ワーキング革命 - 第11回

Cross テレワーク×IT――必要なのはテクノロジーと意識改革の両輪

NTTコミュニケーションズは、2016年11月1日〜11月5日の5日間、50名〜500名規模の会社を対象に、経営者や役員 300名、従業員 300名に対して「経営者と従業員の働き方に関する意識調査」を行った。その結果から、「社内コミュニケーションロス」を不安視する傾向が表れたという。

文/田中亘


この記事は、ICTサプライヤーのためのビジネスチャンス発見マガジン「月刊PC-Webzine」(毎月25日発売/価格480円)からの転載です。

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中堅・中小企業でも潜在ニーズはある

 実施されたアンケートの結果を整理すると、次のようになる。

  • テレワークについては、全体の43%が興味あり。14.3%の企業がテレワークを導入している。
  • 経営者、従業員ともに「テレワーク」導入について、会話不足などの「社内コミュニケーションロス」を不安視。いわゆる「報・連・相」のうち、報告・連絡に相当するコミュニケーションは「メール」、相談に相当するコミュニケーションは「電話」を重視している傾向が顕著に表れた。
  • 「どこにいてもスマートフォンやPCで内線電話が利用できる」と、「社員同士のコミュニケーションが取りやすくなると思う」と、中堅・中小企業層においても、そのニーズは半数以上だった。
  • テレワークを導入する際、経営者、従業員全体の52.5%が、「どこにいてもスマートフォンやPCで内線電話が利用できる」と、「社員同士のコミュニケーションが取りやすくなると思う」と回答。
  • サービス検討のポイントとして、「環境の設定が容易であること」が69%、「導入コストの安さ」が66%、と高い結果にあることから、どのようなオフィス環境でも「安価」で「簡単に対応できる」サービスが求められている。

 今回の調査を実施した背景について同社は次のように説明している。「テレワークの導入は、大企業が先行し、中堅・中小企業における取り組みはまだ進んでいないという現状がありますが、中堅・中小企業でも潜在ニーズがあると考えています。経営者や従業員の働き方やテレワークに関するニーズや課題、電話(外線・内線)への期待ポイントを可視化することで、最適なサービス提供につなげるために実施しました」

 結果として、ビジネスのコミュニケーションツールが多様化する中で、電話の使用頻度は減り、用途によって使い分けられ、相談などの込み入った内容の際には会話が重視されていることがわかったという。また、複数のコミュニケーションツールを簡易で安価かつ柔軟に使い分けられるソリューションも求められている。

経営者の53%がITリテラシー不足を懸念

 テレワークの導入に際しては「社内コミュニケーションロス」への不安視が指摘されている。しかし、その不安は心理的なものであり、実際の「壁」ではないと同社では分析している。

 特に注目すべきは「53%の経営者がITリテラシー不足を懸念している」という結果だ。この課題を解決するためにはどうするべきか。同社では、「経営者の多くはITリテラシーが低いと認識していて、テレワーク導入のハードルを高く感じていると考えられます。まずは、クラウドやスマートフォンを活用していただいて『簡易』で『安価』かつ『柔軟』にコミュニケーションツールを活用できる方法があることを知っていただきたいですね。無料トライアルなどを利用して、その簡易さと利便性を体験していただくことが効果的だと考えています」と提案する。

 同社の指摘する簡単でコスト負担が少なく柔軟なコミュニケーションツールのひとつが、企業の音声設備をクラウド化し、デバイスフリー・アクセスフリーの内線環境を実現する「Arcstar Smart PBX」になる。Arcstar Smart PBXは、PBX機能をクラウドで提供し、IP-Phoneのほか、スマートフォンやPC(ソフトフォン)などを内線電話として使えるサービスだ。ロケーションフリー、デバイスフリーのワークスタイルが可能になるため、さまざまな企業の在宅勤務やモバイルワークなど、テレワークの環境構築に活用できる。

理想的なコミュニケーションツールの使い分けとは

 Arcstar Smart PBXをワーキング革命の商材として提案する場合には、どのようなテレワークを提供できるのだろうか。同社は「テレワークだからといってメールのコミュニケーションに頼るのではなく、オフィスと同じように電話も遠慮なく使い分けることが、円滑な業務のためには大切です。オフィスと同じように電話を使うということは、どこでも『内線電話』を使えるようにすること」だと指摘する。

 例えば、Arcstar Smart PBXではスマートフォンを内線電話の端末として使えるようになるので、オフィスにいない社員に対しても、手間をかけずに連絡をとることが可能になる。また、テレワーク導入の際は、電話、メール、チャットなどについて、日頃は無意識で使っている社内コミュニケーションの手段を整理し直して、用途によって使い分けるように準備するなど、業務状況に応じた環境構築が理想的だとも提案する。

 「働き方改革が国家施策の目玉となり、官民ともにおそらく過去最大の注目を集めているため、多くの企業が真剣に取り組み始めています。現状では制度面への注目、改革が始まった段階で、働き方改革を実現するための手段にまで議論は至っていません。あるいは、手段がイメージできていない企業が多いと考えています」と同社では捉えている。

 こうした現状で、改革への期待と現実とのギャップを埋めるためには「働き方改革を実現する手段の中でも、テレワークは有効な手法」であり「テレワークは、ITによって解決できる部分が大きい」と指摘する。具体的には、遠隔会議サービスや、共同作業のためのソフトウェア・グループウェア、スマートフォンでも快適かつセキュアに作業できる仕組み、スマートフォンを内線電話として活用できるサービスなど、数多くのITサービスがある。

 同社では、これらのITサービスを何年も前から提供してきた。しかし「今回の調査を通して、潜在的なニーズの高さはうかがえるものの、いまだ『コミュニケーションロス』などの不安感が先に立っている状況を認識」したという。そこで「特に中小企業に向けては、テレワークはITサービスによって、想定されているよりも簡単に解決、実現できることをこれまで以上に伝えていきたい」と話す。

(PC-Webzine2017年2月号掲載記事)

筆者プロフィール:田中亘

東京生まれ。CM制作、PC販売、ソフト開発&サポートを経て独立。クラウドからスマートデバイス、ゲームからエンタープライズ系まで、広範囲に執筆。代表著書:『できる Windows 95』『できる Word』全シリーズ、『できる Word&Excel 2010』など。

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