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2017/11/17

太田肇直伝! 働き方改革を100倍加速する「分化」の組織論 ― 第5回

「分化」したらチームワークがよくなる



チームワークや連帯感があるというのは神話にすぎない

日本の企業はこれまで、個々の力というよりもチームワークで強さを発揮すると言われてきました。しかし、最近はその意識も希薄になり、従来型のチームワークでは、うまく進められないというトラブルも多くなってきています。一方、欧米の企業は職務主義なので、仕事の分担がはっきりしており、協力関係は薄いと思われがちですが、実は意外とそうでもないことがわかってきています。今回は、「分化」がチームワークの支えになるというお話です。

文/太田 肇


チームワーク神話の崩壊

 わが国では会社も役所も大部屋で働き、個々人の仕事の分担は明確でなく、集団単位での仕事が多い。また一緒に働くメンバーは、「同じ釜の飯を食う」仲間同士である。だからこそメンバーの連帯感は強い。「日本人は個人だと欧米に勝てないが、チームワークなら負けない」といわれ続けてきた。しかし、はたしてそれは事実だろうか?

 最近、その常識を疑わせるような声があちこちから聞こえてくる。職場では互いに助け合う意識の希薄化が問題になり、コミュニケーション不足によるトラブルも多発している。協力や支援の意識が薄れていることを裏づけるようなデータもある。

 たとえば2001年に中央大学教授(当時)の佐久間賢氏が日本企業と欧米企業の従業員を対象に行った調査によると、「職場の仲間が仕事に行き詰まったり、困っていたりしたら助け合いますか?」「あなたは自身のノウハウ情報を仲間に進んで教えますか?」「いまの組織では同僚を信頼できますか?」という質問に対してyesと答えた人の割合はいずれも日本が欧米より顕著に低い。逆にnoと答えた人の割合は日本が圧倒的に高い(佐久間賢著『問題解決型リーダーシップ』講談社、2003年)。

佐久間賢著『問題解決型リーダーシップ』講談社刊。本書では、部下の提案には耳を傾けず、新しい手法に対しても消極的な上司を「ギャップ型上司」とし、その逆のタイプを「問題解決型上司」と定義している。

 こうしてみると、日本人は連帯感が強いとか、チームワークがよいというのはどうやら「神話」にすぎないようだ。

 「神話」の陰には思い込みがある。個人が組織や集団から「未分化」、すなわち一人ひとりの分担が不明確で集団での仕事が多いからチームワークがよいというのは一面的であり、むしろ未分化だからチームワークがよくないという別の面があるのではないか。

人にも「なわばり」が必要

 それには、つぎのような理由がある。

 たいていの人はもともと他人の役に立ちたい、困っているときには助けてあげたいという利他的な気持ちをもっている。しかし個人の分担がはっきり決められていない場合、たまたま他人の仕事を手伝ったら、それが当たり前になってしまうかもしれない。

 手伝ってもらったほうも、仕事はみんなでするものだから手伝ってくれて当たり前という意識があるから、あまり感謝しない。だったら手伝ってやるものかという気になる。まして相手が図々しい人だと、手伝ったことがきっかけで仕事を押し付けられる場合もある。だからうっかり手助けできないのである。

 イヌやネコなどの動物と同じように人間も「なわばり」があると安心する。欧米型のジョブ(職務)は一種のなわばりで、「分化」した自分のジョブの範囲では他人に干渉されない。また基本的には自分のジョブだけこなせばよい。だからこそ逆に安心して他人を助けたり、ノウハウを教えたりすることができる。そして助けられたり教えられたりした側は、その相手に感謝し、いつか恩返しをしようと思う。そこに互恵関係ができあがるわけである。

 また分担がはっきりしていると、だれがだれの仕事を助けているかがよくわかるので人事評価にも反映されやすい。職務主義のもとでは一人ひとりがバラバラで協力しないと思われているが、現場で聞いてみると意外にも必要なときには積極的に協力するというのが事実のようだ。

 日本でもフリーランスや自営業の人たちがプロジェクトチームを組んで仕事をする場合、自然な形で協力したり助けたりする姿がよく見られる。それも一人ひとりの仕事が「分化」しているから積極的に関われるのだろう。

いずれ転職・独立する者同士のほうが協力できる面も

 つぎに、「分化」を時間軸の上で考えてみよう。

 定年まで一緒に働く職場は、いわば運命共同体だ。だからこそメンバーは協力し、助け合うと信じられてきた。たしかにそのような面はある。しかし他方では、逆のベクトルの力も働く。共同体でメンバーが固定していると、それぞれが将来にわたって役職ポストや報酬の配分をめぐって争うライバル同士になる。そのため大事な情報や助言を与えることはためらわれるし、うっかり自分の弱みをみせたら将来後悔することになるかもしれない。

 それに対し、いずれ転職や独立をすることが前提になっていたら将来の利害対立を気にする必要がない。一人ひとりの夢を尊重して協力し合い、互いに切磋琢磨しようとする。

 リクルートという会社では、以前から40歳前後でスピンアウトして自ら会社を立ち上げたり、独立してフリーランスで働いたりする人が多い。そして退職後も「元リク」というゆるやかなネットワークが互恵関係に役立っている。そのため社内には、仲間が活躍したとき心から祝福する風土があるといわれる。

リクルートホールディングスのサイト。人事制度はかなり特殊で、新規事業開発プログラムによって全従業員が新規事業企画に応募でき、審査を通過したら事業開発部権限で必ず異動できる。こうして事業規模を拡大し成功すると分社化したりする。

リクルートは渋谷にオープンイノベーションスペース「TECH LAB PAAK」を開設。リクルート社員とスタートアップ企業とで新規事業を創造する「MEET SPAAC」という取り組みも行っている。

 たしかに共同体型組織には運命を共にする者同士の連帯感があり、「分化」によってそれが損なわれるおそれもある。しかし、仕事の質の変化、求められるチームワークの変化という要素を加味すると、わが国の組織も「分化」の方向へ舵を切るべきではないか。少なくとも、共同体だからチームワークがよいという「神話」は疑うべきだろう。

「太田肇直伝! 働き方改革を100倍加速する「分化」の組織論 」

筆者プロフィール:太田肇

 同志社大学政策学部・大学院総合政策科学研究科教授。1954年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。京都大学博士(経済学)。専門は組織論。近著『ムダな仕事が多い職場』(ちくま新書)、『なぜ日本企業は勝てなくなったのか―個を活かす「分化」の組織論―』(新潮選書)のほか『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)、『公務員革命』(ちくま新書)など著書多数。

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