業種を問わず普及が拡大するRPAの最前線を紹介

2016年ごろから日本市場に登場し、高い注目を集めたRPA。現在、成熟期に入っているという指摘も多いRPA市場だが、コロナ禍で新規の導入が増えたり、AIと組み合わせた活用が進んだりしたことで、これまで以上に多様な業種で、なくてはならない働きをするように運用が変化してきている。人に変わって労働を担う「デジタルレイバー」(仮想知的労働者)の存在が、さまざまな現場で浸透してきているのだ。RPAを取り巻く需要の変化と、AIを組み合わせることで生まれるさらなる価値にフォーカスしながら、デジタルレイバーで変わりゆく会社の姿を展望していこう。

企業での活用浸透率が上がり
RPA市場は横ばいながら拡大

Market

人間がPC上で行っていた作業を、人間に代わって行うソフトウェアロボット「Robotic Process Automation」(以下、RPA)。2016年ごろから広まったRPAツールは、徐々に利用が拡大し、2021年には活用が本格化している調査結果が出ている。この「RPA国内利用動向」について調査したMM総研に、現在のRPA利用の最新動向を聞いた。

MM総研
研究主任
高橋樹生 氏

 MM総研が2021年1月に実施した「RPA国内利用動向調査」によると、年商50億円以上の企業のRPA導入率は39%(2020年度末)と、2019年度末の前回調査時点から大きな変化は見られなかったという。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの企業でIT機器やサービスの導入が進んだが、それらの多くはWeb会議システムやグループウェア、ネットワークの再構築、セキュリティ対策といった在宅勤務の環境構築に関連するものだった。そのため、調査においてはRPAを新規導入した企業数は増えなかったと推測された。準備中・検討中企業の割合も9ポイント下落した。

 一方、すでに導入している企業でのRPAの活用度合いは向上した。この状況を、MM総研の高橋樹生氏は「使う企業数こそ変化はありませんが、活用の浸透率が上がっているとみています」と指摘する。

 年商50億円未満の企業はどうか。2021年1月時点の調査では2020年度の導入率は11%と、前述した年商50億円以上の企業とは大きな差が生じている。しかし、2018年度末の6%、2019年度末の9%から横ばいながら徐々に導入率は拡大しており、2022年度末時点での導入率は28%まで拡大すると予測されている。

 また、民間企業とは異なる導入の動きとして、自治体が挙げられた。自治体は、2018年度末時点では年商50億円未満の民間企業と同様、6%の導入率だったが、2019年度末には27%まで上昇。2020年度末には61%と過半数を超えている。

 この背景について高橋氏は「2020年12月25日に、『自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画』が策定されるなど、自治体DXに向けた動きが活性化しました。交付金があることに加え、自治体の業務は地域が変わっても大きな差は生じません。そのため、一つの自治体で使われたRPAのロボットを横展開し、ほかの自治体で使われるケースが増加しました。2021年度5月に行った追加調査の段階では導入率は67%とさらに拡大しています」と導入傾向を指摘する。

 RPA導入企業の多くでは、その他の先端IT技術の取り組みも進む傾向にある。例えばOCR(光学文字認識)にAIを組み合わせた「AI-OCR」は、さまざまな手書きの文字を識字率高く読み取るだけでなく、フォーマットが異なる帳票にも柔軟に対応できる。RPA導入企業では、このAI-OCRの導入が16%とキャズムに達しているほか、RPA導入の準備中・検討中の企業でも52%が導入するなど、高い割合で活用が進んでいる。また、AIチャットボットもRPAと組み合わせて利用する事例が増えており、AIとRPAを連携して、非定型業務から定型業務までをトータルで自動化する活用が増加傾向にあるようだ。

 一方で高橋氏は警鐘も鳴らす。RPA導入企業はAI活用率が76%と非常に高い一方で、未検討の企業は6%と低いのだ。こうした二極化の動きは、企業のデジタル活用全般に言える。高橋氏は「RPAユーザーはデジタルに対する好循環が生まれ、時間とともに浸透度を上げていきます。一方、導入していない企業は依然人による手作業が主体で、生産性は変わりません。これが将来的には、企業間の生産性や売り上げに大きく差を開いていく要因になるでしょう」と指摘する。

