三年後の日本はこうなる テクノロジー×データ×ワークスタイル (第1回)

写真右からインテル株式会社 井田晶也氏、MM総研代表取締役所長 関口和一氏


社会情勢や働き方が大きく変わろうとする中、ICTへの期待が高まっている。ICT市場で半導体分野を長年リードするインテル株式会社の井田晶也氏、ICT活用の調査分析をリードするMM総研代表取締役所長の関口和一氏を迎え、“三年後の日本はこうなる”をテーマに対談を実施した。全4回にわたって紹介していくうちの、第1回はインテルの働き方改革とビジネス戦略について語ってもらった。

文/古作光徳


働き方改革とビジネス戦略の変化

新型コロナウイルスの流行を契機に加速する“データカンパニー”への変貌

関口 一昔前はパソコンやサーバーを活用したワークスタイルが主流でした。新型コロナウイルスの流行によって様々なワークスタイルが生まれていますが、これからもインテルではマイクロプロセッサーが事業のコアであり続けるとお考えでしょうか?

井田 弊社の軸となる インテル® Core™ プロセッサー・ファミリーのビジネスは、非常に大きい位置を占めています。また様々なセンサーデバイスをはじめ、デバイスから抽出するデータをネットワークの中で管理できるような端末なども今後さらに力を入れていく分野であると思います。

関口 インテルはマイクロプロセッサー、メモリといった半導体事業を通じて世界のICT活用を支えてきました。昨今、スマートフォンなどモバイル端末の活用が当たり前となり、大量のデータをクラウドに集めて効率的に処理するなど、データ活用を推進するICTの使い方にも変化が起きています。さらにいえば、新型コロナウイルスの流行が、それを加速しているように見えます。この状況をどう理解し、アフターコロナにおける新しい日常(ニューノーマル)にどう対応しようとしているのか。インテル自身の実践、そして戦略をお聞きしていきたいと思います。

井田 新型コロナウイルスの流行以前から、世界規模でワークスタイル・トランスフォーメーションという波が来ていると理解していました。「Industrie4.0」とか「Society5.0」など、国や地域によって呼び方は異なりますが、データ活用と働き方改革を全世界的に進めようとしているなか、今回くしくも新型コロナウイルスの流行という状況に陥ってしまいました。

関口 新型コロナウイルスの流行は、インテルの取り組みにどのような影響を与えましたか?

井田 新型コロナウイルスが流行する以前、つまりPCや CPUカンパニーと言われていたころから戦略の一つとして“データカンパニー”への移行を始めていました。例えば、企業がデータを扱うインフラやネットワーク、それに関わるソフトウェアなどすべてに着目し、インテルのテクノロジーを活用していただこうという考え方です。

関口 従来から取り組んできたデータカンパニーへの取り組みが新型コロナウイルスの流行で加速しそうな状況ですね。インテル自身にもデータ活用やコミュニケーションなど働き方に大きな変化が起きているのではないでしょうか?

井田 インテルには世界で約10万人の従業員がいます。新型コロナウイルスの流行で2月下旬から3月上旬に10万人の従業員の8割以上がWork from Home、リモートワークに切り替わりました。半導体の研究開発など、現場にいないと仕事ができないケースもありますが、ほとんどはリモートワークを中心とした働き方を実践しています。

関口 リモートワークが新しい日常として定着しつつありますね。ところで、そもそもインテルの“データカンパニー”への移行は、どのタイミングで提唱したのでしょうか?

井田 数年前に遡りますが、ダボス会議でIndustries 4.0が議論されるよりも前から社内で協議され、提唱を始めました。当時はPC の売り上げがピークを迎えていましたが、その先にIoTの世界、PCに加え多くのデバイスとデータを介して世界中が繋がるという変化を予測していました。

関口 今、まさにモバイルやカメラ、ウェアラブルに加え、ドローンや物流、自動車といったモビリティの分野にもデータ活用の波が押し寄せていますね。
例えば、組み込み式のデバイスの需要が高まることで、その裏で大きなデータの処理が生まれるため、マイクロプロセッサーやメモリも売れる。だからそういった製品が増えればビジネスに繋がるということですね。

井田 結果としてそういうことです。扱うデータが増えていくにつれて処理が必要ですから半導体の需要というのが大きくなります。データが増えればサーバーを増やさないといけない。また、よりデータを取得するためには、デバイスを増やさないといけない。その相乗効果を引き出すためにインテルの技術が生かされるというのが、企業としての成果だと思っています。
世界中のPC、サーバー、データセンターとIoTがネットワークで繋がることで、ありとあらゆるデータが生み出されて流通します。するとICTを活用する企業や消費者にとって「データ活用」がもっとも重要な価値となっていきます。インテルの技術を活用していただき、顧客にとって価値あるデータ活用とは何なのか? 自らの持つ技術でどのような貢献ができるのかと考えたわけです。

関口 これからのデータ活用の形を考え、持てる技術を活用して新たなビジネスを推し進めていくということですね。データカンパニーを志していく中で、新型コロナウイルスが契機となり、新しいビジネスへの戦略と投資がさらに進むということでしょうか?

井田 仰る通りです。新型コロナウイルスの流行による働き方やデータ活用の変化は、我々はもちろんのこと、すべての顧客にとってビジネスの転換点となり得ると訴えております。この転換点を各企業がどのようにとらえ、対応をしていくかにより、将来に大きな差が出てくるのではないかと考えています。

関口 今年5月に実施した調査では、40%を超える日本企業が2020年のIT投資を増やすと答えています。さらに10月に実施した調査では、上半期の業績低迷の影響を受けていた企業も、IT投資を再開する傾向が見て取れます。過去半年は、新型コロナウイルス対策で緊急避難的なIT投資も多かったとみていますが、今後はデータ活用を主軸にニューノーマルへの対応が本格化するのではないでしょうか。

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