筆者プロフィール:坂本俊輔
株式会社グローバル・パートナーズ・テクノロジー代表取締役社長。CIOアウトソーシング事業を手掛け、数々のユーザー企業の体制強化を支援している。内閣官房政府CIO補佐官も務める。また、スマートワークを自社に積極導入しており、東京都テレワークイベントなどにおいて多数のパネリスト登壇実績を有する。
2019/08/22
CIO(最高情報責任者)は、まだ耳慣れない言葉かもしれない。しかし、ITの進展に伴って、企業内ではCIOの果たすべき役割が求められるようになっており、それは企業戦略やスマートワークの実現にも深くかかわる。多くの企業ではIT担当者にそのお鉢が回ってくる。そんな「新米CIO代理」がスマートワークのサポートを実現するためのノウハウを紹介していく。
文/坂本俊輔
AI、IoT、データビジネス、働き方改革、ロボット化、セキュリティ。
経営者が今後のビジネスを考える上で耳にするキーワードの多くには、IT関連技術が伴う。
「自分の右腕として、これらのトレンドについて把握し、自社のビジネスをどのように変革していくかを考え、実行推進してくれるCIO(最高情報責任者)やCDO(最高デジタル責任者)※1 が自社にいてくれれば・・・」
そんな思いを持つ経営者は多いに違いない。しかし、一部の超大企業を除いては、CIOの設置率は非常に低い。売上100憶円~1000億円の企業でも、CIO設置比率は10%に留まるという調査結果 ※2 がある。その10%についても、社内ITの管理だけをしているIT部門の長に、CIOという肩書を付けているだけの場合も多い。
このようにCIO不在の中、多くの場合、経営者が検討指示をする相手はやはり社内IT担当者だ。IT技術が必要で、社内IT環境との連携要素が多い検討テーマを推進するには、まずIT担当者に検討をさせるというのは自然なことだ。
一方で、社内IT担当者の立場からすれば、経営者から「思いつき」のような検討指示を受けて困った経験がある人も多いに違いない。目先に社内ITの運用などの仕事が溢れている中で、このような経営者からの指示にどこまで力を入れて取り組む必要があるのか、悩むことになる。
※1)・CIO(最高情報責任者)とは、IT投資の企画、実行管理の責任を負う経営陣の役割の1つで、主に社内の仕組みのIT推進を担う。ITを用いて企業や事業の変革を推進する責任者であるのでため、当然必要な知見はITに留まらない。経営戦略や事業内容を深く理解し、関係者を巻き込んで推進するリーダーシップが求められる。一般的に、情報システム部門の業務所掌を超えるため、情報システム部門の責任者では務まらない場合が多い。 ・CDO(最高デジタル責任者)とは、社内の仕組みの改革よりは、むしろ、顧客接点の領域のデジタル化を推進し、製品・サービスの創造や高度化が主たる役割となる。ただし、CIOとの明確な線引きはない。
※2)出典:日本情報システムユーザ協会調査2019 https://juas.or.jp/cms/media/2017/02/it19_ppt.pdf
経営者からのさまざまな指示がIT担当者を混乱させる
このような指示に対応していくためには、社内IT担当者は、従来の仕事の進め方や姿勢を大きく変えることが必要だ。いうなれば、「社内IT担当者」ではなく、「CIO」のつもりで臨むことが求められる。とはいえ、いきなり「CIO」になれるわけではないので、本コラムでは「CIO代理」ということにしよう。
本連載では、働き方改革法の施行によって機運が高まる「スマートワーク」を題材にして、新米の「CIO代理」が検討を進める上でのヒントやガイドとなるようなコラムを掲載していく。
スマートワークとは、労働時間の短縮とは違う、時間と場所にとらわれない柔軟な働き方のことだ。
2018年6月に成立した「働き方改革関連法」が2019年4月から順次施行されている。企業としては、この法令を遵守するための取組みを進める必要があるが、単に労務管理を強化して労働時間の短縮に図るのではなく、労働生産性を高める検討の機会とすることが重要であり、このためスマートワークに対する注目が高まっている。
スマートワークはITの力で自由な働き方を実現する
スマートワークの実現にあたっては、IT技術やセキュリティ対策の検討が不可欠であり、すでに、経営者からIT担当者に対して検討指示が出ているケースも多いことだろう。
とはいえ、スマートワークは、IT技術だけで実現できるものではない。労務制度の見直し、経営者や従業員のマインドの変革、取引先の理解の獲得など、スマートワークを推進するために取り組むべき事項は多岐に渡る。やはり、従来の社内IT担当者としての役割を超えて、「CIO代理」としての取組みが必要になるだろう。
さて、具体的なスマートワークの導入手段の話に入る前に、「CIO代理」として身に付けるべき業務姿勢について、簡単に触れておく。
社内IT担当者とCIO代理の比較
代理とは付いているものの、基本的には「CIO」に求められる業務姿勢そのものだ。
とはいうものの、心構えを変えるだけで、ある日突然スーパーマンになれるわけではない。スキル・知識が不足しているとしても、まずは業務姿勢だけはこのように変えていこう、という意味での「代理」であり、さらに、このコラムでは、このような業務姿勢をこれから目指していこうという「新米CIO代理」をターゲットにしているので、ご安心いただきたい。
さて、あなたは、経営者から働き方改革を有効に進めるためのスマートワークの導入についての検討指示を受けた。具体的な実現内容の説明はない。おそらく、質問をしても出てこないだろう。経営者自身もスマートワークの実現方法やメリットを十分にイメージできていないのだから。
業務姿勢で述べた通り、自ら要件や実現内容を提案していくしかない。では、まだ右も左もわからない「新米CIO代理」として、いったいどこから着手していけばよいのだろうか。今後の連載において、一歩ずつその疑問に対するヒントをお伝えしていきたい。
次回は、まず、さまざまな情報を集めながら、数年後の自社の働き方をイメージするところから始めてみる。
その後、ネットワークやデバイス、セキュリティのあり方の検討、そして、社内他部門も巻き込んだ労務管理の整備や社員教育等の検討について、順次進めていくことにする。
株式会社グローバル・パートナーズ・テクノロジー代表取締役社長。CIOアウトソーシング事業を手掛け、数々のユーザー企業の体制強化を支援している。内閣官房政府CIO補佐官も務める。また、スマートワークを自社に積極導入しており、東京都テレワークイベントなどにおいて多数のパネリスト登壇実績を有する。
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