ワーキング革命 - 第13回

Office 365のAI(MyAnalytics)が新たな気づきや発見をもたらす

日本マイクロソフトの働き方改革にとって、Office 365は欠かすことができないツール。ビジネスの大部分がOffice 365によるコミュニケーションやドキュメント作成・共有に費やされている今、そのOffice 365から新たな気づきや発見をもたらしてくれるAIは、ワーキング革命における重要な存在となりそうだ。

文/田中亘


この記事は、ICTサプライヤーのためのビジネスチャンス発見マガジン「月刊PC-Webzine」(毎月25日発売)からの転載です。

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働き方改革の第2章はAIを活用した分析

 日本マイクロソフトでは、2011年から「フレキシブルワークスタイル」というテーマで、働き方改革に取り組んできた。その背景には、離職率の高さや長時間労働などの問題があったという。そこで、テレワークを推進して、フリーアドレスによる柔軟な職場環境と在宅勤務やモバイルワークを促進し成果をあげてきた。そして、2017年からはAIを活用して働き方に新たな気づきをもたらす取り組みを推進していくという。

 そのポイントは、働き方に「量」と「質」の両面で改善をもたらすというもの。具体的には、Office 365 Enterprise E5で利用できる(他のプランのアドオンでも利用可)「MyAnalytics」というマイクロソフト製のAIを活用する。

 マイクロソフトでは、社内ユーザーからOffice 365の膨大な利用情報、いわゆるビッグデータを収集している。それは、どのアプリをどれくらいの時間使っていたか、という単純なものではなく、メールなどのコラボレーション系ツールを中心に、誰とどのくらい緊密な連携をとっていたかにまで至る。そのビッグデータの中から、自身の働き方に関する情報を取り出したいときに、MyAnalyticsを使って、さまざまな角度からワークスタイルを分析できる。

 例えば、コラボレーション系ツールの使い方を集計すれば、誰とどのくらいの頻度で共同作業を行っているかがわかる。時間配分を知るだけでも、同じチームのスタッフと頻繁に作業しているのか、もしくは他の部署なども巻き込んで協力体制を実践しているのか、あるいは特定のスタッフだけに偏っているのか、などを自己診断できる。

 その結果、他の部署とコミュニケーションをさらに図っていこうとか、異なるスキルのスタッフと協働する時間を増やそう、といった自己改善の方向性を見出せる。こうした自己研鑚につながるAI(MyAnalytics)活用が、日本マイクロソフトの提唱する働き方改革の第2章というわけだ。

会議中の内職までわかる

 Office 365のMyAnalyticsでは、スケジュールに設定されている時間帯とPCによる実作業などをリアルタイムに収集しAIで分析して、その人が会議に集中しているかも判断できる。例えば、会議に設定されている時間帯に、頻繁にOutlookを利用していれば、AIは「内職している」と判断する。会議に集中しないで、他の作業に追われているというわけだ。

 こうした警鐘は、その本人の働き方を再考するきっかけになる。そもそも、内職するような会議に参加する意義があるのかどうかといった問いにつながるのだ。もしかしたら、会議という形ではなくSkype for Businessなどのチャットで済む話なのかもしれない。こうした改善を重ねることにより、働き方の「質」が向上すると日本マイクロソフトは提唱している。

 さらに、MyAnalyticsはアドバイスも発信してくれる。例えば、メールの使い方を分析したAIが「あなたが残業時間に送信したメールを読むのに受信者が費やした時間は推定で3時間です」と警告し、「緊急性のないメッセージは翌朝まで保存しておきましょう」というアドバイスを与えてくれる。こうした「気づき」により、担当者はメールの送信に配慮するようになる。無理に残業してメールを出すのではなく、早く帰って翌日の朝から送ればいい、と考えるようになるのだ。

AIを活用した働き方改善の理想シナリオ

 それでは、実際にOffice 365のAI(MyAnalytics)によって、どのようなワーキング革命が実践できるのだろうか。日本マイクロソフトによる理想的なシナリオは次のようになる。

  • 「気づき」 会議時間に1週間で28.5時間も費やしていた。特に特定の定例会議で内職をしてしまっていた。
  • 「改善案」 自分以外のメンバーも内職していることを知り、定例会議のあり方を見直すことを上司に提言。
  • 「結果」 SNSでの情報共有、事前のアジェンダと目的共有を徹底することになり、必須参加の会議の時間が削減され、アイデアを練る時間が創出できた。

 メールに関するシナリオでは、次のような効果が期待できる。

  • 「気づき」メールの送受信に、1週間で12.3時間も費やしている。さらに、送ったメールの15%は開封されていない。
  • 「改善案」コミュニケーションの内容に応じて、対面の会議、Skype会議、SNSなどを使い分ける。
  • 「結果」必要な人に必要な情報が共有できるようになった。インタラクティブなやりとりも活性化し、相互理解が進んだことで方針を合わせて仕事を進められるようになった。

 理想的なシナリオを聞くだけでは、なかなか一般の企業にOffice 365のAIの有用性を納得してもらうのは難しいかもしれない。しかし、MyAnalyticsという分析ツールの存在は、現場の社員というよりも、経営層に響くメッセージ性がある。「御社の社員の働き方をさらに改善できるツールがあります」という提案は、経営者の目線には合致するソリューションだ。

 限られた人材と時間の中で最大限のビジネス的な成果を出すためには、最終的には一人ひとりの社員が積極的に働く職場環境が重要になる。そのためには、働き方への「気づき」は欠かせない。

 日本マイクロソフトの事例では、働き過ぎているから見えなくなっている自分の働き方を再考するAIとして有効だった。反対に、あまり働いていない会社では、違う改善策が発見できるかもしれない。そのため、Office 365+AIの提案は、できるだけマネジメントや経営層への訴求が得策だろう。

(PC-Webzine2017年4月号掲載記事)

筆者プロフィール:田中亘

東京生まれ。CM制作、PC販売、ソフト開発&サポートを経て独立。クラウドからスマートデバイス、ゲームからエンタープライズ系まで、広範囲に執筆。代表著書:『できる Windows 95』『できる Word』全シリーズ、『できる Word&Excel 2010』など。

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