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2020/11/26

コロナに負けない!在宅勤務・成功事例 【2】ツナグ・ソリューションズ

全社員の無期限フルリモート継続決定から矢継ぎ早の大改革


継続か、縮小か、さらなる取り組みを始めるか? 現在、テレワークの岐路に立っている企業は少なくない。広告制作代行のツナグ・ソリューションズは、9月に全社員フルリモートの無期限化を決定した後、居住地自由化、副業許可、拠点集中化など、矢継ぎ早に働き方の改革を推進している。

文/吉田典史


無期限の全社員フルリモート決定の理由

政府が2020年4月7日に「緊急事態宣言」を発令し、半年が過ぎた。政府の要請を受け、経済界は大企業やIT企業を中心に感染者を増やさないために在宅勤務を本格的に開始した。

11月現在、その対応は3極化しつつある。1つは、「緊急事態宣言」が解除された5月下旬以降、発令前の就労スタイルに戻し、社員ほぼ全員が従来通りの時間に出社する。もう1つは、状況に応じて一部の社員が在宅勤務を続ける。さらに1つがこれを機に在宅勤務のあり方を含め、働き方を抜本的に見つめ直すものだ。

今回取り上げるのは3つめの範疇に入るが、特に斬新な取り組みをする企業と言える。採用コンサルティングや求人広告の制作代行サービス業のツナグ・ソリューションズ(千代田区、代表取締役社長 御子柴淳也、204人※アルバイト・派遣社員含む)は11月現在、一部を除く全社員フルリモートの就労スタイルを原則、期限なし(無期限)で継続している。社員は約140人。主な職種は営業、内勤渉外、求人広告制作、総務、人事、経理、広報など。主な拠点は、本社と関西支社(大阪)、東北支社(仙台)だ。

「今後も社内外の状況が大きく変わらなければ、全社員フルリモートの就労スタイルを原則、無期限で継続することを会社として決めた。4月当初は在宅勤務を前期が終了する9月末までとしていた。

8月から9月にかけて全社員へのアンケート調査や各部署の役員、管理職層の考えなどを確認したところ、肯定的な意見が多かった。業務が滞ることもなかった。働きやすい環境を整備するうえでも、継続したほうがメリットはあると判断した」(ツナググループ・ホールディングス経営企画室 コーポレートコミュニケーショングループ 川田ゆきえ氏)

この場合のフルリモートとは社員各自が勤務場所を選ぶものであり、会社に届けの必要はない。自宅の他、例えば、カフェ、図書館などで仕事をすることが認められている。仕事の報告、連絡、相談などがきちんとできれば、生活の事情に応じて病院や介護施設、地方も可能だ。

メールやデータのやりとりのセキュリティをより確実にするために、9月に全員にノート型パソコンを1台貸与した。希望者には、液晶モニターを貸す。セキュリティのレベルを上げるために、回線はVPN(Virtual Private Network)を使用する。さらに、PCで受発信可能なクラウド電話を導入した。社員へのアンケート調査で導入を求める声が多かったためだ。クラウド電話を使えば、スマホやパソコンでも会社の内線電話として利用できる。自社の代表番号や各部署のダイヤルインの番号で相手に表示することも可能だ。いわば、個々の社員のスマホを会社の電話として使用することになる。

居住地自由化、副業許可、在宅勤務支援手当など、続く次の一手

無期限の全社員フルリモートをよりスムーズに進めることを目的に、2021年1月からは「社員の居住地自由化」をスタートさせる。これまでは本社と支社(大阪)勤務の場合、大半の社員は通勤が可能な地域に住んでいた。今後は、居住地は各自の判断に委ねることにした。基本的に通勤する必要がないので、本社に籍があっても地方に住むことができる。育児や介護など、家庭の事情に配慮した施策とも言える。

全社員フルリモートを無期限化すると、オフィス環境を見直す必要が出てくる。現在、グループ13社の組織改編を進めているが、その一環として各社の本社オフィスの移転を決めた。グループ社の相乗効果や業務効率を上げるために、2か所に集中させることを考えている。ツナグ・ソリューションズも来年1月には移転する。

1月からは、全社員を対象に副業を許可した。「無期限のフルリモートをする場合、個々の社員の考えや仕事の状況や部署の現状に応じて、社員各自が他社の仕事を請け負うことが可能と判断した。本人のキャリア形成の幅が広がり、当社の仕事にも好影響を与えてくれる、と期待したい」(川田氏)。

本社と支社(大阪)に籍のある社員(全社員の7.5割以上)には毎月、「在宅勤務支援手当」を6000円支給するようにした。地方に移住したとしても、支給の対象となる。6000円は入社年次、在籍年数、配属部署、役職に関係なく、全員が同額。毎月のWi-Fiの通信料や光熱費に充てている社員が多いという。

9月末までは、出社するのは1日平均で全社員の1割以下だったが、全社員、無期限フルリモートを正式に決めた10月以降は1日に多くとも数人だという。比較的スムーズに在宅勤務を進めることができた理由の1つに、2015年から全社で社内文書のデジタル化(ペーパーレス化)を試みてきたことがある。例えば、部下が上司に申請する書類に必要な認め印のすべてを数年前から電子印鑑にしてきた。

