Windows 11でスマートワーク

Windows 11でAndroidアプリが使える!「スマホ同期」でそのメリットを先取り


Windows 11では、Android用に開発されたアプリを直接動作させることが可能になる。まだ日本語OSではこの機能はリリースされておらず、米国での対応アプリも少ないが、将来的な期待で注目が集まっている。しかし、現状でも「スマホ同期」を利用すれば、Android連携のメリットを先取りできる。

文/石野純也


当初、メリットは限定的か

 現在、スマートフォン向けのOSを提供していないMicrosoftだが、デファクトスタンダードになったiOSやAndroidに様々なサービスを提供することでPCとの連携を強化している。「Surface Duo」や「Surface Duo 2」にAndroidを採用していることも、その象徴と言っていいだろう。Windows 11では、さらにAndroidとの連携が深まり、Android用に開発されたアプリをWindows 11で直接動作させることが可能になる。

Windows 11では、Android用に開発されたアプリが動作するようになる見込み。発表時のデモでは、Android用のTikTokが動作していた(出典:Microsoft)

 ただし、現時点では、プレビュー版のみが対象で、日本のユーザーがこの機能を利用することはできない。米国アカウントのみなどの制限があるからだ。また、Androidといっても、当初利用できるのはAmazonが提供するアプリに限定される。AmazonはKindleなど、自身で手がける端末向けに「Amazon Appstore」を提供しているが、これがWindows 11で利用できるようになる見込みだ。

 AndroidはGoogleが手がけるOSと評されることも多いが、実際にはオープンソースのOSの上に、GMS(Google Mobile Service)と呼ばれるアプリやAPIを載せ、各メーカーに提供している。このオープンソース版のAndroidをカスタマイズして、自身で運営するストアを載せた端末を開発することができる。

 AmazonのKindleは、そんな事例の1つだ。そのAmazonが手がけるAmazon Appstoreからダウンロードしたアプリが、Windows 11の上で動作することになる。Androidアプリと言っても、Googleが各メーカーに提供しているPlayストアが使えるようになるわけではない点には、注意が必要だ。アプリの数やバリエーションは、GoogleのPlayストアに軍配が上がるため、Androidアプリが動くようになると言ってもメリットは限定的になる可能性は高い。

アプリの入手先は、AmazonのAmazon Appstoreに限定される(出典:Microsoft)

ビジネス利用を考えるなら「スマホ同期」の利用が早道

 Windows側にも「Microsoft Store」があり、仕事を効率化するための各種ツールがそろっている。どちらかと言えば、Amazon AppstoreはAndroidならではのゲームに重きが置かれている印象を受ける。Windowsでこうしたゲームアプリを直接遊べるようになるのは魅力的ではあるものの、ワークスタイルに与える影響は未知数と言えるだろう。

 むしろ、現時点ではAndroidを搭載したスマートフォンとWindowsを組み合わせて使う方が、仕事をする上で役に立つことが多い。Windowsに標準搭載されている「スマホ同期」というアプリを使うと、そんな連携が実現する。スマホ同期は、Windows 10から搭載されている機能だが、Windows 11ではユーザーインターフェイスが一新される予定。Androidスマートフォン側で受けた通知をWindowsで表示・管理できたり、SMSを読み書きすることができたりするのが主な機能だ。

Windows 10以降のWindowsに標準搭載されているスマホ同期アプリ

 例えば、最近では、Webサイトへログインするためのパスワードを廃し、SMSに都度、認証コードを送るようなサービスがある。このようなサイトにWindows PCからアクセスしようとすると、ログインのためのボタンを押し、Androidスマートフォン側に届いたSMSを確認してから、再び手をキーボードに戻して認証コードを入力する必要がある。パスワードを覚える手間はなくなる一方で、ログインのたびにわざわざスマートフォンを操作しなければいけないのは面倒だ。

 スマホ同期アプリを使えば、Androidスマートフォン側の通知がWindowsの通知として表示される。SMSの中身を見ることもできるため、PCのキーボードやマウスから手を離すことなく、そのままログイン用の認証コードを入力できる。SMSに返信しなければならない場合も、スマホ同期アプリから直接発信することが可能。通話もWindows PCから直接でき、PCに向かっているときに、わざわざスマートフォンを手に取る機会が激減する。

Androidスマートフォン側に送られてきたSMSの中身を、Windows PCでチェックできる。ログインにSMSを使っているサービスを利用する際に便利だ

 サムスン電子のGalaxyシリーズ限定だが、スマートフォン側にインストールしたアプリをWindows PC側から遠隔操作できる機能も備わっている。あくまでミラーリングでWindows PC側にアプリの映像を表示させているだけだが、さながらWindows上でAndroidアプリを起動しているかのように見える。応答速度に限界があるため、ゲームなどのアプリをプレイするのには向かないが、SMS以外の通知の中身を確認する際に重宝する機能だ。

スマートフォンが一部のGalaxyの場合、PC側からアプリを起動できる

 スマートフォン側のLINEに届いたメッセージを見たり、PCから決済アプリにあらかじめ残高をチャージしておけたりと、Windows PCでできることの幅が広がる。雑誌が読み放題になるdマガジンのように、Windowsに対応していないアプリをPC上で直接操作できるのも、この機能の魅力だ。Android側がGalaxyシリーズに限定されているのが難点だが、対応端末を持っているユーザーは試しておいて損のない機能と言えるだろう。

スマホにしか対応していないアプリをPC上で直接動かせるのが、この機能の魅力だ

 Windows上でAndroidアプリが動くようになれば、このようにWindowsに対応していないアプリをPC上で直接操作できるようになる。スマホ同期でアプリを遠隔操作する機能は、その“予行演習”とも言えるだろう。現時点ではAmazonのAmazon Appstoreにしか対応しないが、Windows 11上でAndroidアプリが動くようになり、ユーザー層が広がるとなれば、Play Store版からの移植が増える可能性もある。アプリ自体は同じAndroid用のもので、Amazon Appstore向けにカスタマイズするだけでいいからだ。

 Windows 11でAndroidアプリが動くようになっても、すぐにそのメリットは実感しづらいかもしれない。一方で、将来、Windows 11で動かすことを前提にしたアプリがAmazon Appstore側に増えていく可能性はある。長期的な視点で見れば、アプリのエコシステムが拡大するのは、Windows 11のユーザーにとってのメリットと言えるだろう。

筆者プロフィール:石野純也

ケータイジャーナリスト/ライター。出版社で携帯電話関連のムック編集や立ち上げに携わったあと独立。IT関連専門媒体から経済誌、新聞等、幅広い媒体で執筆を行う。主な連載メディアはITmedia Mobile、毎日新聞経済プレミア、Engadget日本版、東洋経済オンラインなど。

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