 こうした企業間の差を解消していくためには、RPA未導入の企業へ訴求を広げ、デジタル活用をより進める必要がある。デジタルに対する好循環を生み出すため、未導入企業へのRPA提案を進めていきたい。

コロナ禍でRPAの認知高まり
幅広い業種での活用が浸透

RPA Tools

RPAツールを提供するNTTデータ、RPAテクノロジーズ、Blue Prismに話を聞くと、コロナ禍に入ってからテレワークが拡大したことで、RPAの需要は増えたと口をそろえる。実際に導入社数にも変化が表れているだけでなく、デジタルトランスフォーメーション(DX)実現に向けて業種を問わない導入も進みつつあるようだ。RPAツール提供ベンダーの視点から、現在の動向とRPAとAIを組み合わせたデジタルレイバーの進化を見ていこう。

NTTデータ

リモートのチーム作業に有効

NTTデータ
社会基盤ソリューション事業本部
ソーシャルイノベーション事業部
デジタルソリューション統括部
RPAソリューション担当
課長
鈴木秀一 氏

 2010年にNTTの研究所で生まれたRPAツール「WinActor」。2016年より一般企業への販売がスタートした本ツールは、多くの企業が取り組む働き方改革の潮流にマッチしたことで、広く普及している。直近の導入傾向について、NTTデータの鈴木秀一氏は、「コロナ禍では、多くの企業がRPAではなくリモートワークを実現するための環境構築に予算が割り当てられ、RPAの導入検討は一度ストップしたケースもありました。一方ですでに導入していた企業などは、リモートでコミュニケーションが取りにくい中、RPAを活用することで自動化し、チームコミュニケーションの円滑化に生かすといった活用が広がりました。それによってRPAのキーワードがこれまでよりも認識され、訴求力が高まっていると感じています」と語る。

 WinActorの特長は、ITに精通していない業務担当者でも、ライブラリに用意されたパーツをドラッグ&ドロップで組み合わせることで、ロボットの動作シナリオを作成できる点にある。操作する対象はWebブラウザーからデスクトップアプリまでさまざまだ。

 WinActorはPCにインストールして使うデスクトップ型だが、サーバーにインストールして使うサーバー型PRA「WinDirector」も用意されている。またクラウド型の「WinActor Manager on Cloud」も提供している。クラウド型は特に大規模導入などで需要が高い。

他社RPAツールとの共存も可能

NTTデータ
社会基盤ソリューション事業本部
ソーシャルイノベーション事業部
デジタルソリューション統括部
RPAソリューション担当
主任
大久保泰斗 氏

 WinActorは、主に大規模な金融機関で導入されているほか、自治体での導入も伸長している。その背景にあるのもまた、コロナ禍だ。NTTデータの大久保泰斗氏は、「コロナ禍で自治体は特別定額給付金など、住民からの膨大な申請手続きを処理する必要がありました。そうしたシーンに、WinActorによる業務自動化は非常に有効でした。当社は『コロナ対策応援プロジェクト』としてWinActorを使用した自動化ソリューションを特別定額給付金支給業務限定で無償提供しました。これにより、大都市圏だけでなく北海道から沖縄まで幅広い自治体で、WinActorが使われるようになりました」と話す。

 また、その特別定額給付金支給業務で使われたのが、紙資料をデジタルデータ化するAI-OCRサービス「NaNaTsu AI-OCR with DX Suite」との組み合わせだ。

「AI-OCRとRPAの組み合わせは、業種を問わず導入が増えています。マウス操作の単純なシステム導入だけでなく、大きく抜本的にペーパーレス化を進めるためには、紙を扱っている領域も改善していく必要があります。手書きの書類をテキスト化してくれるAI-OCRは、そうしたニーズに非常に相性が良く、金融業界などでも導入が進んでいます」と鈴木氏は語る。

 また、医療業界でもRPAの導入は拡大しているという。現場で使いやすいRPAツールとして利用が拡大している背景には、前述した使いやすいUIのほか、完全日本語対応で混乱せずに運用ができる点などがある。また、WinActor以外のRPAツールと共存して使うことも可能だ。鈴木氏は「例えば最近、マイクロソフトが自社のRPAツール『Power Automate』を無償化して業界に衝撃が走りました。WinActorは、このPower Automateとも共存できるほか、双方で作成したシナリオを共有できます。お客さまのDXを支援するため、共存して最適な組み合わせで運用できるようにしています」と話す。

