三年後の日本はこうなる テクノロジー×データ×ワークスタイル (第3回)

写真右からインテル株式会社 井田晶也氏、MM総研代表取締役所長 関口和一氏


社会情勢や働き方が大きく変わろうとするなか、ICTを活用した企業や社会生活の変革に期待が高まっている。ICT市場で半導体分野を長年リードするインテル株式会社の井田晶也氏、ICT活用の調査分析をリードするMM総研代表取締役所長の関口和一氏を迎え、“三 年後の日本はこうなる”をテーマに対談を実施した。全4回にわたって紹介していくうちの、第3回は加速するデジタル化への期待と課題について語ってもらった。

文/古作光徳


Windows 7サポート終了の特需後も高まるPCの需要

関口 昨今の新型コロナウイルスの流行により、リモートワークやオンライン授業、オンライン診療などが加速しました。さらにGIGAスクール構想やWindows 7のサポート終了などの材料が加わったことでPC市場が拡大していますね。

井田 昨年はWindows 7のサポート終了に伴うWindows 10への移行という非常に大きな需要がありました。

関口 我々の調査でもPC市場は2018年から対前年比42%増と急成長を遂げています。その余波が今年の3月頃まで続き、4月頃から新型コロナウイルスの影響でリモートワークが広がってきたことで法人市場のPC需要が高まりましたが、下半期はその波も落ち着いてきています。一方で一般ユーザー市場でのPC需要は、なお高い水準にあります。リモートワークを実践する人が増えることで、自然とPCの新規購入や買い換え需要が高まっているのだと思います。

井田 リモートワークはもちろんですが、巣ごもり需要も増えています。娯楽のひとつとしてPCをお選びいただく方が多かったことも好材料になったと思います。

 また、GIGAスクールやオンライン学習を取り入れる教育機関が増えた影響も大きかったのではないかと分析しています。

加速するデジタル化の波に期待すること、そして課題とは

関口 菅政権がデジタル化を推進していることもあり、PCに対する需要はさらに高まること必至です。インテルも期待するところがあるのではないでしょうか。

井田 デジタル庁の創設によってPC需要が高まることは間違いないと見ていますので、大いに期待をしています。

関口 デジタル庁の創設に向けた動きはすでに始まっており、早くも“ハンコ廃止”に本腰を入れています。婚姻届や離婚届ですらハンコを廃止するという構想まであります。少し行き過ぎかとも思いますが、それだけのスピード感で世の中が変わろうとしています。

 これまでハンコと紙で行っていた手続きを電子署名に置き換えるためにはPCなどのデバイス需要が高まるでしょう。

井田 デジタル化の波が急速に押し寄せると、それに伴ってデバイスに対する需要も高まるのが自然ですね。

関口 現政権は“デジタル化推進内閣”だと感じています。

 地方銀行についても、これまでは他行との合併にはあまり応じてきませんでしたが、デジタル化の推進が求められる今、単独で推進できなければ他行と共同で推進しようかという話になります。それにはシステムの乗り換えが必要となり、従来型のシステムから新しいクラウド中心のシステムへと変わっていくことが予想されます。このような流れは PC業界に大きな需要をもたらすことになるでしょう。

井田 先進国の中でも、日本のデジタル化はかなり遅れているため、まずは追いつく必要があります。そのためには、他国以上にスピード感を持って取り組む必要があるので、インテルも協力をしていきたいです。

関口 他にも中央官庁同士が横で繋がっていない、さらに中央省庁と地方自治体が繋がっていないという“繋がらない政府”が問題となっています。それらを繋ぐためには、霞が関WANとLGWANの融合といった具合に、これまで別々に運用・管理されてきたシステムを統合することが必要になります。

 このような取り組みを始めるにあたって、インテルが現政権に呼びかければ、極めて有力なソリューションを提供できると思いますがいかがでしょう。

井田 現状、そういった呼びかけはやっていませんが、いつでも協力できる環境はあります。インテルのソリューションが日本の社会に貢献できることがあれば、もちろん協力したいです。

関口 行政だけでなく、民間にも当てはまりますが、日本では情報インフラやシステム開発といった取り組みは、業者に一任されることがほとんどです。財務省に行くとA社が入っていて、経産省に行くとB社が入っているというわけですね。そこはしっかりと連携をしてもらわないと困りますね。

井田 中立な立場でみられる人や企業がいるか否かではないでしょうか。インテルはあくまでも部品を供給するメーカーで、最終製品を作っていません。しかし、インテルの部品は多くのメーカーに採用いただき広く供給しているので「偏りなく中立的な立場で助言や技術の提供ができます」とメーカーさんには案内させていただいております。

関口 一方でGAFAが台頭したことによって「日本勢、なんとかせい!」という政府の声も出てきました。実際に国内の大手通信会社と機器メーカーが提携する動きもあります。そういったなかで、NTTが提唱する次世代情報通信技術の「IOWN(アイオン)構想」にインテルやソニーが入り、マイクロソフトまでもが入るということになりました。これはとても面白い現象だと思います。

 政府が進めるデジタル庁創設の狙いは、大きくふたつあります。ひとつは省庁によって異なる情報通信政策を一元化すること。もうひとつはデジタルガバメント推進によって行政を効率化し、システム調達を一元化してコストを下げることです。このようなICT政策の一元化をインテルのような中立的でグローバルなプレイヤーが呼びかけていくと効果的ではないかと思うのですが。

井田 是非そこは我々もできる限りのことをやりたいと思っています。

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