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完全自宅勤務!しかも570km離れた青森で!――ピースオブケイク


クリエイター向けの課金コンテンツプラットフォーム「cakes」、個人とユーザーをつなぐメディアサービス「note」といった、新たな“メディア”を世に送り出しているピースオブケイク。今回は渋谷 道玄坂の同社オフィスにお邪魔し、加藤貞顕CEO、今雄一CTOにお話を伺う機会を得た。そこで見たものは“リモートワークのお手本”ともいえる働き方だった。

このスマートオフィスが凄い - 第1回

完全自宅勤務!しかも570km離れた青森で!――ピースオブケイク

「Appear.inやSlackを活用してリモートワークを実現! ネット越しでも感情は伝わる」

文/二瓶朗


ピースオブケイク社CEOの加藤貞顕氏。数々のベストセラーを手掛けた編集者としても名高い。

ピースオブケイク社CTOの今雄一氏。

ピースオブケイクが都心・駅近にオフィスを構えた理由

 ピースオブケイクの現在のオフィスは渋谷の道玄坂にある。同社が現在の場所に引っ越したのは約2年前、2014年の7月だ。事業規模の拡大に伴って、同じ渋谷区から移動してきた。その際、オフィスのフロア面積と所属する社員数は約2倍になったという。

── なぜ道玄坂を拠点に選択したのでしょうか?

加藤 「弊社はオンラインサービスを展開していますが、クリエイターの方々と直接顔を合わせて打ち合わせをすることも少なくありません。そのため、アクセスしやすい都心にオフィスを設ける必要がありました」

 入り口のドアをくぐると大きな書棚があり、来客者の目線をいったん遮ると同時に簡易的な「受付」の役割も果たす。オフィス全体のデザインはベンチャー的だが、書棚に詰まっている大量の書籍を眺めていると、この企業がクリエイターと共に歩むプロデュース会社でもあることを思い出した。

 現在のオフィスはワンフロアで、サービスの開発を担うエンジニア集団と、クリエイターを発掘したりその作品を管理したりする編集スタッフが寄り添うようにして仕事に励んでいる。エンジニアと編集チームたちは机の島こそ違うものの、パーティションやデスク上の高い書棚などもなく見通しがとても良い。なお、わざわざ触れるまでもないかもしれないが、Webサービスを提供しているとはいえクラウドサービスを利用した運営ということもあり、オフィスにはサーバールームのたぐいも設けられてはいない。

 社員たちのデスクの傍らには、天板の位置が腰よりも高いテーブルが備え付けられている。テーブルの天板下はハンガーになっていて、社員たちは上着などを掛けているようだ。

── ずいぶん高いテーブルですね。

加藤 「ここで立ったままミーティングしています。長丁場になりがちな議題でも、立って集中して行うと時間が短縮できたりするんです。毎朝のミーティングをここでこなす他、エンジニアが気分転換がてら立ったまま作業することもありますね」

受付的な役割をする書棚。企業イメージを現すアイコン的意味合いもありそうだ。

エンジニア系と編集系で島は分かれているそうだが、この見通しの良さは魅力的。

 さらに窓際には、低めのテーブルとソファ、それから道玄坂を見下ろすように設置されたカウンター。周りにはバーベルとトレーニング用のベンチが無造作に置かれ、天井には懸垂バーが設置されている。普段はリフレッシュスペースとして利用されるが、プロジェクターが設置されているので、社員が集まって長めの打ち合わせに使うこともあるとか。

加藤CEOに、天井から吊られた懸垂バーにぶら下がっていただいた(恐縮です!)。充実したリフレッシュスペースはうらやましい限り。

 ……と、ここまで同社のオフィスについて概要を解説してきたが、確かにオシャレポイントがいくつもあって、社員にとって居心地の良さそうなオフィスではあるものの、今回取材に伺ったテーマである“スマートオフィス”の姿はほとんど見えてこない……とおもいきや、意外な展開が待っていた。

リモートワーク成功の秘訣はコミュニケーションを重視すること

 社員の皆さんが仕事に励むスペースからほんの少し離れた応接室に通された取材班。CTOの今氏はおもむろにノートPCを広げ、壁面のディスプレイに接続。そして「Slack」を起動し、とある人物を呼び出したのだった。

 Slackとは、言わずと知れたビジネス向けコミュニケーション・チャットツール。多くのICT企業で採用されている鉄板アプリと言っていい。さらに今さんは「appear.in」にアクセスしてビデオチャットを開始した。appear.inは、面倒なログインやアカウント登録が一切不要なブラウザベースのビデオ会議サービスだ。

 そして今氏がネット越しに呼び出したのは、青森県在住のエンジニア・福井烈氏。渋谷区道玄坂からはるか離れた青森に住む、れっきとしたピースオブケイクの社員である。福井氏は、現時点で同社唯一の「完全自宅勤務」スタッフなのである。慣れた様子で今氏とビデオチャットを開始した福井氏に、取材班もネット越しに質問してみることにした。

appear.inを使ってビデオ会議に参加する福井氏。画面左側が道玄坂オフィスの映像。

── まず、福井さんはなぜ青森にいらっしゃるのですか?

