインテルの最新テクノロジーについて解説する。

文/石井英男


「場所に捉われない働き方」を実現するソリューション

 ワークスタイル変革の重要性について語っていただいたインテルの小澤剛氏のインタビュー記事の中で、同氏が挙げた、ワークスタイル変革に重要な3つの要素が「場所に捉われない働き方」「より強固なセキュリティ」「コラボレーションの促進」である。インテルは、そのそれぞれの要素を実現するためのテクノロジーを開発・提供することで、ワークスタイルの変革を推進している。ここでは、そうしたテクノロジーを解説する。

 場所に捉われない働き方を実現するためのテクノロジーとしては、「2in1 PC」と「インテルワイヤレス・ドッキング」が挙げられる。2in1 PCとはその名の通り、一台でノートPCとタブレットの二役を果たすPCであり、シチュエーションに応じて最適なスタイルで使い分けることができるので、特にモバイルワーカーには最適である。

一台でノートPCとしてもタブレットとしても利用できる2in1 PCは、モバイルワーカーに最適である。

 当初の2in1 PCは、タブレットとして利用するにはやや重量的に厳しいものもあったが、2in1 PC向けの低消費電力CPU「Core M」の登場により、片手で持って使うタブレットとしても、十分実用的に使えるようになった。

 インテルワイヤレス・ドッキングは、2016年に登場した新しいソリューションであり、いわゆるドッキング・ステーションとの接続をワイヤレスで行うというものだ。ワイヤレス接続には、通常の無線LANで使われる2.4GHz帯/5GHz帯ではなく、60GHz帯が使われている。60GHz帯を利用した無線LAN規格は、IEEE 802.11adという名称で規格化されており、WiGigとも呼ばれる。

インテルワイヤレス・ドッキングに対応した2in1 PC。

 インテルワイヤレス・ドッキングでは、最大4つのチャネルを利用することで、7Gbpsという超高速スループットを実現しており、HDMIやDisplayPort、USB 3.0などのインターフェースをまとめて転送することが可能だ。遅延もほとんどなく、動画なども問題なく再生される。

こちらが、インテルワイヤレス・ドッキング対応のドッキングステーション。

 ワイヤレス・ドッキングに対応したPC本体をドッキングステーションに近づけるだけで、自動的にドッキング処理が開始されるので、非常に便利だ。営業などに出かける際も、そのままPC本体を持っていけば、自動的に切断処理が行われる。インテルワイヤレス・ドッキングに対応したPCはまだ少ないが、ビジネス向けモデルを中心に、今後の普及が期待される。

インテルワイヤレス・ドッキングでは、動画も遅延なく再生される(奥のディスプレイが、ワイヤレス・ドッキング経由で表示されている)。

「より強固なセキュリティ」を実現する「Intel Authenticate」

 場所に捉われない働き方の一つであるモバイルワークの実現には、セキュリティの強化が不可欠である。フィッシングなどのID攻撃からPCを守るのに非常に有効な手段として、インテルが開発した技術が「Intel Authenticate」である。

 Intel Anthenticateは、業界初のハードウェア支援型多要素認証ソリューションであり、従来のIDとパスワードによる1要素認証の代わりに、PINやデバイス近接性、論理的位置情報、生体情報といった複数の要素を併用して認証を行うものだ。

 認証をクリアするには、複数の要素を同時に満たす必要があるため、IDとパスワードのようにフィッシングメールやフィッシングサイトで抜かれてしまう心配がなく、非常に強固なセキュリティを実現できるのが特徴だ。

 どの認証要素を組み合わせて利用するかは、IT管理者が選択可能であり、ユーザーの利便性も高い。例えばデバイス近接性と生体認証を併用する場合なら、スマートフォンをノートPCに近づけ(事前に登録したデバイスとBluetoothのペアリングが行われることでデバイス近接性をクリア)、指紋センサーに指を載せるだけで(指紋情報で生体情報をクリア)、認証が完了する。

Intel Authenticateでは、複数要素での認証が可能である。この例では、スマートフォンの近接性と指紋認証の2つの要素を利用して認証を行っている。

 Intel Authenticateでは、PINや生体情報などがチップセットの中に保存されるため、OSから直接アクセスすることができず、外部からの攻撃で認証情報が抜かれることはまずあり得ない。また、ユーザーにとっては事実上、指紋認証のみでログインできるので負担にはならず、企業側にとっても複数要素認証で、従来のIDとパスワードによる管理よりもセキュリティ度は高まる。双方にとってメリットがあるソリューションなのである。

