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DaaS
Market

従業員一人当たりのIT投資額への意識を醸成

DaaSの実際の需要はどうか。参考になるのがMM総研の調査だ。これまでに2回実施されたDaaS関連の調査結果や現在の市場動向について、MM総研の中村成希氏(同社 執行役員 研究部長)の見解を聞いた。

「DaaSを利用したい」の回答が18%

MM総研
中村成希氏

 少し古いデータになるが、2年前の2019年2月にMM総研は、国内の中堅中小企業(国内に拠点を持つ従業員1~999名の法人)を対象にしたDaaSの利用意向に関する調査結果を発表している。当時はWindows 7 EOS(2020年1月14日)によるWindows 10への移行がまだ進行していた背景もあり、DaaS導入への契機となるPC利用時の課題として「PCの入れ替え」に着目している。

 調査結果は左頁のデータ1の通り。PC入れ替え時の課題として、「新しいPCへのデータの移行」「ハードウェアの選定」「OS・ソフトウェア・アプリケーションの選定」などが上位に並んでいる。こうした課題を聞いた上で、新デバイスの配布時に個人設定やアプリケーションの配布、データ移行などの環境移行が自動化できるDaaSの利用意向を聞いた結果として、「利用したい」が9.2%、「金額次第では利用してもよい」が57.8%となった。支払ってもいい月額の金額帯については、6,000~8,000円/台と考えているユーザーが多いことも判明した。

 MM総研はさらに2019年12月~2020年1月にかけて医療、接客、運輸、倉庫、飲食業など現場で業務を行うファーストラインワーカー市場におけるDaaSの利用意向の調査も行っている(対象は従業員1~1,000名の国内中堅中小企業)。顧客へのサービス品質の向上やAI活用を目的としたデータ収集のためのデジタル化が進行している現場においても、as a ServiceとしてのDaaSのメリットが生きるとMM総研は見ているからだ。

 実際の調査結果では、DaaSの利用意向は「利用したい」が18%、「金額次第では利用してもよい」が51%となった。支払ってもいい月額の金額帯については、3,000~4,000円の低価格帯も視野に入れる必要があるとMM総研は指摘している。「全業種合わせて推計で約2,600万人(MM総研推計値:2016年)が従事している現場業務、ファーストラインワーカー市場においても、PCのサービス化による効率化やクラウド活用によるデジタル化などの需要は高いです。DaaSを利用したいという回答が全般業種を対象とした結果よりも7ポイントも高くなっている点からも、潜在ニーズが伺えます」(MM総研 中村氏)

ハイスペックのデバイスが選びやすくなる

 デジタル化による生産性の向上が企業の課題として追求されてきた中で、PCに対する投資はやや疎かにされてきたと中村氏は話す。「日本の企業におけるPCのリフレッシュサイクルは欧米と比較して長く、相対的に性能が低下したPCが利用されているケースが少なくないでしょう。従業員一人ひとりの生産性を高めるためには、PCへの投資を改めて見直すべきです」

 こうした背景において、PCの運用管理や入れ替え時のデータ移行といった課題の解決だけでなく、デバイスとソフトウェアのサイクルをそろえたりできるDaaSは、業務に最適なデバイスとアプリケーションを短期間のリフレッシュサイクルで従業員に提供できる環境構築をサポートする。

「DaaSの本質的な魅力としては、ハイスペックのデバイスを月額課金のコストで利用できる点にもあります。これまではノートPCといっても持ち運びを前提としない低価格帯の製品が多く採用されてきました。しかし、DaaSを活用すれば、持ち運びを前提としたハイスペックのモバイルノートPCも選択しやすくなります。月額のサブスクリプションは、従業員一人当たりのIT投資額の視点も喚起しますが、その投資額が充実しているほど、仕事がしやすく魅力的な会社と捉えられるはずです」(中村氏)

 MM総研は中堅中小企業におけるDaaSのシェアについて、2020年12月の時点で30%を超える予測をしていた。ただし現状ではそうしたシェアには至っていない。「30%でも保守的な見込みだと考えていました。企業システムの環境は、クラウドサービスとインターネットの利用が前提になってきています。それらの条件で仕事をするためには5GやLTEモジュールを搭載したモバイルPCの活用が不可欠です。そうした最新のデバイスを低コストで従業員に配備するためにはサブスクリプション型のDaaSが適しているでしょう。コロナ禍において改めてエンドポイントデバイスであるPCの性能と生産性への注目が高まっている中で、DaaSという選択肢の検討は増えていくはずです」(中村氏)