ワーキング革命 - 第16回

次世代ミーティングルーム「HPE Intelligent Spaces - Workplace」で会議室を越えた会議を

次世代のミーティングルームを標榜する日本ヒューレット・パッカード(HPE)の「HPE Intelligent Spaces - Workplace」。このショールームは、日本マイクロソフトのOffice 365やSkype for Businessなどのクラウドサービスと、社員の位置を検知して照明なども管理するIoT技術を組み合わせたスマートな会議室だ。インテリジェントな会議室から変わるワーキング革命を考察する。

文/田中亘


この記事は、ICTサプライヤーのためのビジネスチャンス発見マガジン「月刊PC-Webzine」(毎月25日発売)からの転載です。

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会議の準備に要する時間が2分以内

 HPE Intelligent Spaces - Workplaceに実装されている主要な機能は、以下の6点。

  • 会議室への入室を自動認識
  • 部屋の状況をリアルタイムに更新してサイネージへ反映
  • フルセットアップ会議室テクノロジーによる会議の自動開始と終了
  • 物理的な出席者を同じデジタル空間に自動的に誘導
  • 会議出席者が使用するコラボレーションツールとの統合
  • 会議終了時に会議中に作成されたアウトプットを共有

 コンセプトは「自動化された会議室」だ。この自動化を①位置情報と②複数のクラウドサービス連携で実現している。HPE Intelligent Spaces - Workplaceでは人の入退室をビーコンとモバイルアプリで把握し、それをトリガーに会議室の予約、解放を実行する。ワークプレイスIoTのイメージとしてLEDランプを制御し、バーチャル会議のセットアップの煩雑さを解消するためにSkype for Businessの自動セットアップも行う。「会議室の予約・確保からSkype for Business会議が準備されるまでに要する時間が2分以内というのがわかりやすい特徴」だという。

 HPEでは、そのために必要なデジタルデバイスやファシリティデザイン、ネットワークやITインフラなどを提供する。そして日本マイクロソフトと協力して、Office 365やSkype for Businessなどのクラウドサービスを用意する。HPEによれば、働き方を改革するためには、会社の機能を社員に届ける努力が必要だと捉えている。それはテレワークやモバイルオフィスに代表される働き方だが、加えて「社内でいかに働けるのか」もポイントになるという。つまり、社内や社外という区別を意識することなく、働きたくなる環境を整えることが大切で、そのためのHPE Intelligent Spacesとなる。

日本型の会議モデルが果たしてきた役割と限界

 一口に「会議」といっても、そのスタイルには大きく三つの様式がある。おそらく、古くからの典型的な日本式会議のスタイルといえば、「議会」に代表される質疑応答型。代表者の後ろに答弁を用意した「配下の者たち」が並び、儀式のように質疑が交わされる。多くの日本型企業では、この「議会」を手本とした会議を執り行ってきた。そのため、インタラクティブな情報のやり取りや、コラボレーティブな創造性の発揮を苦手としている。

 その苦手とするクリエイティビティを発揮できるはずの会議スタイルが、二つ目の分類にあたるプレゼン型。広告代理店のコマーシャル案の提案会議に代表される「日本のプレゼン型」会議は、一人のスーパープレゼンテーターが創造性を発揮した弁論を行う、というよりも、集団で担当者ごとに説明する「学級会での発表会」のようなスタイルが多い。それでも、第三者に「自社」の意図を伝える方法としては、それなりに成果を発揮してきた。

 しかし、これらの議会式やプレゼン式をベースにした会議を社内で行っていると、参加者の思考は「停止」してしまう傾向がある。いわゆる予定調和になりがちで、事前に細かく準備はするけれども、会議という「場」で何かを決めたり導き出したりする方向に、エネルギーが発揮されなくなる。かつての日本式経営やビジネスモデルであれば、この予定調和はとても効果的な会議システムだった。ところが、グローバル化やフラット化する社会と、世の中の変化の速度が加速するにつれて、調和を優先する二つの会議スタイルは、充分に機能しなくなってきた。

 最先端の経営モデルに求められている「とにかくやってみる。ダメなら早く軌道修正する」というビジネスを推進するためには、会議のスピードと機能の向上が必須だ。そこで第三の会議スタイルといえる「ワークプレイス」型の実現が急務なのだ。

デジタルワークプレイスとモバイルを軸に

 そもそも、なぜ「会議」が必要になるのか。それは何かを「決める」ために必要な多数決や合意を導き出すための「場」としての役割が求められていたからだ。しかし「ワークプレイス」型の会議スタイルでは、「決定事項」よりも優先されるのが「行動計画」になる。過去の報告に時間を費やすよりも、これから何をするのかを考えて動き出すための踏み台として、関係者が集まって議論して目標を定めていく「場」を共有する。

 それは試合前の作戦会議に似ている。ゲームに参加するエキスパートが、それぞれのミッションを充分に理解しているうえで「勝利」という目標に向かって「行動計画」を確認し合う。そのための「場」がワークプレイスとなる。そしてワークプレイスは、何も会議室という「箱」である必要はない。エキスパートたちが必要なときに必要な情報を的確に交換し確認し合えるのであれば、デジタルで仮想化された空間でも充分なのだ。それが、HPEが海外で提唱しているモバイルを活用したデジタルワークプレイスになる。そのデジタルワークプレイスの最先端の実験場が、今回のHPE Intelligent Spacesだ。

 日本のショールームでは、あくまでも「会議室」というファシリティになっているが、モバイルとクラウドを活用した働き方を推進していけば、「箱」の中に収まっている必要はない。各自がモバイルデバイスを使いこなすことで、これからの時代のデジタルワークプレイスとして、創造性や機動力を加速する「行動計画」をいつでもどこからでも議論できるようになる。そう考えると、デジタルワークプレイスを見据えたデジタルデバイスやネットワークインフラなどの導入や再構築も、大きなビジネスになる。

 HPEでは、「働き方改革は業務要件から技術要件への落とし込みが難しいケースがあります。HPE Intelligent Spaces - Workplaceでは特に汎用的な業務として“会議”にフォーカスを当て、そこに最新技術の適用例を体験していただくことで、お客さま内でIT部門と総務部門が共通理解を持ち、具体策に落とし込めるキッカケ作りの場が提供できると考えています。合わせてHPE本社のオフィスツアーに参加していただければ、新たな気付きやITの活用事例を紹介し、包括的な働き方改革を支援できると考えています」と話す。

(PC-Webzine2017年7月号掲載記事)

筆者プロフィール:田中亘

 東京生まれ。CM制作、PC販売、ソフト開発&サポートを経て独立。クラウドからスマートデバイス、ゲームからエンタープライズ系まで、広範囲に執筆。代表著書:『できる Windows 95』『できる Word』全シリーズ、『できる Word&Excel 2010』など。

この記事は、ICTサプライヤーのためのビジネスチャンス発見マガジン「月刊PC-Webzine」(毎月25日発売)からの転載です。

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