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2021/11/12

今読むべき本はコレだ! おすすめビジネスブックレビュー - 第37回

次世代リーダーが目指すべきDXの本質は破壊と創造による企業価値の向上


『マッキンゼーが解き明かす 生き残るためのDX』黒川 通彦、平山 智晴、松本 拓也、 片山 博順 著編集/日本経済新聞出版

頻繁に耳にするようになった「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」。本書は、DXは単なる企業のIT化、デジタル化ではなく、DXの本質は企業文化変革であり、企業が生き残るための破壊と創造であるという。10年後、20年後にどんな企業が生き残れるのか、著者等は次世代リーダーにDXの伝道師になれと熱く語る。

文/土屋勝


破壊と創造に挑んだ者だけが生き残る

DX(デジタル・トランスフォーメーション)はいまやバズワード、流行語化しつつある。DXをやっていますと言えば、前向きな先進企業だと思われる。前回紹介した『システムを作らせる技術』でも「DXの本質を理解していない社長が『我が社もともかくDXに取り組め!』と号令をかけ」て現場が振り回されるといった困った事例が多くあると紹介されていた。本書は多くの企業へDX導入をサポートしてきたコンサルティング企業マッキンゼーのアナリストたちがDXの本質、必要性、そして実現のためのステップを解き明かす。

本書によれば、DXの本質とは「生き残るための自社の企業文化の破壊と創造による企業価値の向上」だという。社会環境、市場環境が大きく変化している現代において、変化を望まない企業は生き残ることができない。逆に言えばDXの推進をきっかけに強い危機感を社内に醸成し、自社を破壊し創造し直した企業だけが生き残っているというのだ。アメリカ発祥のGAFA(GAMA?)、中国のBATH(Baidu、Alibaba、Tencent、HUAWEI)といった新興企業が一気に顧客を囲い込み、産業構造までも変えてしまった。伝統的企業で生き残っているのは、いち早くデジタル化を取り入れ、自社のビジネスモデルを変革し、自社の企業価値を高めたところだ。

ドイツの自動車メーカー、フォルクスワーゲンはマイクロソフトのクラウドサービスAzureとAmazonのクラウドサービスAWSを連携させ、サプライチェーン全体をクラウドに接続し、生産性と利便性を向上させることに成功した。122の工場、3万の施設、1500のサプライヤーをクラウドに接続することで、各工場がバラバラの生産システムを導入していたという課題を解決した。データを可視化することにより、経営のあり方をデータドリブンへとシフトしたのだ。

また、イギリスの民間航空機エンジンメーカーのロールスロイス(自動車のロールスロイスとは別企業体)は、エンジンに取り付けたセンサーデータを基に、エンジン出力や稼働時間から「提供した推進力」に応じて利用料を徴収するビジネスモデルに転換した。IoTとAIを活用することでエンジンが稼働していない時間は顧客にとって利益を生まない無駄な時間として捉え、顧客に費用を請求しない。すなわちエンジンのダウンタイムリスクをロールスロイスが負うことで他社との差別化に成功したといった例が紹介されている。

DX導入の立ち遅れが目立つ日本企業

建設機械のコマツや農機具のクボタといった日本企業のDX成功例も取り上げられているが、全体としては日本企業、特に製造業でのDXは遅れが目立つという。多くの製造業ではデジタル技術は限定的な生産性向上のツールに留まっており、自社企業文化の破壊と製造からは遠く離れた地点に立っている。

日本の製造業がデジタル化に遅れている原因として、消極的なIT投資があげられる。ロボティクスなど製造機器へは積極的な投資を行い、それなりの成果を上げているがITはコストセンターとして捉え、投資が後回しになりがちだ。稼働開始後30年、40年が経っても現役で稼働しているITシステムがあるという。

本書の読者対象は次世代リーダー、次の経営幹部になる世代と仮定しているという。本部長、部長といった役職に就いている40歳から50歳の世代だ。現在の経営トップに「御社は、いまのビジネスモデルで、あと何年生き残れますか?」と問いかけると3年、5年後までは大きな変化は起きないという前提で大丈夫と答える。だが、10年後、20年後はどうなるかという問いには「それはわからないな」「古いビジネスモデルのままでは無理だろうな」と表情を曇らす。その頃、現経営陣は会社に残っていない。10年後、20年後に経営トップに立つのは、今の40代、50代の管理職だ。

