●プロフィール
森戸 裕一(もりと ゆういち)氏

ナレッジネットワーク代表取締役。日本デジタルトランスフォーメーション推進協会代表理事や総務省地域情報化アドバイザー、内閣官房シェアリングエコノミー伝道師、サイバー大学 教授、名古屋大学 客員教授なども務める。企業や自治体主催の基調講演やセミナー、研修など年間200回を超える登壇実績を持つ。DXや働き方改革、ワークスタイルの変革、 AI 、ビックデータの活用、地方創生などの分野を中心に活躍中。

企業が DX 推進する狙い、そしてWindows 11が選ばれる理由とは?

企業が DX 推進する狙い、そしてWindows 11が選ばれる理由とは?

--- 本企画は、マイクロソフト社が掲げる、Windows 11 Proの “ Do more with less ” つまり少ない資源と時間でより多くのことを取り組めるようにする。をテーマに企業 DX 推進と Windows 11 Proの関わり合いについて伺っていきたいと思います。まずは、なぜいま企業の DX が求められているのか、そもそも DX とは何かについて改めてお伺いできますか?

森戸祐一氏(以下森戸) よく言われることですが、これまで IT 化と呼ばれる取り組みが行なわれていたなかで、昨今はそれが DX と呼び方にシフトしている風潮があります。しかし、 IT 化と DX は、そもそも出口が異なります。

IT 化は、今までのビジネスモデルとビジネスのプロセスを継続したまま、いかにその業務を効率化していくかというところにあり、基本的にビジネスモデルやプロセスそのものは変わりませんでした。それに対し、 DX は、社会全体がデジタル化しているなかで、企業が社会における存在やビジネスモデル、ビジネスプロセスそのものをどう変えていかなければならないかを考える必要があります。そういった意味を含め「トランスフォーメーション」という言葉が入っています。

そのためには、「少ない資源」をという資源の部分を再定義していく必要があると思っています。ヒト・モノ・金・情報という資源があると言われていますが、例えばパートナーシップ企業との協業や BPO みたいな形でアウトソーシングに変えていくという形もありますね。デジタル社会になったことで、ビジネスは非常にシームレスに繋がっています。大企業や中小企業といった垣根ではなく、それぞれが持つ設備や資産をシェアしていくなど、 DX によって経営は根幹から変わっていくでしょう。

IT 化のときは、こういった話にはなっていなかったので DX は、特定の企業だけでなく、経営者や従業員、パートナー企業、その企業にかかわるステークホルダーすべてが幸福感を感じる。そんな社会を目指すための変革が DX と言えるでしょう。

--- ありがとうございます。企業によって DX推進をハイスピードで進めている一方で、二の足を踏んでいる企業も少なからず存在しています。DX が進む企業とそうでない企業の特徴や思惑などはどうお考えでしょうか?

森戸 企業や自治体には、情報システム部門がありますよね。そういった部門に DX 化を任せてしまっている企業もありますが、それはどこかボタンを掛け違えてしまっているように見受けられます。社内のコンプライアンスであったり、セキュリティの問題であったりと顕在化してきて、さらに高度化も進んでいます。そのため、システム側としては、コンプライアンスやガバナンスに関する体制を強化していくことが大切になります。一方で企業の DX 化は、体制強化やパートナーの選定といった具合に、組織全体をどう変えるか? という点において経営企画に近いものになります。

実は、そこが同じになっている企業が多く見受けられます。私たちは、ブレーキとアクセルと表現しますが、しっかりとガバナンスを効かせてコンプライアンスを守る「ブレーキ」。しっかりと変革に向けて「アクセル」。このふたつが、同じペダルであってはなりません。経営者層がしっかりとそのガバナンス、コンプライアンスを設定し、ある程度の指標を作ってからシステム開発や DX を進める。このブレーキとアクセルをしっかりと理解されている企業は、やはり DX 化が進んでいますね。

--- システムの開発や DX 推進に欠かすことができないのが PC であり OS となりますが、多くの企業が Windows 11 Pro を選ぶ理由についてどうお考えでしょうか?