だが、4月以降、電子印鑑を使用できない業務のために、一部の社員が出社せざるを得ない場合があった。例えば、特に契約書の代表者印(法人の実印で、法務局での登記をすることで効力を発揮する印鑑=丸印)を押す場合に、総務部の社員が出社した。5月下旬以降は、営業部や管理部が顧客企業と電子印鑑の導入に向けての話し合いを続けた結果、現在は、多くの企業と電子印鑑のやりとりが可能になりつつあるようだ。営業部の社員が出社するケースは、以前よりは少なくなった。総務や経理などスタッフ(管理)部門の社員数人は全社の郵便物の確認のために、ローテーションで週1回程、出社する。郵便物は、最近はごくわずかになったという。

社員がいない支社オフィス(大阪)。近く移転の予定

アンケートをもとにIT環境をさらにバージョンアップ

5月下旬以降は、業務のあり方の見直しを順次進めた。社外との関係で特に力を入れたのが在宅勤務を始めた4月上旬に社内で最も懸念していた、営業だ。顧客層の多くは全国の小売業や外食、飲食業の企業で、大手ではセブン-イレブン・ジャパンやロイヤルホスト、ファーストリテイリング、王将フードサービスなどが挙げられる。求人広告制作本数は年間約30万本を超え、応募者数は年間約80万人にのぼる。

外食や飲食業の場合、例えば、IT環境が他の業界に比べて十分には整備されていない場合がある。5月下旬までは、営業部員がこれらの企業と主に電話やFAXで連絡を取り合うことがあった。5月下旬の緊急事態宣言の発令解除以降は、メールやZoomなどのオンラインを使った意思疎通を顧客に依頼してきた。会社として双方の安全確保の観点から「非接触」を心掛けているためだ。

現在、特に顧客企業との間で本格的に使うようになったのは、インターネットファクスである。「インターネット回線を通じてFAXの送受信を行うことで、顧客企業とのアクセスがしやすいようにした。FAX機自体が不要で、FAX専用の回線を引く必要がないため、全社員フルリモートに適していると判断した」(川田氏)

社内業務のあり方を見直す際は社員の声を丁寧に聞くことを重視した。まず、8~9月に東京本社、関西支社の社員を対象にアンケートを実施。無期限のフルリモートにスムーズに移るためには、特に「ツール・インフラ」「コミュニケーション」「業務生産性(労働生産性)」「社員教育」の4つが大切といった仮説を立てて、設問を作った。

アンケートの元になったテレワーク推進のための4つの指標(作成:ツナグ・ソリューションズ)

アンケートの結果、従来各部署で様々なコミュニケーションツールを使用して業務管理を行っているため、ツールの統一が必要と判断した。Googleのハングアウトを使用する社員が最も多かったが、総務や経理、人事、広報などの企画部門ではSlack(スラック)の利用率も高い。Slackの満足度が高いことがわかったため、有料版を検討している。

アンケートの結果(問いは、「使用している社内コミュニケーションツールと使いやすさについて」)

アンケートの結果(問いは、「業務のコミュニケーションに関して会社へサポートをしてほしいこと」):Slackとクラウド電話を求める声が多い

これを機に毎月の給与明細は、Web給与明細書配信システム「Pay-Look」を利用するようにした。スマホパソコンから給与明細が確認できるサービスだ。

ツナグ・ソリューションズで使用するPay-Lookの電子給与画面

2007年の創業時から人事など管理部門に籍を置き、現在は事業統括本部事業管理室室長を務める向田麻里乃氏はこう答える。「社員へのアンケート調査では、多くがおおむね満足して働いている結果が出た。業務遂行上は、大きな問題はないと私たちは受け止めている。今後の主な課題は2つで、1つは新入社員の育成と、もう1つは業務で本当に必要なこと以外のコミュニケーションをどうするか。これらの課題については、継続して検討していきたい」。

アンケートの結果(問いは、「在宅勤務前と比較して業務外のコミュニケーション量は変わりましたか?」):「変わらない~かなり減った」が、92%を占める。「不満はない」「必要ない」が63%、「増やしたい」が29%

全社でのオンライン会議(キックオフミューティング):毎年4月と10月に全社総会(キックオフミーティング)を実施している

筆者がツナグ・ソリューションズを取材するのは、今回で4回目となる。初回(2017年)のテーマは労働時間の管理だったが、丁寧な取り組みをしていたように筆者には思えた。これよりもはるか前から人事の施策に熱心で、例えば、2010年には東京都産業労働局主催「東京ワーク・ライフ・バランス認定企業」、2011年には「東京都中央区ワーク・ライフ・バランス推進企業」に選ばれている。

このような地味ではあるが、着実な取り組みを続けたからこそ、会社の組織力が強く、しなやかになっているのだろう。強く、しなやかになっていないと、わずか数か月で、無期限リモートワークの継続から、居住地自由化、副業許可、拠点統合まで、大胆に会社を変えることはできないはずだ。その意味で、見習うべき事例ではないだろうか。

「コロナに負けない!在宅勤務・成功事例」
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筆者プロフィール:吉田 典史

ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年より、フリー。主に企業などの人事や労務、労働問題を中心に取材、執筆。著書に『悶える職場』(光文社)、『封印された震災死』(世界文化社)、『震災死』(ダイヤモンド社)など多数。

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