福井 「前職は都内の某企業でフツーに働いていたのですが、家庭の事情により妻の実家のある青森へ戻る必要が生じました。前職を辞めたあとは青森で勤務先を探そう、と思っていたのですが、遠隔勤務が可能なエンジニアを探しているという話を聞き、このピースオブケイクでお話を伺ったところ、無事に採用されることになったのです」

── はじめから“青森で自宅勤務”という条件で入社を決めたということですか!?

福井 「そうなんです。入社して普通に勤務をこなしていたところ、何らかの事情で自宅勤務、というケースは珍しくないと思いますが、私の場合ははじめから遠隔地での自宅勤務という条件で採用していただきました」

── 会社側はどのようなお気持ちで採用を決めたのでしょう?

加藤 「とても優秀なひとだし、遠隔地での自宅勤務というかたちもおもしろそうだからいいのではと思いました。そもそも東京のスタッフも週一のリモート勤務などもやっていましたし」

 福井氏が入社したのは2015年2月。入社後約3ヵ月間は企業マインドや業務内容を学ぶために本社オフィスへ通う日々が続いたという。その後、満を持して青森へ移住し、在宅勤務によるリモートワークが始まった。福井氏は、同社サービスのバックエンド部分を担当するエンジニア。そのため、外部の人々と顔を合わせて打ち合わせをするような機会はまずない。ピースオブケイクの道玄坂オフィスが駅近にあり、スタッフがクリエイターの皆さんと顔を合わせることを重視して通勤している事情とは真逆の立場で勤務しているということになる。

 また福井氏によれば、およそ月一で上京してミーティングをするが、通常は前述したSlackを使い、道玄坂オフィスのエンジニアや経営陣と打ち合わせしているという。そもそもオフィスにいるスタッフ同士も、日常的な会話にSlackを使っているというから、打ち合わせや業務の進行に支障はないとのこと。そして必要に応じて、appear.inでビデオ会議を行う。先ほどオフィスの解説で紹介した“プロジェクターのあるリフレッシュスペース”を使って、毎日12時からエンジニアスタッフたちとビデオ会議をするのだという。

今 「ネット越しのビデオ会議でも、本社スタッフにお小言を言ったり檄を飛ばしたりすることがありますからね(笑) そういう“感情”もキチンと伝わることがわかりました」

青森の福井氏と会話を進める加藤氏と今氏。本格的にリモートワークが始まってからおよそ1年経つこともあり、ビデオ会議でのやり取りも全員スムーズだ。

在宅勤務で重要なのは自己管理

 遠隔地であることは置いておいても、ほぼ100%の自宅勤務をこなすとなると、抱えているプロジェクトをスケジュール通りにこなすのはなかなか難しいのではないだろうか? 取材班はその点を直接ぶつけてみた。

福井 「自宅で働くということに、もちろん不安がありました。勤務中と休憩の切り替えが難しいですからね。いかにしてサボる心を潰すかという(笑) 自宅勤務で成果が上げられるかどうかは、やっぱりその人の性格によるんじゃないでしょうか?」

加藤 「エンジニアなら、ある程度経験があることが必要かもしれませんね。誰かに教えを請う必要がある人だと、100%の在宅勤務は難しいかもしれない。自分1人で作業もできて、部下に的確な指示ができる、そういうエンジニアであれば、在宅勤務に向いていると思います」

 福井氏は、自宅で作業する際の集中力維持のために「ポモドーロ・テクニック」を使っているという。ポモドーロ・テクニックとは、1サイクル25分の作業+5分の休憩を繰り返すというもの。作業が途中でも必ず25分で休憩を5分入れることによって、作業の集中力が高まり、生産性もアップするという。これを16回繰り返せば、8時間の就業時間がキッチリ確保できるというわけだ。エンジニアであれば、作業途中でも比較的無難に小休止を入れられる。自宅作業を続けるエンジニアにとって最適のメソッドと言えるだろう。

福井 「ただ、大勢のオフィスで働くメリットもあると思います。同僚の働きぶりをなんとなく把握することで、自分の“やる気”につながってきます。ナチュラルにやる気が持続するということは、やはり幸せなことだと思います」

自宅の周りにはのどかな田園風景が広がっている。福井氏は、青森で現地のエンジニアやWebクリエイターに声をかけ、勉強会を開催しているという。

 ピースオブケイクでは、東京オフィスにいるエンジニアたちにも中心に週一の自宅勤務を推奨しているという。クリエイターたちと積極的に顔を合わせることを重視して都心・駅近にオフィスを構える同社だが、一方でそのクリエイターが力を発揮するプラットフォームを管理するため、粛々と自宅勤務する優秀なエンジニアが青森に住んでいる――。このコントラストに面白みを感じつつ、オフィスを後にしたのだった。

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