三上洋のハッピーITタイム 【第4回】

いざというとき、在宅ワークに足りない周辺機器をスマホで代用する


在宅ワークでは、メインとなるPCだけで用が済むとは限りません。スキャナー・プリンター・FAXなどの周辺機器がなくて仕事を進められず、困ることもあるでしょう。スマホやコンビニのマルチコピー機を活用する技を紹介します。

文/三上洋


Apple新製品、注目度ナンバーワンは「iPad mini 第6世代」

 毎年秋恒例のApple新製品で、iPhone 13よりも注目度が高かったのがiPad mini第6世代です。筆者の友人のジャーナリストや専門ライターさんの多くが、今回のiPad mini第6世代を買っており、玄人受けするガジェットと言えそうです。

 その理由は、仕事・プライベートのどちらでも「パッと気軽に取り出して活用できる」こと。持ち歩けるサイズ・軽さで、さらにApple Pencil第2世代ですぐにメモ書きができるので便利です。またiPhone 13にはない指紋認証(Touch ID)があり、5Gに対応したのもモバイル利用の多い人に向いています。

 iPad mini第6世代はビジネスでも2つの面で役立ちます。1つは入力で「スクリブル」という機能によって、Apple Pencil手書き入力から文字認識ができるようになりました。iOS15から日本語にも対応したので、手書きの文字をすぐにデータ化して記録できます。

iPad mini第6世代での「スクリブル」

手書き文字を認識して文字入力できる。通常の文字入力では、縦持ちで両手の親指でキーボード入力するのがスムーズだった

 ただ実際のスクリブル入力では、文字を丁寧に書く必要があるため、急いでいるときには向いていません。そんなときは画面内のキーボードで使うわけですが、これがちょうどいいサイズなのです。縦持ちで両手の親指で入力するのにピッタリのサイズであり、原稿書きツールとしても優秀です。

 もう1つはテレビ会議利用です。iPad mini第6世代では、顔を常にセンターに写す「センターフレーム」に対応しました。顔を左右に動かしてもセンターに追尾してくれます。ZoomやGoogle Meetにも対応していますので、前回の記事「Web会議はPC+スマホ併用でスマートに」で紹介したように、PCで作業しながらWeb会議はiPad miniで行うと、PCの負担を減らすことができます。iPad miniは在宅ワークの手助けとして最適と言えるかもしれません。

 しかし、メインとなるPCやスマホ、タブレットさえあれば、在宅ワークがスムーズに進むというわけでもありません。会社には揃っていた周辺機器の不足が、仕事を進めるハードルになることがあります。

プリンター・スキャナー・FAXがなくても大丈夫?

 コロナ禍以降、在宅ワーク・テレワークはすっかり定着しました。しかし自宅にスキャナー・FAXがないために仕事が止まってしまう、プリンターのインクが仕事中に切れるなどのトラブルも起きます。会社と違い周辺機器が揃っていない在宅ワークでの問題点です。

「いや、今の時代、FAXとか紙に印刷とかしないでしょ?」と思う人は早計です。ITだけで完結できる仕事は、今の日本ではまだ少数です。官公庁は未だに紙か、よくてもPDFを要求されるケースが珍しくありませんし、中小企業では今もFAXが現役のところがあります。

 実はそんな企業・団体にこそ、ビジネスチャンスがあるのです。IT化することでコストを削減し、DXによって新しいビジネスを生む余地があるからです。FAXや紙の印刷を要求する取引先をバカにするのではなく、その相手こそ新しいビジネスのチャンスだと考えましょう。

 私たちはSlackとクラウドだけで済ませる仕事に固執するのではなく、紙の印刷・FAXにも対応すべきだと筆者は思っています。ただ在宅ワークとなるとスキャナーもないし、そもそもプリンターがない家もあるでしょう。そこで役立つのがスマホと関連サービスの活用です。

紙の資料デジタル化にはスマホアプリ活用で

 まずは紙の資料、たとえばプレスリリースをデジタル化にするには、スマホアプリが便利です。たとえばiPhoneであれば、iOSの「メモ」にその機能があります。

iPhoneのメモ帳で撮影ボタン(カメラアイコン)を押し「書類をスキャン」を選択。書類をカメラで写すと紙を認識して自動撮影してくれる。撮影した写真はすぐにPDF化できるほか、モノクロにして見やすくすることもできる


 「メモ」にある「書類のスキャン」を押し、アウトカメラで紙の資料を写します。すると自動的に紙の資料を撮影し画像として切り取ってくれます。書類を斜めに撮影しても、きちんと正対した画像になる優秀な機能です。そして撮影した画像は、そのままPDF化できます。

 手元にある紙の資料をすぐに送ってと言われた場合でも、この機能を使えば一瞬でPDFとして取り込んで相手に送ることができます。スキャナーいらずの便利な機能です。

 同様の機能はAndroid/iOSどちらにもあるスマホアプリ「Microsoft Pix カメラ」でも可能です。マイクロソフトが開発しているカメラアプリですが、「ドキュメント」という機能で紙の資料などを正対して撮影し、文字を見やすくしてくれます。

マイクロソフトのスマホアプリ「Microsoft Pix カメラ」での撮影画面。ホワイトボード正面では照明の反射や手の影が入るので、「ドキュメント」モードであえて斜め横から撮影。このモードではホワイトボードのエリアを認識して正対した画像で自動保存してくれる


 たとえば上はホワイトボードの手書き絵を、Microsoft Pix カメラで撮影した例です。ホワイトボードの正面から撮影すると、ライトの反射や手の影が入ってしまいました。

