AWS TRAINING COURSE
---LESSON 02---

AWSを理解するための
最初の基礎知識グローバル
インフラストラクチャー

本連載では読者のビジネスに役立つクラウドやAWSに関するテーマについて、楽しみながら知識と情報を習得できる内容で進めている。今回はアマゾン ウェブサービス ジャパン(AWSジャパン)でパートナーアライアンス統括本部 テクニカルイネーブルメント部でパートナーを育成するための活動に携わる髙橋敏行氏を講師に迎えた。テーマはAWSを理解するための最初の基礎知識となるグローバルインフラストラクチャーについて。

面倒なデータベースシステムが
数クリック、数分で構築できる

講師:
アマゾン ウェブ サービス ジャパン
パートナーアライアンス統括本部
テクニカルイネーブルメント部
髙橋 敏行氏

 講師を担当しますAWSジャパンの髙橋です。前職ではデータベースのエンジニアをしてまして、オンプレミスのデータベースサーバーを扱っておりました。一般的にデータベースは企業システムの根幹で、重要なデータを扱うことが多いので壊れたり停止したりすることが許されません。そのため通常は複数のサーバーで冗長化するのですが、これがなかなか大変でうまくいかないことも多いのです。

 AWSにはAmazon RDS(Amazon Relational Database Service)というサービスがあり、リレーショナルデータベースが容易に扱えます。何を隠そう私が初めて触ったAWSのサービスがAmazon RDSだったのですが、ビックリしました。今まで苦労して構築していた部分が、数回のクリックだけでデータベースが使える形で立ち上がるのですから。しかも複数のアベイラビリティーゾーンにまたがって2台の冗長化された状態で使えるようになっているんですよ。驚きました(冗長化は設定で選ぶことができます)。

 ここで大切なキーワードが登場しました。アベイラビリティーゾーンです。実はAWSを理解する上で、このキーワードは重要な知識の一つなのです。

グローバルに展開するサービス基盤
リージョンとアベイラビリティーゾーン

 世界中で利用できるAWSサービスの基盤となるのがグローバルインフラストラクチャーです。その中でも覚えていただきたいキーワードが二つありまして、先ほど出てきたアベイラビリティーゾーン、そしてリージョンです。今回は、このキーワードを解説します。

 AWSのサービスは世界中で利用できるのですが、実際は2021年1月末時点で24の地域で使えます。この地域のことをリージョンといいます。

 またリージョンはデータセンターが集積されている世界中の物理的な場所のことを指し、専用のネットワークによってつながっています。ちなみに日本には東京リージョン、アメリカにはオレゴンリージョンやカリフォルニアリージョン、アジアにはシドニーリージョンやシンガポールリージョンなどがあります。

 AWSのサービスを利用するにはそれぞれのリージョンごとに契約が必要なのかとよく聞かれますが、AWSのアカウントが一つあれば、基本的にはどこでも利用できます。クリック操作でリージョンを切り替えて使えます。

 次にアベイラビリティーゾーン(AZ)についてです。AZはリージョンの中に存在します。別掲の図1を参照ください。AZとは一つ以上のデータセンターがネットワークでつながったデータセンター群です。皆さまがAWSでサーバーを立ち上げると、AZの中で起動します。使う側としてはAZの中について、全く気にする必要はありません。

 冒頭で触れたAmazon RDSはAZをまたがってサーバーが起動すると話しました。まさにこのデータセンター群の中でデータベースが起動したということだったんですね。ここでもう一つ気になるキーワードが出てきました。「またがって」という言葉です。この言葉を理解するには、リージョンの内部を知る必要があります。

 図2がリージョンの構成イメージです。リージョンとは「AWSが使えるデータセンターが集積されている物理的ロケーション」であり、「複数の物理的に異なるAZが互いにネットワークでつながっている構成」のことです。ですからAZはリージョンに内包されているんですね。

 図2では三つのAZがそれぞれ独立して描かれていますが、実際のAZも数㎞~100㎞で物理的に離されて設置されており、電源などのインフラも分離されています。

24のリージョン内に77のAZを展開
15個のAZと五つのリージョンを追加

 データセンターは一つあればシステムを稼働させられます。一方、AWSの定義では互いに独立したデータセンター群のAZを、専用のネットワークで接続した構成がリージョンでした。

 このような独特の構成を採用している理由は、高度な可用性の実現です。言うまでもなく日本は地震や台風、豪雨といった自然災害が比較的多い国です。さらに停電や落雷といったリスクは地球上の至るところに存在します。地球上にいる限り、こうしたリスクをゼロにすることは不可能と言わざるを得ません。

 そこで複数の異なるAZを距離を離して設置して互いに連携させておけば、一部のAZが自然災害で被災してもほかのAZは影響を受けることなく、リージョン全体としてサービスを継続して提供することができるというわけです。改めて冒頭にAmazon RDSはAZにまたがって冗長化されて利用できると話しましたが、つまり距離が離れたデータセンター群にまたがって冗長化されているということなのです。

 AWSでは全てのサービスがAZとリージョンの概念に基づいて設計されています。中には三つのAZをまたがって自動的にコピーを行うサービスもあります。こうしたサービスについても、また今後の連載で紹介していきますのでお楽しみに。

 今回はリージョンとAZを解説しました。リージョンは地理的に離れたAWSの使える地域で、複数のAZで構成されています。そしてAZはデータセンター群です。なおリージョンによってAZの数は異なっています。世界的には三つのリージョンが多いのですが、東京リージョンは四つのAZで構成されています。

 そして2021年1月末現在、24のリージョン内に77のAZを展開しています。今後はインド、インドネシア、日本、スペイン、およびスイスに15個のAZと五つのリージョンを追加する計画も発表しています(https://aws.amazon.com/jp/about-aws/global-infrastructure/)。