森戸 そもそも、Windows PC は意識して選ぶのではなく、必然的に使われるものだと思っています。やはり、ユーザーサイドから見れば圧倒的なシェアを持ちクラウドとシームレスに連携できるといったことが大きなメリットですね。また、先ほどの DX 化でもお話しした通り、外部のパートナーとの連携が加速すると「外部が使っているものと同じものを使っていかなければならない」という話になります。もちろん、企業ごとに好みのハードウェアや OS の選定を行なってもいいと思うのですが、やはり共有プラットフォームを使用して業務を進めていくと問題なく繋がっていけるという点においても DX 的な発想だと思います。

セキュアな環境を構築するといった面において保守管理コストはしっかりと確保しなければ DX 推進に大きく影響を及ぼします。自社のみならずパートナーを含め、チームを作るなりコンタクトを取りながら対応する必要がありますが、Windows 11 Pro でプラットフォームを統一されていれば、管理工数を抑えられるのもメリットですね。

※図版1

※図版1

対話型 AI が劇的な効率化を後押し

--- 外部の企業やパートナーとのシームレスかつ問題なく繋がれる Windows 11 Pro ですが、依然として旧バージョンとなる Windows 10 を使い続けている企業も少なからず存在しています。そういった背景には何が考えられるでしょか?

森戸 そうですね。まず、ひとつは「まだ使えるでしょう」という話に収まっているのではないかと思います。まだ使えるという理由で Windows 11 に切り替えるタイミングを伺っている企業は、DX に踏み切れていない企業の特徴だと思います。

また、コロナというパンデミックが発生した際、リモート業務を取り入れた企業が増えましたが、少し収まったところで、もとに戻そうという流れもあります。しかし、 DX が進んでいる会社は、元に戻すのではなくさらに自分たちの組織をアップデートするため、この約 3 年間で様々なテストパターンを作って、どの部署、どの業務、誰がリモートに向いているか。という選択を行ってきたと思います。もちろん、今後もリモートによる業務は残っていくと思いますが、セキュリティ面において Windows 11 Proにアップデートするという選択に対する明確な理由となっていますね。その理由が見出せず、タイミングを作れなかった企業や人が Windows 10 を使い続けているのではないでしょうか。

--- 企業がこれから DX を推進していくのにあたり Windows 11 Pro を導入すべき理由とメリットについて改めてお聞かせください。

森戸 まずは、Windows 10 のサポートが 2025 年の 10 月に終了するというのが大きなポイントとなりますね。セキュリティ面に関しては、これから生成 AI が実装され、それを活用していこうという機運が高まっています。しかし、その一方で使い方によっては生成 AI は危ないのではないかという問題もあります。また、早く取り入れなければ取り残されてしまうという危機感を持つ半面、限られた資源のひとつでもあるヒトは急に育つわけではないため、人材のアップデートも欠かすことができません。それをよりセキュアな環境で行なうという話になると Windows 11 Pro の一択になるのではないでしょうか。

また、Windows 11 Proには、ストレージをロックし、他の環境からのアクセスを防ぐBitLockerのようなものがありますが、これをいちいち意識して仕事している人というのは少ないと思います。しかし、こういった機能を自然と活用していくなかで OS のアップデートやハードウェアを最新のものに変えていくといった体制を作ることは、経営的な負担を軽減するのにも重要なことだと思います。

そして、Windows 10 ユーザーは古い PC を使用しているケースも少なくありません。従来の IT 化でいうと、ハードウェアの入れ替えその者は負担となり利益が落ちるので敬遠されがちでした。しかし、 DX として捉えると、いろいろな企業との連携を始める。それから新規の領域を開拓するといった具合に新しいビジネスを生み出すというところにかかるコストは投資と言えます。 DX が進んでいる企業の事例をしっかりと収集し、セキュリティ面を高めるために Windows 11 Pro を取り入れるという理由付けはマストだと思います。それに加えて、新しいビジネスに対し積極的に企業が従業員にストレスを与えることなくチャレンジできるような体制を考えたとき、Windows 11 Pro を選択する。というのが自然な流れではないでしょうか。

ハードウェアはコストセンターではなく、費用対効果が大きく経営の大きな武器となる

--- 企業のなかには、少なからず IT 部門をコストセンターとして捉えられてしまうケースもあるかと思います。企業が投資を行うからには、費用対効果が求められると思いますがそのあたりはいかがでしょう?

