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第13回 ユーザーエクスペリエンス(UX)


ユーザーを知り、ユーザーに価値をもたらす体験を提供

ウェブサービスやスマホアプリなどを選択する際、ユーザーエクスペリエンス(UX)が重視されることが増えています。製品やサービスをユーザーが選ぶときに、機能やスペック、価格だけでなく、UXが良いかどうかはますます大切になっています。UXとは何か、UXを向上するにはどうすればよいのか、その考え方について解説します。

文/ムコハタワカコ


「UX」の意味、「UI」「ユーザビリティ」との違い

「ユーザーエクスペリエンス」(User eXperience:UX)は「ユーザー体験」とも呼ばれ、製品やサービスなどを利用した際にユーザーが得られる体験や感情のことを指します。ユーザーがある製品のデザインを見たときの印象、使ったときの使い心地、使った後に感じた気持ち、ウェブサイトを利用した際の使い勝手や説明の分かりやすさへの感想、ECサイトを利用した後で商品が届くまでの案内に対する感情や、梱包や配送の状態に対する感想など、「そのサービスに触れた瞬間からサービスが完了するまでのすべての体験」がUXにあたります。

Web上のサービスやパソコン、スマートフォンなどのデバイス、アプリケーションにおいて、ユーザーエクスペリエンスはしばしば「ユーザーインターフェース」(User Interface:UI)とセットで語られます。UIは製品やサービスとユーザーとの接点(インターフェイス)のことで、製品・サービスのデザイン性、操作性などを総合的に表す言葉です。UIはUXを構成するひとつの要素で、UIの良しあしだけでのすべてが決まるというものではありませんが、より良いUXを生み出すためには優れたUIが不可欠となります。

もうひとつ、UXと一緒に挙げられることが多い言葉に「ユーザビリティ」があります。ユーザビリティとはユーザーから見た製品やサービスの有用性、使いやすさそのものを指す言葉です。一方UXは、製品・サービスのユーザビリティの結果として得られる、使い心地、感想、体験全体を表します。直感的に簡単ですばやく使える、ユーザビリティの高い製品・サービスは、優れたユーザー体験をもたらします。

UXはどのような要素によって決まるのか

UIはUXを構成する一要素だと先ほど説明しましたが、どういった要素によってUXの良さは決まっていくのでしょうか。もう少し詳しく考えてみましょう。

まずは「見た目」「ビジュアルデザイン」が要素として挙げられます。デザインが美しいことは、ユーザーの製品・サービスへの印象を高めます。しかし、どれだけ「かっこいい」「きれいな」「かわいい」デザインであっても、使い方が分かりにくかったり、ユーザーの目的を果たせなかったりすれば、その製品・サービスのUXは良いとは言えないでしょう。

そこで重要となってくるのが、UIです。製品・サービスの使いやすさ、直感的な操作のしやすさ、ウェブサイトやアプリなどでのメニューの見つけやすさ、覚えやすさや、処理の速さ、デジタルデバイスの触感や使用感の良さなど、ユーザーとの接点となるUIをどのように設計するかは、UXの良しあしに大きく影響します。

またユーザーが安心・安全に使えるかどうか、機能がユーザーの目的を果たせているか、十分な性能を持っているか、価格はユーザーの懐具合やコスト感と合っているか、といったさまざまな条件もUXの優劣を決める要素となります。

テクノロジーの進化や時代の変遷により変わる優れたUXの条件

こうして見てくると、実はUXの良さを決める大きな要素がもうひとつ、あることに気づきます。それはユーザー自身が、どのようなコンテクストにおいて製品やサービスを利用しようとしているのかという点です。

UXを向上するには、製品・サービスの品質やデザインなどを良くすることだけでは不十分です。製品・サービスが「ある時点」の「あるユーザー」にとって、利便性があって直感的に使いやすく、求めていた機能を持ち、円滑に利用できて、信頼性が高く、容易に見つけられるかどうか、言い換えれば「価値があるかどうか」を検討することが重要になります。同時に対象となるユーザーのみならず、時代背景や周辺環境なども考慮する必要があります。

同じ製品・サービスを同一ユーザーが利用していても、ユーザーが得られるUXは時代の移ろいにより変化します。したがって常にユーザーに価値を与えるプロダクトであるためには、製品・サービスの改善を行い続ける必要があります。近年、製品・サービスの提供形態として広がっている「サブスクリプション」型のビジネスでは、ずっとユーザーに利用し続けてもらうためにプロダクトの継続的な改良が前提となっているものが多くあります。

今後も優れたUXの条件は、テクノロジーの進化や世の中の情勢に応じて変わり続けることでしょう。たとえば最近、話題に挙がることが多くなった「メタヴァース(Metaverse)」。インターネット上に存在する仮想空間の利用が広がれば、当然、それに応じたUXの検討が必要になるはずです。

優れたUXを実現するためにはユーザーの持つ背景も重要

デジタルネイティブ世代のユーザーがスマートフォンやアプリ、デジタルサービスに対して持つ印象と、彼らの祖父母世代がそれらの製品・サービスに持つ印象は全く異なるため、同じようにUXを語ることは困難です。また世代が同じでも、たとえばECサイトでクレジットカード情報を送信するのは嫌だから代引きしか利用しないという人もいれば、毎回カード番号を入力するのは面倒なので事業者側で保存しておいて欲しいという人もいて、安心・安全と利便性の基準もさまざまです。

製品や商品の外装にしても「より丁寧で高級感がある方がいい」という人と「過剰な包装はやめて最小限のパッケージにして欲しい」という人がいる上に、同じ人であっても高級食器の梱包と文庫本を配送するための梱包とでは求めるクオリティは異なるはずです。

また時代の変遷によって、あるテクノロジーが当たり前になり、安全性や利便性が高まれば、そのテクノロジーを使った製品・サービスのUXは同じ人でも変容します。通信などはその分かりやすい例です。郵送から電話・FAX、メール、そしてチャットへと通信方法が進化する過程で、かつてはビジネス上のやり取りには使うのがためらわれた手段でも、速さや確実性が認められて利用が広がっています。これはユーザーにとって、以前からある手段より新しい手段の方が、良い体験が得られると考えられるようになったことによるものです。

優れたUXは、製品・サービスのデザインやUI、機能性などに加えて、ユーザー自身が目的を果たしたという達成感や安心感、うれしさ、また使いたいという意欲などの「ユーザー価値」によってもたらされるものです。そこには、ユーザーがどのような背景を持つ人で、製品・サービスをこれまでにどう使ってきたかということも大きく影響するのです。

筆者プロフィール:ムコハタワカコ

書店員からIT系出版社営業、Webディレクターを経て、編集・ライティング業へ。ITスタートアップのプロダクト紹介や経営者インタビューを中心に執筆活動を行う。派手さはなくても鈍く光る、画期的なBtoBクラウドサービスが大好き。うつ病サバイバーとして、同じような経験を持つ起業家の話に注目している。