業種や規模を問わず全ての企業でDXへの取り組みが急務となっている。DXへの取り組みにはビジネスや自社を変革する企業文化の醸成に加えて、DXへの取り組みを支えるITにも変革が求められる。従来の考え方で構築したITは、ビジネスや社会で広くDXが進展するこれからの世界では通用しない。ではどのようなITが必要なのだろうか。DXのインフラとなるITについて考察する。



国内企業の95%でDXが停滞

 2018年9月、経済産業省は「DXレポート」を公表し、「2025年の崖」問題を提起して企業にDXへの取り組みを促した。具体的には多くの企業が運用しているレガシーシステムが、企業の事業継続、産業や社会の発展の障害となると指摘するとともに、レガシーシステムを維持するために必要な人材が枯渇するリスクと、維持にかかるコストの無駄について説明し、2025年までにその問題、すなわち2025年の崖を克服することを企業や産業界に提言した。

 それから2年後の2020年12月、中間とりまとめとして「DXレポート2」が公表された。2025年の崖というショッキングなキーワードによって注目を集めたDXレポートであったが、DXレポート2で報告されている内容は非常に厳しい実情である。
 DXレポート公表後、経済産業省は2018年12月にDXの実現やその基盤となるITシステムの構築を行っていく上でどのようなポイントで取り組みを進めるべきなのかをまとめた「DX推進ガイドライン」を公開するとともに、2019年7月には「DX推進指標」を公表して自社のDX推進への取組状況やITシステムの現状と問題点を把握するためのガイダンス資料と自己診断ツールを提供した。

 そしてIPA(情報処理推進機構)はDX自己診断ツールの診断結果を収集し、2020年10月時点での回答企業約500社におけるDX推進への取組状況を分析し、その結果をDXレポート2で公表した。DXレポート2に掲載されている分析結果によると、分析対象企業の約95%がDXにまったく取り組めていない、あるいは取り組みを始めたばかりだったという。

 DXレポートでDXへの取り組みが急務であることを強調し、2025年という具体的な目標を示したにもかかわらず国内企業におけるDXへの取り組みは停滞しているのが実情なのだ。

「DX=レガシーシステムの刷新」ではない

 国内企業におけるDXへの取り組みが進展していない原因は何だろうか。まずDXレポートで「DX=レガシーシステムの刷新」という誤ったメッセージが伝わってしまったことが挙げられる。これはDXレポートを作成した経済産業省の担当者が認めている。

 こうした誤解の是正と国内企業のDXの取り組みを推進するべき、DXレポート2が公表され、改めてDXとは何か、何をすべきかなどが説明されている。

 DXの「D」は言うまでもなく「デジタル」である。そして「X」は「トランスフォーム」すなわち「変革」である。直訳すれば「デジタルを利活用して変革する」という意味になる。では何を変革するのか。企業や産業においては既存のビジネスであり、文化であり、仕組みや制度などだ。それらの変革のためにデジタルのテクノロジーやスペースを利活用することがDXということになる。

 ちなみに変革と聞くと既存のビジネスを否定し、新規事業を展開するような印象を受けるが、DXの対象は新規だけではなく既存も含まれることは前述の通りだ。

 経済産業省が「DX推進指標とそのガイダンス」などで公表しているDXの定義は次の通りだ。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

 つまり顧客や社会課題を起点として、デジタルを活用して既存のビジネスを変える、あるいは新たに生み出す、これらによって競争力を高めることがDXへの取り組みであると言えよう。


出所:経済産業省「DXレポート2 中間とりまとめ(概要)」(2020年12月公表)


DXが目指す変革を支えるITとは

では具体的にどのような取り組みを進めていけばDXを推進できるのだろうか。経済産業省ではDXレポート2において「DX成功パターンの策定」という項目を設けて説明している。まずDXへの取り組みを三つのフェーズに分解している。最初に紙文書等の電子化など、アナログおよび物理的なデータのデジタルデータ化を進める「デジタイゼーション(Digitization)」だ。

 デジタイゼーションへの取り組みが進むことで、次に個別の業務プロセスおよび製造プロセスをデジタル化する「デジタイゼーション」への取り組みが進められるようになる。これはコロナ禍によって急きょテレワークを実施しなければならなくなった状況下で、多くの企業が体験した事象だ。

 コミュニケーションツールなどのアプリケーションを導入してリモートワークを実践したものの、紙の文書を扱うために出社しなければならない、業務がシステム化されておらず会社で処理しなければならない、といった状況が散見された。

 紙の文書が残っていると関連する業務をシステム化できないため、デジタイゼーションを進めた上でデジタライゼーションに取り組み、広げていくというステップは容易に理解できよう、そして個別にデジタル化された業務プロセスや製造プロセスを、データを含めて組織横断で全社で連携させることがDXへの取り組みの基盤となる。この基盤を利活用して、顧客や社会課題を起点として価値を創出する活動がDXになる。

 DXレポート2にも示されている通り、「DXへの取り組みを通じて企業が目指すべき方向性は、常に変化する顧客・社会課題を捉え、素早く変革し続ける能力を身に付けること」である。変化を捉えるには収集・蓄積したデータの分析が必要となりAIの活用が有効だ。また捉えた変化に応じて変革し続ける能力、すなわち必要となるITシステムを即座に利用して対応するには、必要なシステムやツールが必要なときに、必要なだけ、即座に利用できるクラウドが欠かせない。

 もちろんITだけではDXを実践すことはできず、そこには「企業文化(固定観念)を変革することが重要」だとDXレポート2にも明記されている。ただし固定観念を変革すべき対象は企業文化だけではなく、翻ってITも同様だ。

 このシステムはオンプレミスでなければ運用できない、このデータは社外に出せない、こうした旧来の感覚でITを捉えていたのでは、DXの取り組みを支えるインフラを築くことは困難だ。今やセキュリティにおいても、可用性においても、信頼性においても、そしてコストの有利性においても、DXを推進するにあたりクラウドを活用する以外の選択肢を見出すのは困難であろう。


出所:経済産業省「DXレポート2 中間とりまとめ(概要)」(2020年12月公表)



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