筆者プロフィール:まつもとあつし
スマートワーク総研所長。ジャーナリスト・コンテンツプロデューサー・研究者(敬和学園大学人文学部国際文化学科准教授・法政大学/専修大学講師)。ITベンチャー・出版社・広告代理店・映像会社などを経て、フリーランスに。ASCII.JP・ITmedia・ダ・ヴィンチなどに寄稿。著書に「コンテンツビジネス・デジタルシフト」(NTT出版)「ソーシャルゲームのすごい仕組み」(アスキー新書)など。
2020/11/12
行政改革の名のもとに省庁内文書における押印見直しの機運が高まっている。しかし「押印は要りませんが代わりに手書きのサインを……」では意味がない。本命はペーパーレス化であり、ワークフロー自体の改革なのだ。
文/まつもとあつし
菅内閣が発足し、河野行政改革担当大臣の掛け声のもと、省庁内文書の押印廃止の検討が進んでいます。この連載でもペーパーレス、ハンコレスを繰り返し取り上げてきましたが、令和元年に交付されたデジタル手続法(=情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るための行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律等の一部を改正する法律)に則って、急ピッチにハンコレスが進むことにはなりそうです。
ただ注意しないと行けない点があります。河野大臣の強いメッセージを受けて報道等では「とにかくハンコを押すのを止めれば良いのだ」という印象を受けがちです。
象徴的なものは婚姻届への押印廃止でしょう。届出人と証人の押印は、実際のところ本人が押さなくても(それこそ100円均一で買ってきたハンコでも)問題なく受理されてしまうため、実効性が薄いものでした。会社でもそういった類いの書類は少なくなく、いわば「印鑑が押してあることで、体面が整った書類に見える」に過ぎません。一般の人にも馴染みがあり、かつあくまでも紙の上で完結するため大規模なシステム改修などを伴わない、「改革」しやすい領域であるとも言えるでしょう。
しかし、実際のところ多くの行政手続きや会社の契約は、厳格に行われる必要があり、しかもデジタル化・ペーパーレス化による効率化へのニーズが高まっています。婚姻届のような紙ベースで戸籍を更新するシンプルなものではなく、「運転免許証の電子化」のような社会インフラとも紐付いた本人認証が電子化できるかどうかが、本丸であると言えるはずです。
紙へのサイン(自著による署名)は、押印と同等の効力を持ちますが、デジタル上でハンコレスを実現するには、電子認証の導入が避けて通れません。私たち民間企業・組織もいよいよDX(デジタルトランスフォーメーション) 待ったなしという時代に突入したのだという意識をもって、具体的な対応を進めていく必要に迫られるのです。
DXの取り組みの本気度を測るには、取引先との契約がデジタル化されているかを見るのが手っ取り早いのではないでしょうか。契約書にハンコを押すためだけに、コロナ禍のなか出社せざるを得なかった、という辛い経験を持つ方も少なくないはずです。会社間の契約がデジタル化できているということは、ハンコレスといった表面的なレベルではなく、社内のワークフローがデジタル化されており、且つ取引先にもそれを波及させていることが示されます。
電子契約は日本国内ではまだこれから普及していくという段階ですが、海外ソリューションとしてはAcrobatを提供するAdobe社の「Adobe Sign」が2006年から電子契約のサービスを開始しています。
国内では、弁護士ドットコムが2014年に開始した「クラウドサイン」が現在シェアトップとなっています。クラウドサインは「立会人型」と呼ばれるサービス形態を取っているのが特徴で、まず契約者同士がメール等のやりとりで内容に同意した契約書を作成します。その上で、それを弁護士ドットコムに送り、弁護士ドットコムが立会人として電子署名することで、契約書に法的な効力を持たせることができるというものです。契約者には電子証明書が不要で、迅速な契約締結が可能です。Adobe Signもこの方式を採用しています。
これに対して、「当事者型」と呼ばれる電子契約は、契約者それぞれがあらかじめ電子証明書を取得している必要があり、その取得に時間が掛かることから、まだ普及には至っていません。
電子契約サービスは、セキュリティや管理機能に応じて料金体系が異なるものの、標準的なプランでは月額1万円からとなっており、印刷や製本・発送費、印紙代や時間コストを考慮すればリーズナブルに導入ができるようになってきています。何よりもDXが求められる時代においては、まず手を付けるべき業務改革の第一歩と言えるはずです。
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スマートワーク総研所長。ジャーナリスト・コンテンツプロデューサー・研究者(敬和学園大学人文学部国際文化学科准教授・法政大学/専修大学講師)。ITベンチャー・出版社・広告代理店・映像会社などを経て、フリーランスに。ASCII.JP・ITmedia・ダ・ヴィンチなどに寄稿。著書に「コンテンツビジネス・デジタルシフト」(NTT出版)「ソーシャルゲームのすごい仕組み」(アスキー新書)など。
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