森戸 例えば、ハードウェアを含め、すべての PC をWindows 11 Pro にアップデートした場合、その投資コストは莫大なものになると思います。しかし、Windows 11 には「Windows Copilot」が実装される予定です。これまでWindows 11 はセキュアな OS であると言いましたが、これディフェンシブな話であって、 AI が搭載されることでアクティブな攻めの姿勢を持って経営が行なえるようになります。実は、これが一番の武器であり、非常に大きな投資効果が得られると思っています。

※図版2

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---  Windows Copilotという AI がWindows 11 と融合することで業務の効率化が見込まれています。そこで重要になるのがリスキリングだと思うのですが、その点についてお聞かせください。

森戸 AI の台頭によって、リスキリングにおける課題は大きいと思います。多くの企業が何に対して投資しているかというと、デジタル人材を育成してリスキリングが完了したという話もあります。しかし、リスキリングの前提はビジネスモデルやマネジメントの考え方を変えていくことにあります。そこを変えず、従業員にとりあえずデジタルの研修を受けさせる企業は、単なる IT 化で終わってしまっていると思います。

DX を推進している会社というのは、まずは自分たちがどんな企業に変わるのかという定義やビジョンがあり、そこで必要なスキルセットを設定しています。そのうえで、そのスキルセットを学ばせるために全従業員に教育を提供しています。とはいえ、その教育を受けた従業員が実際に稼げるようになるまでの時間は決して短くはありません。私はそれを補完してくれるのがWindows 11 に組み込まれる「Windows Copilot」でありオフィスツールに組み込まれる「Microsoft 365 Copilot」だと思っています。

こいった生成 AI を使用する際、重要になるのが適切な答えを引き出すプロンプトを明確に打てる人材となります。生成 AI を積極的に活用し、対話を小まめに行っておくと AI も人間との対話もうまくなります。また、もっと言えば、プロンプトをきっちり使いこなすことができる上司や人材は、人に対するマネジメントも上手いと感じます。こういったスキルは、リモートワークでも顕在化しましたが、生成AIでさらに顕在化してくると思います。

そうなると、リスキリングしなきゃいけないのは日本の管理職層じゃないかなと思いますね。管理職は、タイムマネジメント、プロジェクトマネジメント、タレントマネジメントといった3つの資源管理が主な仕事となります。ここをうまく機能させるためには、より AI から的確な答えを引き出すスキルが必要になります。この能力は、部下から的確な答えを引き出すのと同じということを意識して「Windows Copilot」と向き合っていくとより生産性の向上と業務の効率化、マネジメントスキル向上につながるのではないでしょうか。

また、Microsoft 365 Copilot も業務を行っていくうえで大きな武器と言えるでしょう。これまで会議の資料作成はもちろん、その調査のために膨大な時間を費やしていたことも珍しくありません。 AI を活用することで、アイディアの収集や情報の整理、要約に必要な時間は大きく短縮します。こういう時間短縮は、企業経営において大きなインパクトを与え、限りある企業の資源の有効活用に繋がるでしょう。

最終的には、意思決定にも AI が絡む時代が来るかもしれませんが、企業活動の深層に迫るほど情報流出のリスクもあります。そういった不安を払拭するといった意味においてもセキュアなWindows 11 Pro の活用、そしてマイクロソフト社のテクノロジーに期待したいところですね。

初出時において、「 Windows Copilot 」を「 Windows Autopilot 」と誤記がありました。お詫びして訂正いたします