 販売パートナーへのサポートも充実している。販売促進支援システムとして、技術視点のサービスやインサイドセールスの支援、特約店同士のビジネスマッチングキャンペーンも実施する。エンドユーザーにはユーザーフォーラムを用意しており、トラブルが発生した場合でも3万5,000ユーザーの知見から迅速に問題を解決することが可能だ。鈴木氏は「RPAツールの導入は、自分たちの業務を整理する良い機会になります。これまで感覚で行ってきた業務を棚卸しし、WinActorでロジカルに整理することは小学校などで実施されているプログラミング教育のような、ITスキル教育にも近いかもしれません。すでに使える人だけでなく、幅広くさまざまな人に使える素養を持っている技術群と言えるでしょう」と、その可能性を語った。

RPAテクノロジーズ

ニーズに応じた三つの選択肢

RPAテクノロジーズ
Marketing Division
部長
LX Division
中四国エリア営業責任者
吉岡直哉 氏

 RPAテクノロジーズはRPAツールとして「BizRobo!」を提供している。BizRobo!は誰でも気軽に使い始められることが特長のRPAツールだ。「低コストで無制限にスケールできる」をキャッチフレーズに、さまざまな企業で活用が広がっている。

 その「低コスト」を実現しているのが、導入企業に合わせた柔軟な製品体系だ。BizRobo!シリーズでは、「BizRobo! mini」「BizRobo! Lite」「BizRobo! Basic」という三つの製品をラインアップしている。

 BizRobo! mini(以下、mini)は、まずRPAを利用してみたいというユーザーに最適な製品だ。いわゆるPCにインストールするだけで使えるデスクトップ型のRPAツールで、スモールスタートでRPAを導入できる。別売が多いスケジュール実行機能を標準搭載しているため、従業員が不在の時間帯にロボットを稼働させることも容易に行える。特に個人単位の業務や、規模が小さな企業、部門単位での業務を自動化する際に適した製品だ。

 BizRobo! Lite(以下、Lite)とBizRobo! Basic(以下、Basic)はサーバー上にロボットを展開するサーバー型のRPAツールだ。BasicはLiteのフル機能版の位置付けとなる製品で、Liteでは制限されているロボットの同時実行数や開発者数に制限なく使える。それ以外の機能は同一で、高機能の管理コンソールを標準で実装しているほか、Webブラウザーからのロボット実行にも対応し、開発者を含めたマネジメントが可能な製品と言える。スモールスタートから全社展開まで、幅広い製品ラインアップで対応しているのだ。

 BizRobo!シリーズのロボット開発はローコードで行えるため、現場のスタッフが簡単に開発できる。そのため幅広い企業規模や業種で活用が進んでいるが、直近では特に医療機関や自治体での活用が広がっているという。「製造業でも活用が進んでいます。特に部品の調達や管理といった受発注の用途でBizRobo!のロボットが活躍していますね。システム開発と異なり、現場視点でロボットが作れるため“業務改善”というキーワードで導入が進むケースが多くあります」とRPAテクノロジーズの吉岡直哉氏は指摘する。受発注業務では小売店でも活用が進んでいるという。

AI+BPOで作業時間を削減

RPAテクノロジーズ
Customer Inspire Division
部長
和田慎也 氏

 RPAを利用するハードルの一つに、手書き帳票のデータ化がある。同社ではAI insideのAI-OCR「DX Suite」と365日サポートを組み合わせた製品「BizRobo! OCR with AI inside」も提供しているほか、このAI-OCRとBPOサービスを連携することで工数を大幅に削減する「デジパス」によって、大幅な業務時間の削減を提案している。精度が高いAI-OCRでも一部の文字が読み取れないことがあり、その修正作業は人が行う必要がある。デジパスは、そうした修正作業をオペレーターが引き受けるハイブリッドBPOサービスで、利用することで作業時間が70%削減した事例もあるという。

 RPAテクノロジーズの和田慎也氏は「デジパスは5月末にリリースした製品で、これからさらに導入が伸びていくことが予想されています。また紙の帳票自体をなくして完全にペーパーレス化を進める『BizRobo! Paper-free』も用意しており、介護業界や自動車ディーラーに導入が広がっていますね」と語る。