 これをMicrosoft Pix カメラのドキュメント機能で、あえて斜め横から撮影。斜め横から撮影しても、ドキュメント認識によってきちんと正面の画像になるのです。斜め横から撮影することでライトの反射や手の影もなくすことができました。白黒の書類なら、あえてモノクロにすれば文字をくっきりさせることができます。

OCRで文字データだけ取り出したいならLINEのカメラ

 ではPDF化ではなく、紙の書類や看板を文字認識してデータとして取り出すにはどうしたらいいでしょうか。OCRのスマホアプリは多数ありますが、精度が高く超お手軽なアプリがあります。それはLINEのカメラ機能です。実はLINEのカメラ機能はとても優秀で、文字認識の精度がビックリするぐらい高いのです。

 この画像は近くの公園にある由来紹介の看板をLINEのカメラで撮影したもの。通常のトーク画面で起動できるカメラをそのまま使います。撮影時に「文字認識」を選ぶと、数秒でこのようにほぼ間違いがない文字認識をしてくれました。

近くの児童公園の看板をLINEカメラで撮影してみる。LINEのトークでカメラを起動し「文字認識」を選ぶと、数秒で文字データを抽出。ほぼ間違いなく文字データを取り出すことができた


 もちろん紙の文書でも文字認識ができますから、紙にしか残っていない古い資料をデータ化するときにも便利。LINEで取り込んだ文字を、メモなどにコピペしてPCで作業すれば、すぐにデータとして相手に渡すことが可能です。

プリンターなしでも在宅ワークはできる

 今や自宅にプリンターがない家庭も多いでしょう。筆者もそうで仕事場にプリンターはありません。紙が要求される場面はあるのですが、その際はコンビニのネットプリントを使っています。コンビニ各社はネットプリントサービスを用意しており、PDFや画像をコンビニのマルチコピー機で印刷できます。

セブンイレブンの「ネットプリント」アプリ。PCやスマホからPDF・JPEG・Officeファイルを登録し、マルチコピー機で1枚20円(モノクロの場合)で印刷できる

 たとえばセブンイレブンの「ネットプリント」では、PCではウェブサイトから、スマホでは専用アプリから登録して印刷できます。在宅で印刷したい文書があったら、ネットプリントのサイトから登録。ファイルはJPEGやPDFのほか、Officeファイルにも対応しています。登録すると専用の番号が表示されるので、それをセブンイレブンのコピー機で入力すれば1枚20円(モノクロの場合)で印刷できます。

 在宅ワークだけでなく、出張や客先で紙が必要になったときにも役立ちます。たとえば客先のプレゼンで急に紙の資料を配ることになったら、スマホで資料をネットプリントアプリに登録。あとはセブンイレブンに行けば印刷できるので便利です。

セブンイレブンの「ネットプリント」では書類のスキャンも可能。スマホアプリならスマホへの保存ができるので便利

 ちなみにセブンイレブンのコピー機では、書類のスキャンも可能です。書類とUSBメモリーを持っていけば、その場でスキャンしてファイル化可能。またスマホアプリを使えば、スキャンしたファイルをスマホ側に保存することもできます。

FAXはクロネコFAXかコンビニ利用で

 FAX送信が必要な相手でも、コンビニのコピー機が役立ちます。必要なファイルを上記のネットプリントでコンビニ印刷、その場でコピー機からFAXを送ればいいのです。請求書や発注書のFAXが必要な相手には、ぜひコンビニコピー機を活用しましょう。

 ではFAXを受信する場合にはどうしたらいいでしょうか? それにはヤマト運輸のグループ企業・ヤマトシステム開発が提供している「クロネコFAX」がおすすめです。

クロネコFAXのFAX受け取り機能。専用番号にFAX送信することでコンビニのマルチコピー機で受け取ることができる(モノクロ1枚50円)

 クロネコFAXはコンビニコピー機でFAXを送受信できるサービスです。FAXを送ってもらう相手には、クロネコFAXの専用電話番号を伝え、そこにFAXを送信してもらいます。すると送信後に相手のFAXに折り返し「文書番号通知レポート」が届くので、その番号を教えてもらいます。あとはコンビニコピー機で番号を入力すれば印刷して受け取ることができるしくみです。在宅ワークだけでなく、出張先でも活用できます。

もし在宅ワークが長期化するなら専用機器を

 周辺機器なしでも在宅ワークができる方法を紹介しましたが、もし在宅ワークが恒常化するのなら、周辺機器を買ってしまったほうがいいでしょう。たとえば紙のスキャンが多い・資料のデジタル化作業が多いなどの場合には、専用スキャナーがおすすめです。

 たとえばPFUが10/5に発表した「Scansnap iX1300」は、手軽に書類を大量スキャンニングできるモデル。大量の書類取り込みから、身分証明書のスキャンなどにも対応。スマホに取り込めるため、在宅ワークや出先でも活躍します。

PFUが発売したパーソナルドキュメントスキャナー「Scansnap iX1300」。20枚のA4書類をセットしわずか40秒でスキャンできるほか、A3書類や身分証明書なども手前から差し込んで読み取る機能もある

 スマホやコンビニの活用で、FAX・紙・スキャンなどのアナログ業務にも対応しつつ、将来的には自宅にもScansnapなどの優秀な周辺機器を入れて、より効率よく在宅ワークを進めたいものです。

筆者プロフィール:三上洋

東京都世田谷区出身、1965年生まれ。東洋大学社会学部卒業。テレビ番組制作会社を経て、1995年からフリーライター・ITジャーナリストとして活動。専門ジャンルは、セキュリティ、ネット事件、スマートフォン、Ustreamなどのネット動画、携帯料金・クレジットカードポイント。毎週月曜よる9時に、ライブメディア情報番組「UstToday」制作・配信。Ustream配信請負、ネット動画での企業活用のコンサルタントも行う。