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2018/06/08

ワーキング革命 - 第27回

中小企業・小規模事業者の働き方改革

厚生労働省は、昨年の夏から年末にかけて「中小企業・小規模事業者の働き方改革・人手不足対応に関する検討会」を実施した。その議事録と資料から、対応が遅れているという中小企業・小規模事業者の働き方改革について考察する。

文/田中亘


この記事は、ICTサプライヤーのためのビジネスチャンス発見マガジン「月刊PC-Webzine」(毎月25日発売)からの転載です。

公式サイトはこちら→ PC-Webzine

中小企業・小規模事業者の抱える課題

「中小企業・小規模事業者の働き方改革・人手不足対応に関する検討会」は、これまでに3回開催されており、その中で中小企業・小規模事業者の抱える課題が取り上げられてきた。公表されている資料によれば、中小企業は、毎月の残業時間が45時間を超える事業者の割合は大手企業よりも少ないものの、深刻な人手不足の中で、いかに労働時間を短縮させていくかが課題だという。中小企業における時間外労働の要因としては、「取引先の納期や発注量への対応」などが挙げられている。

 こうした課題に加えて、「働き方改革」そのものへの理解が進んでいない現状や、小さな工夫や業務の見直しによる生産性向上への取り組みが促進されていない現状もある。その背景には事業改善などを外部に依頼できない経営規模の問題がある。さらに、IT化においては相談者の不足や不在、機器やシステムのリニューアルへの遅れなどが課題となっている。そのほかにも、ロボット化への設備投資や人材確保、事業継承といった問題も抱えている。

 根底の原因にあるのは人手不足だ。それは、単に仕事に従事する社員の数が足りない、という問題ではなく、働き方改革を含めた業務全体を俯瞰して改善していくスキルや経験を備えた人材の不足を意味している。大手企業では、業務や組織の課題を解決するために、複数の部署から異なるスキルを備えた人材がチームを組んで対応できる「余力」がある。それに対して、中小企業では一人ひとりの社員が貴重な労働力なので、間接的な業務に労力を割くことができない。

 例えば、ITに関する人材を大手と中小企業で比較してみると、IT部門の有無や専任者の数で、圧倒的な違いがある。大手企業には、当然のようにIT部門があり、さらにその中でもネットワークやアプリケーション、ヘルプデスクなど、技術や業務の内容によって部門や専任者が分かれているケースが多い。対する中小企業では、総務部がIT業務を兼務していたり、専任者は不在で多くのシステム構築や運用を外部に委託している。こうした現状では、働き方改革のためにITを活用するといった発想や仕組みを考えるのは難しい。

クラウドで紙とExcelから解放

 中小企業が抱える深刻な人材不足を解決するためにはどうすればよいのか。「中小企業・小規模事業者の働き方改革・人手不足対応に関する検討会」では、外部識者として参加した社会保険労務士が、「勤怠・人事の労務クラウドシステム」の導入事例を紹介している。

 例えば、ある中小企業では給与計算のために、社員が紙の出勤簿に記入した出社時間を、管理部門が各拠点でExcelに入力していた。そのワークシートを管理部がチェックして、一覧表に再入力したデータを社労士事務所に送信していた。この業務を勤怠クラウドシステムに置き換えたところ、従業員も管理部も社労士事務所も、クラウドにある単一の勤怠データを参照できるようになり、多拠点での勤怠管理の効率とコストを大幅に改善したという。

 人材採用においても、労務クラウドシステムの導入によって、管理部が内定者の情報をExcelに入力してチェックする手間を省略できるようになり、これまで15日かけていた採用への期間を3日に短縮したというケースがある。これらの事例に関する議事録内の発言のポイントは以下の通り。

  • ITクラウドシステムにおける中小企業の実態として、存在は知っているが、高額だと思っている。
  • どんなクラウドシステムがあるのかを知らない。
  • 紙をPCで管理できれば検索機能などですぐに探せることを知らない。
  • 業務効率化、コスト削減できることを知らない。
  • 自社の従業員がITリテラシーが高くないので、使いこなせないと思っている。
  • 経営者が提案しても「それは大企業の話ですよ」と遮る労働者が社内に絶対いる。
  • 経営者が、どのITクラウドシステムが自社に合っているのかわからない。
  • ITリテラシーが低い社員からの反発に遭い、リタイアしてしまう。

 これらは、中小企業の多くの経営者が抱えるIT化の課題を凝縮している。

“高齢者×クラウド”による新たな解決策

 人材不足とITリテラシーの低い社員からの反発という課題を抱える中小企業の経営者は、これらの課題をどのように解決していけばいいのか。そのアイデアの一つとして、検討会に外部識者として参加した公認会計士による「高齢者×クラウド」という提案がある。

 例えば、平均年齢が66歳で最高齢が73歳に達する鹿児島のある中小企業では、クラウド会計システムを不安なく操作して利用できているという。会計システムをクラウド化したことで、中小企業と会計事務所が同時に経理データを参照できるようになり、事務効率が大幅に向上した。会計のクラウド化は、社内で経理業務を行う社員の在宅勤務も可能にする。

 福岡の会計事務所の事例も挙げられている。経理業務を担う人材そのものをクラウドソーシングで募って、記帳代行などの作業から、請求書の発行や支払い代行など、さまざまなバックオフィス業務のアウトソーシングに取り組んでいる例だ。また、会計や給与計算にクラウドサービスを導入することで、遠隔地からでも日々のキャッシュフローや労務コストの確認・管理を実現し、業績の改善や効率的な経営を可能にした事例も紹介されている。

 こうした事例から考察できるのは、「改めてクラウドの成果を見直す」という中小企業に向けたワーキング革命の提案だ。最新のIT関連記事の多くは、仮想化やテレワーク関連デバイスなど、最先端の技術やシステムを取り上げがちだ。しかし、中小企業が求める真の解決策は、クラウドをベースにした「実業に近いソリューション」にある。加えて、高齢者に代表される「知見のある人材」の再雇用やクラウドソーシングのような活用が、解決の糸口となる。

 手書きとExcelを併用している業務の多くは、クラウドによるシステム改善が可能だ。そしてそれこそがワーキング革命提案のポイントなのだ。

(PC-Webzine2018年6月号掲載記事)

筆者プロフィール:田中亘

東京生まれ。CM制作、PC販売、ソフト開発&サポートを経て独立。クラウドからスマートデバイス、ゲームからエンタープライズ系ITまで、広範囲に執筆。代表著書:『できるWindows 95』、『できるWord』全シリーズ、『できるWord&Excel 2010』など。

この記事は、ICTサプライヤーのためのビジネスチャンス発見マガジン「月刊PC-Webzine」(毎月25日発売)からの転載です。

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