 エンドユーザーや販売パートナーへのサポートも拡充している。特にエンドユーザーへのサポートは、ITに詳しくないユーザーにも理解がしやすいよう、専門用語をあまり使わないラーニングコンテンツなどを無償で提供している。また、販売パートナー向けの勉強会も実施しており、特定業界が有するニーズについて、販売パートナー向けのインプットを行っている。

 吉岡氏は「当社は現在、デジタルレイバーを活用して地域や特定業界のビジネス活性化や雇用創出を推進する『ローカルトランスフォーメーション(Local Transformtion)』を支援しています。このデジタルレイバー活用に向けて、RPAツールであるBizRobo!だけでなく、AI-OCRやBPOサービスを組み合わせることで、デジタルレイバーを生み出すベーステクノロジーを創出し続けています。当社のテクノロジーで地域や特定業界のデジタル化をこれからも支援していきたいですね」と語った。

Blue Prism

企業利用に適した三つの特長

Blue Prism
マーケティング本部
本部長
執行役員
延原黄司 氏

 Blue Prismが提供するRPAツール「Blue Prism」は、企業のビジネス利用に適した提供形態と機能を有した製品だ。

 Blue Prismの延原黄司氏は「Blue Prismはサーバー型で運用するRPAツールです。このサーバー型のRPAツールの良さは、運用管理の負担が少ない点にあります。よくあるデスクトップ型RPAは、個々のPCにインストールして稼働するため、例えばそのロボットが操作するシステムに変更が入った場合、ロボットを1台1台修正してその変更に対応する必要が出てきます。当社のBlue Prismはこうしたロボットをサーバーで一括管理できるため、変更が必要になっても対応がしやすく、運用コストが抑えられると好評です」と語る。

 企業利用に適したBlue Prismの特長について、延原氏は「セキュリティ」「内部統制」「安定稼働」の三つを挙げる。

 まずセキュリティだ。Blue PrismはRPAに関わる全てがデータベースで一元管理されている。データは暗号化されており、セキュリティが担保されているほか、全ての操作にはログインが必須だ。また、Blue Prismはもともと金融機関で利用することを想定して作られた製品のため、権限設定を非常に細かく設定できる。組織や役割に応じた、詳細な操作権限管理が行える点も嬉しいポイントだ。

 次に内部統制だ。Blue Prismでは実行状況や実行結果を一元的に管理する。自動化定義の変更履歴やログイン履歴、設定変更履歴なども詳細に記録し、悪意のある内部の人間はロボットを悪用することでデータを窃取するようなリスクを低減できる。

 日常的にRPAを利用する上では、安定稼働ができる点も重要だ。処理したい業務の順序保証、並列処理、排他制御などを行い、安定的な稼働を実現する仕組み(ワークキュー)で、安定的な稼働をサポートする。また、スケジューラーと組み合わせて、エラーで停止しても停止したところから自動的に再実行する仕組みや、障害時に自律的に回復をする設計を行っている。

IT部門と業務部門が連携

 一元管理に適した特長を有するBlue Prismは、特に大企業での導入が進んでいる。請求書の調達といったバックオフィス業務で利用されるケースが非常に多く、企業の業務負担低減につながっている。「最近は製造業での導入も増えてきています。研究開発や設計段階で、素材が少しずつ違う部品を実際に生成するのではなく、大量のデータを使ってシミュレーションするような用途で活用されています。また、RPA単体だけでなくAIチャットボットや画像認識と組み合わせた運用も目立っています。AI-OCRの利用率も高く、業務を問わず使われている手書きの資料をAI-OCRで読み取り、RPAで処理させる活用が増加していますね」と延原氏。

 サーバー上で運用し、一元管理に適したBlue Prismは、多くの場合IT部門でロボットを開発し、業務部門で利用する。一方でIT部門だけでは、業務プロセスが分からず十分な活用が行われないケースも存在する。そこで現場では業務プロセスのみを作成し、必要なプログラムをIT部門で行うという分業のケースが増えてきているという。社内だけではサポートできない部分はSIerが参加したり、開発案件として外注しているケースもある。

