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ビジネスバズワード - 第8回

2017年「ワーク・ライフ・バランス」実現が叫ばれる理由(わけ)



人口「オーナス」期に突入した日本の進むべき道

ワーク・ライフ・バランス=仕事と生活を調和させる。この言葉が盛んに叫ばれる背景には、日本の置かれた深刻な状況があります。それは人口と国力を巡るものです。

文/まつもとあつし


なぜいま「ワーク・ライフ・バランス」なのか?

 ワーク・ライフ・バランス=仕事と生活を調和させる。この言葉は「働き方改革」が叫ばれるいま話題に上る機会も増えてきました。とはいえ、この言葉を働き方のひとつの理想像を示した、ある種自己啓発的なものだと理解している人もまだまだ少なくないはずです。

 しかし、ワーク・ライフ・バランスが問われる背景には、日本の置かれた深刻な状況があります。それは人口と国力を巡るものです。順を追って説明しましょう。

 日本において少子高齢化が進んでいるというのはよく知られるようになりました。かつての高度成長期にあっては、働き手となる世代の人口の比率が高く、逆に彼らが支えるリタイア世代の比率が低かったため、若い労働力を活用し世界市場で競争力を発揮することができました。高齢者を支えるための社会インフラへの投資も少なくて済み、出生率が高い水準になるのも特徴とされています。「人口ボーナス期」と呼ばれるこの時代は、日本に限った話ではなく中国やインドなど様々な国で起こる、あるいは起こった現象とされています。

 しかしこのある意味幸せな時代は長くは続きません。この時代に生まれる富裕層は晩婚傾向にある上に、教育投資を熱心に行う一方、コストのかかる子供をたくさん産むことを避けます。結果、出生率が下がる方向に向かうのです。そこに加えて日本では雇用の流動化を急いだ結果、子供を産みたくても産めない層が増えたこともその傾向に拍車を掛けました。「日本死ね」という物議を醸した言葉が示したように、待機児童問題が長く放置されてきたため、働き盛りの世代が一層子供を作ることに困難を感じてしまっているという背景もあります。

我が国の人口ピラミッド(総務省統計局「日本の統計2016」より抜粋)。

 1990年代半ば以降、日本は急速に「人口オーナス期」に突入しています。onus=負担や負荷、というこの言葉が示すように、少子化対策がこの数年以内に成果を生まなければ、一層日本の経済活動、ひいては国力は厳しい時代へと向かっていく、ということなのです。次世代の働き手、子供たちを安心して産み、育てるためにワーク・ライフ・バランスをどう実現するかが、いま国を挙げての喫緊の課題になっているのはこのためです。政府が長時間労働に対して非常に厳しい姿勢で臨んでいるのも、この問題への取り組みとつながっていると理解しておくとよいでしょう。

私たちがワーク・ライフ・バランス実現のためにできること

 とはいえ、「ただでさえ景気の先が見通せないのに、ワーク・ライフ・バランスを、なんて非現実的だ」という声が現場からは上がってきそうです。しかし、日本のホワイトカラーの生産性が低い、と長く指摘され続けていることを忘れてはいけません。

主要先進7カ国の時間あたり労働生産性の順位の変遷(日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2016年版」より抜粋)。

 OECD加盟35カ国で日本の労働生産性は45年以上、20位前後に留まっています。人口ボーナス期は、みんなでたくさん働けばそれだけ成果が生まれる時代でしたが、いまそのやり方を続けていては、肝心の「次世代の働き手」の数がどんどん減っていってしまい、自分たちの首を絞めることになりかねません。

 ワーク・ライフ・バランスを実現するために少ない人数、少ない労働時間でいかに成果を上げるか? いまの日本の生産性の低さは、逆に捉えると改善の余地がまだまだあると言えるのです。例えば、生産性を考える際、よく話題に上がるのは会議のあり方です。外資系企業に勤めていた筆者は、会議前に議題、会議後には議事録が共有されるスタイルに驚かされたものでした。生産性を高めるのであれば、会議は話し合うことが目的ではなく、次に誰が何をいつまでにやるのか、が明確にされるための場にならなければなりません。会社はこれまでの人口ボーナス期の成功体験を捨てて、人口オーナス期に求められる働き方を構築しなければならない、と言えるでしょう。

 また、 スマートワーク総研のインタビューで夏野剛さんが話してくれたように、個人としても考えるべきことがあります。仕事と生活のバランスを取る、ということはどちらかを減らしたり、負担をかけるということであっては本末転倒です。テレワークが普及すれば、家庭、生活の場でも仕事をする場面も増えてきます。そうなったときに、自分が本当にしたい仕事、社会に貢献できている仕事であるかどうかが、自分自身にとっても、あるいはそれを見守る家族からも一層問われてくるはずです。

 本業と生活の間を、働く意義という価値観の観点で橋渡しする「兼業」や、転職あるいは議論はあるものの職業の最適化を図る上では解雇と再就職のあり方など、私たちの社会が取り組まなければならない課題は山積みになっています。私たち個人がその山と向き合い、身の回りの小さなところからでも崩していくことがワーク・ライフ・バランス実現とその先にある人口オーナス期をいかに乗り切るかという課題解決のために求められているのです。

筆者プロフィール:まつもとあつし

スマートワーク総研所長。ITベンチャー・出版社・広告代理店・映像会社などを経て、現在は東京大学大学院情報学環博士課程に在籍。ASCII.jp・ITmedia・ダ・ヴィンチニュースなどに寄稿。著書に『知的生産の技術とセンス』(マイナビ新書/堀正岳との共著)、『ソーシャルゲームのすごい仕組み』(アスキー新書)、『コンテンツビジネス・デジタルシフト』(NTT出版)など。

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