小売り、旅行、エンタテインメントなど進化の早い業界は新規参入者がシェアを奪う逆転現象が頻繁に起こっており、DXは必須となっている。自動車、消費財などはDXによって新規参入者が浸食しつつあり、DXを進めなければと危機感を持って臨んでいる。それに対して電力、ガス、素材、通信、金融など社会インフラや材料を供給する業種はこれまで規制に守られてきたこともあり、変化の速度が遅く、DXを進める必要性が見えにくい。

だが、どのような業界でも必ず変化は訪れる。たとえば国によってガチガチに規制され、守れられてきた金融業界。大手銀行破綻の事例は強烈な印象として残っているだろうし、ベンチャー企業が斬新なサービス、優れたUIをひっさげて金融業界に参入するフィンテック(FinTech)が急成長している。日本でも、1回あたり数千円の手数料と2、3日かかる銀行経由の海外送金に対し、送金額の0.6%手数料で最短数分で送金できるサービスが進出している。ビットコインなど暗号資産の普及に対し、中国人民銀行は2,000万人、6,000億円という規模でデジタル人民元の実証実験を成功させた。日銀を含め、各国の中央銀行がデジタル人民元に続けと中央銀行デジタル通貨発行に向けた準備を進めている。

次世代リーダーに求められる役割

マッキンゼーは、2008年リーマンショック後の企業パフォーマンスについて比較分析を行ったという。現在の企業価値が平均よりも高い企業を勝ち組、低い企業を負け組と定義。勝ち組はDXに継続投資し、それを通じて人材を育成し、売り上げを成長させることができた企業。負け組はコスト削減と人員整理のみに終始してきた企業だったという。企業は同業他社と激しい争闘戦を繰り広げている。その中で後ろ向きなリストラのみに頼っていては売り上げも新製品も人材確保もR&D(Research and Development:研究開発)もおぼつかなくなり、縮小再生産か撤退を強いられるのは当然だろう。

これは国家レベルでも言える。2021年現在、日本はGDPで中国に抜かれて3位、平均年収は韓国に抜かれて25位。このまま行けば2050年ごろ、日本はインドやインドネシアにも抜かれた衰退国になってしまうだろう。あるいはDXに舵を切り、豊かな国を目指すのか。「いまアクションを起こすか、目をつぶってやり過ごすか、その決断で未来が変わるのです」と、本書は読者に警告を発している。

本書は、10年後、20年後の経営陣を目指す次世代リーダーに求められる役割としては次のようなものがあるという。

・現場と経営層に橋を架ける
デジタルネイティブな現場の若手と、スマホも使いこなせない経営陣との間にたち、現場の課題を解決し、経営陣にDXの必要性を納得させる。

・自分の古い脳をアップデートする
自信の成功体験から若手の提案を止めていないか、DXを敬遠していないか。失敗するリスクを恐れすぎて、若手の提案を経営陣に届ける前に、石橋をたたき壊していないか。

・のび太君になろう
ドラえもんは未来の道具を次から次へと出してくれる。だけどのび太君から助けを求められなければ、自分から道具を出してはくれない。次世代リーダーものび太君になれという。テクノロジーを人任せにせず、分からないことを認め、やりたいことを伝え、学び、経験し、失敗していくことで成長し、ドラえもんのように素晴らしい未来の道具を持つ優秀なエンジニアと巡り会うことができる。

10年後、20年後に会社が生き残っているか、30年後、道路は穴だらけで頻繁に停電し、水道の水は濁っていてそのままでは飲めない国になるか。本書はIT、デジタルに疎い、あるいは忌避感を持っている経営層、現場と経営層の板挟みになってもがいている次世代リーダー層にお勧めの一冊だ。

まだまだあります! 今月おすすめのビジネスブック

次のビジネスモデル、スマートな働き方、まだ見ぬ最新技術、etc... 今月ぜひとも押さえておきたい「おすすめビジネスブック」をスマートワーク総研がピックアップ!