 また、サーバー型だけではサポートしきれないニーズをカバーするため、デスクトップ型の「Blue Prism Desktop」も提供している。延原氏は「例えばマイナンバーを扱うシステムは、専用の部屋の専用のPCから操作する必要があります。経理なども入金操作は特定端末でなければいけません。そうした特定端末の業務をカバーするために、Blue Prism Desktopをリリースしました。もちろんセキュリティなどはサーバー型と同様に担保されており、安心して定型業務の自動化に活用できます」と語る。

 間接販売100%で展開しているBlue Prismは、パートナー支援も充実させている。現在リセラー契約を結んでいる23社には、全て担当営業が付き、どのように販売していくかを伴走してサポートしている。また、売上に応じたマーケティング資金を提供するマーケティングファンド(MDF)も提供し、販売パートナーのビジネスを強力に支援している。

中小企業の活用を定着させるには
パートナーからのサポートが重要に

Support

RPA市場はすでに安定期に入り、横ばいながら堅調に拡大しつつある。一方で、導入している企業としていない企業、活用している企業としていない企業といった二極化も進んでいる。2016年からデジタルレイバーと人間が共存する社会を目指し、RPAの普及活動を続けている日本RPA協会に、ユーザー企業をサポートするポイントについて聞いた。

日本RPA協会
理事
林 淳一 氏

 日本RPA協会は、RPA元年と言われた2016年に発足した一般社団法人だ。RPAというツール単体ではなく、RPAエコシステムの活性化によってデジタルレイバーと人間が共存する世界を目指している。特にオンラインサロンなどでのディスカッションやセミナーによる情報発信によって、エンドユーザーの現場をサポートすることに主眼を置いている団体だ。

「2016年のRPA登場当時は、大企業から普及が進みました。2019年以降になると、労働力の確保を目的に、中小企業にも加速度的に導入が進むようになります。一方で中小企業の中には、RPAを導入しても利用をやめてしまうケースが少なくありません。中小企業は自社だけではRPAの利用を定着化させることが難しいためです。そうした企業に対するサポートが必要です」と語るのは、日本RPA協会の林 淳一氏。

 企業でのRPA運用は大きく分けて二つのパターンがある。一つ目がIT部門による中央集権型で、二つ目が業務部門による現場型だ。日本RPA協会では長年のエンドユーザーへのサポートの中で、利用効果の出やすい現場型での運用を提案している。一方で、特に中小企業にとっては現場型の運用で企業内の利用を広げていくことは難しい。業務部門ではIT部門と異なり、何かを開発してテストするという経験がなく、ロボットを作ることにハードルがあるためだ。一方で、ロボットを用いた業務改善のアイデアは現場からこそ生まれやすい。そのため必要となるのが、販売パートナーからのサポートになる。

日本RPA協会
理事
竹内瑞樹 氏

「販売パートナーがRPAツールを提案する場合、単純なライセンス提供だけでなく、従業員への教育、トレーニングを含めたユーザーサポートを行う必要があります。直近2週間で当協会に、RPAの活用が進んでいないという問い合わせが2件ありましたが、どちらもライセンス提供のみでサポートが得られていない企業でした。RPAを提案する販売パートナーは、ユーザーサポートや企業内でのRPAの運用を管理するルール作りなど、企業とともに伴走する支援を行うことが、中小企業でのRPA活用定着につながるでしょう」と林氏は指摘する。また現場型のRPA運用は、多くの場合専任のスタッフではなく、メイン業務との兼任となる。現場でロボットを作った場合も、それが評価されず活用が滞るといったケースもあり、企業内にRPA推進チームを作ることにより、内製化の歯車をうまく回していくことも提案している。

 現場で利用するRPAは特別なツールではなく、ExcelのSUM関数レベルのIT知識があれば利用できるという。一方で、RPAを導入しても、利用している業務が1業務や2業務程度では効果が少なく、さまざまな業務で多数のロボットを使うことで大きな効果が得られるようになる。

 日本RPA協会の竹内瑞樹氏は「RPAの活用は、いま二極化が進んでいます。RPAの活用は成功すれば何億という効果が出ますし、その効果を蓄積することで差が広がっていきます。導入したけれど成功していないというユーザー企業は、早めに成功者を研究して、それをまねて成功しなければ差が開いていきます」と語る。販売パートナーはRPAツール単体の提案だけでなく、中小企業にRPAを浸透させるべく、サポートを含めた伴走に注力していきたい。