 Intel Authenticateは、現在早期トライアルが行われており、いくつかの会社で導入試験中だが、2016年後半にも正式版が公開され、第6世代インテルCore vProプロセッサー以降のプラットフォームで利用可能になる予定だ。

「コラボレーションの促進」を実現する「Intel UNITE」

 3つめの要素であるコラボレーションの促進を実現するソリューションが「Intel UNITE」である。Intel UNITEは、会議のあり方を変える、セキュアで簡単なコラボレーションツールであり、ハブの役割を果たすPCに、ほかのクライアントPCが無線LAN経由で接続することで、各クライアントPCの画面をハブに接続したプロジェクターや大型ディスプレイに表示できるというものだ。

Intel UNITEのハブとなる超小型PC「NUC」。このハブに他のPCが無線LAN経由で繋がり、それぞれの画面を表示できる。

 Intel UNITEの利点はいくつかあるが、まず挙げられるのが、会議における無駄をなくすことだ。プロジェクターが設置されている会議室に各自が持ち寄ったPCを接続して資料を表示させながら会議をするというのが、一般的な会議の風景だが、PCとプロジェクターをPCでつなぐのに手間取ることも多い。

Intel UNITEの起動画面。中央と右上にPINが表示されている。PINは一定時間で変更される。

クライアントPC側の画面。ここにPINを入力することで、接続が行われる。

 プロジェクターに接続されているケーブルの端子はアナログRGBやDVIが多いが、PC側にその端子がなく接続できないとか、ケーブルが内部で断線していて画面の色がおかしくなるといったこともありがちだ。こうしたトラブルによって、インテル社では一つの会議あたり平均8分の時間の無駄が生じていたという。

 Intel UNITEを導入した会議室なら、無線LAN経由で接続するだけで画面を出力できるので、ケーブル関連のトラブルとは無縁になる。また、画面を4分割して4台のPCの画面を同時に表示することや、会議の参加者にファイルを送信することも可能だ。

Intel UNITEを利用中の様子。ノートPCの画面がIntel UNITEのハブを経由して大型ディスプレイに接続されている。

Intel UNITEでは画面を4分割して4台のPCの画面を同時に表示することができる。

参加者にファイルを送信することも可能。

 さらに、画面にリアルタイムで手書き文字などを書き込んだり、プラグインによってPCだけでなく、会議室の照明や空調などもコントロールできる。すべてのデータ通信は暗号化され、256bitのSSLで保護されているため、セキュリティについても安心だ。

 また、クライアントソフトは、Windows用だけでなく、MacOS X用も用意されているため、Macでも同じように会議に参加することができる。画面に同時表示できるのは最大4台までだが、会議自体の参加は100台程度までなら、問題なく利用できる。

 Intel UNITEは、基本的にはその会議室の中にいる参加者の利便性を高めるためのソリューションであり、いわゆる遠隔地とのオンライン会議システムと競合するものではないが、Skype for Businessなどと連携することで、遠隔地からの参加も可能になる。

Outlookと連携して、メールでIntel UNITEのお誘いを送ることもできる。

Skype for Businessとの連携により、遠隔地とのオンライン会議も可能。

 世界のさまざまな場所で、すでに導入されており、インテル社内の調査では会議の時間の無駄を8分から2分程度に短縮できたという結果が出ている。日本でも、渋谷のHikarieのカンファレンスルームやNTTデータウェーブのショールームなどでIntel UNITEが導入されており、企業からの問い合わせも多いという。

 ハブとなる第6世代インテルCore vProプロセッサーを搭載したPCを1台用意するだけでIntel UNITEを利用できるので、導入コストが非常に低いことも魅力だ。Intel UNITEの現時点のバージョンは3だが、今後もiPadへの対応の強化など、積極的にバージョンアップが行われる予定だ。

筆者プロフィール:石井英男

テクニカルライターとして、ASCII.jpやITmedia、PC Watchなどハードウェアからモバイルまで幅広い分野で執筆。最近は、VRやドローン、3Dプリンタ、STEM教育などに関心を持っている。