『未来ビジネス図解 新しいDX戦略〈デジタルトランスフォーメーション 成功する変革〉』(内山悟志 著/エムディエヌコーポレーション)

近年急速に広まったDX=デジタルトランスフォーメーション。DXに終わりはありません。コロナ禍のこの約一年半、否が応でもその必要性は加速度的に増大しており、具体的に取り組む企業もますます増えています。そこで改めて浮き彫りになってきたさまざまな問題や課題、さらに進化を続ける最新技術との関わり、実際の具体的な導入事例など、DXの「いま」と「これから」、そして私たちが取り組むべきことをビジュアルでわかりやすく説く、すべてのビジネスパーソン必読の一冊です。(Amazon内容紹介より)

『トヨタ流 仕事の「見える化」大全 』(松井順一 著、佐久間陽子 著/アスコム)

トヨタのかんばん方式をホワイトカラーの実務に応用した「タスク管理」術。仕事を「見える化」する、ツール・フォーマットを100以上掲載。リアルなオフィスでもオンラインでも、アナログでもデジタルでも、どんな状況でも応用可能。業務の効率化、ムダ排除、事故防止、相互理解など、さまざまな効用がある。急速に拡大するテレワーク下こそ、仕事の「見える化」が必要。テレワークでは、仕事の我流化が進む。組織として知恵・ノウハウを共有してレベルアップすることができず、個人の能力格差は広がる。より良い仕事のやり方やツールを共有し、チーム生産性を高めてほしい。「見える化」は見えただけでは意味がなく、行動を変えさせることに意味がある。(Amazon内容紹介より)

『図解まるわかり DXのしくみ』(西村 泰洋 (著)/翔泳社)

現在、DXはさまざまなシーンで登場する言葉となっています。本書ではDX人材に身につけてもらいたいITとデジタル技術を中心に基礎知識から実用に至るまでをしっかりと解説しています。ビジネスやサービス、あるいはシステムの企画立案をするためには、技術の理解が不可欠です。そこで、本書では見開きで1つのテーマを取り上げ、図解を交えて解説しています。最初から順に読んで体系的な知識を得るのはもちろん、気になるテーマやキーワードに注目しながら読むなど、状況に合わせて活用しましょう。(Amazon内容紹介より)

『成功=ヒト×DX デジタル初心者のためのDX企業変革の教科書』(鈴木康弘 著/プレジデント社)

「DX=デジタルトランスフォーメーション」。デジタルを広く活用して製品やサービスを変革しつつ、 組織そのものを変革し、競争力を高めることです。近年、多くの企業がその重要性に気づき、DXに舵を切り始めました。ところが、DXに取り組む企業の実に「9割」が迷走しています。それは、なぜなのでしょうか? その原因は、「人(ヒト)」にあると著者は考えます。本書では、セブン&アイ・ホールディングス、ソフトバンクでDXを推進してきた著者が、DXを進めるうえで必ずと言っていいほど立ちはだかる5つの「壁」と、その解決法について、実体験を元に紹介。 (Amazon内容紹介より)

『働くことは人生だ! 君たちはどう「はたらく」か? ~AI時代の「働き方」トランスフォーメーション』(野口 雄志 著、セルバ出版)

グローバル(国際)化が進んだ現代では、変えるべき点のほうがむしろ際立っているのが実態。働く環境の改善はもちろん、新型コロナウィルス感染症が世界を襲ったことで、さまざまな制約のなかで社会を大規模に改修しなければならない。本書は、これから働きはじめる人や、すでに働いているものの働き方に悩んでいる方に向け、明日からの行動や思考の方法をわかりやすく解説。これからはさらに、不確実性の時代、多様性の時代に進んでいくが、世の中がどのような状況であっても、どのように変化しても、「働くこと」に情熱を捧げられる。そんな方々のことを、年齢にかかわらず私は心から尊敬する。(Amazon内容紹介より)

筆者プロフィール:土屋勝(ツチヤマサル)

1957年生まれ。大学院卒業後、友人らと編集・企画会社を設立。1986年に独立し、現在はシステム開発を手掛ける株式会社エルデ代表取締役。神奈川大学非常勤講師。主な著書に『プログラミング言語温故知新』(株式会社カットシステム)など。

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