ワーキング革命 - 第23回

1ユーザーからでも利用できる 働き方見える化サービス

人の数だけ働き方があり、多様で柔軟に働ける「あした」を創ることをコンセプトに掲げるNECの「働き方見える化サービス」。同サービスは、PCから収集したデータを活用して各自の「働き方」を可視化する。テレワークの導入や働き過ぎの是正、業務プロセス改革など、多くのメリットが見込まれる同サービスによって、小規模な企業から中堅や大手まで、PCを中心に仕事をする人たちの働き方改革に貢献する。

文/田中亘


この記事は、ICTサプライヤーのためのビジネスチャンス発見マガジン「月刊PC-Webzine」(毎月25日発売)からの転載です。

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サービスの基本はPC操作の可視化

 NECの働き方見える化サービスは、利用者のPCに専用のエージェントをインストールして、その利用状況をモニタリングする仕組みだ。収集するデータは、利用したアプリケーションの種類や編集したファイル名、キーボードやマウスの操作ログなど。Skype for Businessを利用していれば、そのプレゼンス情報も記録できる。そして、予定表のデータから会議や外出などの時間を集計できる。 NECの顔認証セキュリティソフトウェア「NeoFace Monitor」を活用すると、顔認証による本人確認も可能になる。

 ホワイトカラーを中心に、多くの仕事がPCによる作業に連携していることから、NECではPCの操作を正確に記録することで各自の「働き方」を可視化できると考えた。そして、2016年から開発に着手して2017年にこのサービスをリリースした。

 働き方見える化サービスを導入するメリットについて、NECでは三つの効果を提唱している。一つ目は、「テレワークの実践的な導入」。二つ目は、「長時間労働の是正」。そして三つ目が、「業務プロセス改革」になる。

 働き方改革の基本的な導入例として、多くのメディアでも取り上げられているのは、会社での業務を家やサテライトオフィスなどで行うテレワークだ。しかし、すでにテレワークを導入している企業では、実運用に至るまでに多くの苦労を重ねてきた。その最大の障害が、「本当に仕事をしているのか」という上司と部下の信頼関係にあった。仕事の中心がPCの操作になっても、旧態依然の勤務体系に慣れている職場環境では、上司の目の届く範囲で部下が在籍している風景が必要だった。そのため、いくらテレワークを推奨しても「見えないところで働く不安」を払拭できなかった。

 そんな課題を働き方見える化サービスは解決する。PCの操作をクラウド経由で遠隔からモニタリングできるので、テレワークを行う部下は勤務状況を客観的に証明できる。上司も、部下の業務や勤務状況がチェックできるので安心だ。実践的なテレワークを実現するモニタリング機能を使うだけならば、働き方見える化サービスのスタンダード版が1 IDあたり月額500円(税別)で導入できる。そのため、これまでテレワークに関連する制度やテクノロジーの構築が遅れていた中堅・中小企業でも、短期間で実践的な仕組みを導入できる。

 さらに、トライアルの期間もあるので、ワーキング革命の商材としても提案しやすい。実際に、昨年のリリース開始から、すでに数十件の導入やトライアルが進んでいる。首都圏だけではなく自動車で通勤する地方都市で導入された事例もある。PCによる作業が中心であれば、わざわざ自動車で出社してから客先に向かうのではなく、必要な作業は家で行い、直接得意先を訪問する、といった効率のよい働き方を実践できるのだ。

NECの働き方見える化サービス「見える化ダッシュボード」の画面。

働き過ぎの抑制や業務プロセス改革にも有効

 働き方見える化サービスを導入するメリットの二つ目となる長時間労働の是正は、PCの作業ログを集計することで発見できる。テレワークを導入すると、社員によっては働き過ぎてしまう傾向がある。メールやSkypeなどを勤務時間外にも利用したり、ファイルを遅くまで編集するなど、良かれと思って長く働いてしまうのだ。そうした隠れ残業の発見においても、働き方見える化サービスの導入は効果的だ。また、隠れ残業を前向きに改善していくために、特定の個人に作業が集中していないかを上長がチェックする、といった使い方にも威力を発揮する。

 Outlookなどのグループウェアに登録されている会議や予定などのデータを自動集計して、業務の時間配分を確認できるので、業務プロセス改革にも貢献する。移動や会議などに無駄な時間を浪費していないか、重複している業務がないか、などをチェックして、最適な業務配分へと改革できるようになる。

 これら三つの効果に加えて、資産管理という観点からも、PCのモニタリングによるソフトウェアの棚卸しというメリットが得られる。働き方見える化サービスでは、各自のPCが何のソフトウェアをどのくらい利用したのかを正確にモニタリングする。その仕組みを応用して「ライセンスは契約しているけれども、ほとんど使われていないソフトウェア」を発見できるのだ。ライセンス契約の見直しによるソフトウェア資産額の低減も実現する。

 これらのメリットを得られる働き方見える化サービスは、機能がすべて揃ったアドバンスド版(1 ID 月額980円:税別)となる。

NECの働き方見える化サービス「勤務実績一覧」の画面。

テレワークがもたらす社員へのポジティブな効果

 働き方見える化サービスを実際に導入してテレワークを実践しているNECでは、育児や介護といった特定の条件による申請ではなく、社員が広く平等に利用できるようにしたことで、ポジティブな導入効果が現れているという。それは「通勤時間からの解放」というメリットだ。平日の一日だけでも、朝夕の通勤ラッシュに揺られない時間を得られることで、心身ともにリラックスできワークライフ バランスを実現した社員が多いという。その結果、在宅での業務に集中できるようになり、ビジネスの面でもポジティブな効果を発揮している。テレワークというと、とかく「家で他の用事があるから」という理論に結び付けがちだ。しかし、そうした理由がなくても、通勤という日常から解放される日を提供するだけで、社員には大きな効果が現れる。

 テレワークの手軽な導入を支援する働き方見える化サービスの提案は、将来的にはモバイル性能に優れたPCの需要を喚起し、Wi-Fiルーターや各種モバイル機器の販売にもつながる。

(PC-Webzine2018年2月号掲載記事)

筆者プロフィール:田中亘

東京生まれ。CM制作、PC販売、ソフト開発&サポートを経て独立。クラウドからスマートデバイス、ゲームからエンタープライズ系ITまで、広範囲に執筆。代表著書:『できるWindows 95』、『できるWord』全シリーズ、『できるWord&Excel 2010』など。

この記事は、ICTサプライヤーのためのビジネスチャンス発見マガジン「月刊PC-Webzine」(毎月25日発売)からの転載です。

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