デバイス × ワークスタイルで変わるソリューションの未来

MM総研 中村成希アナリスト


テレワークの推進やサテライトオフィスの活用、小中学生の学びや授業を行う教諭など、時間や場所に捉われない働きかたや学びの実現に向けて“いつでもどこでもネットがつながる環境”や“安心安全に使えるPC環境”が求められています。今回はモバイルPCのサービス市場やIT企業の競争戦略などに精通するMM総研の中村成希アナリストに、これからの新しい生活様式に求められるソリューションの未来について聞いてみました。

文/古作光徳


3年後、モバイルノートPCの5台に1台がモバイル通信搭載に

中村 モバイル通信の高速化や低価格化とあわせて搭載PCの選択肢が増えることで、3年後にはモバイルPC市場の5台に1台がLTEや5Gといった通信モジュールを内蔵したPCが占めることになるでしょう。外出先でモバイルPCをインターネットに接続するには、モバイルルーターなど通信機器を持ち歩く必要がありました。通信モジュール内蔵によって持ち運びがコンパクトになり、個別資産管理が不要となるため、1台にまとめた方が利便性と運用管理の向上につながります。さらに、PCがスタンバイ状態でもネットに繋がる“Always Connected PC”状態が維持できれば、メールやメッセージなどもリアルタイムに受信できるため、よりシームレスなコミュニケーションが行なえ、業務の効率化にも繋がるといったメリットもあります。

 モバイル通信搭載PCは、これまで生命保険などの営業渉外端末での導入実績があり、エンタープライズ向けでは普及していますが、特定の業種や業務の中だけで利用されるのではなく、多くの業種や消費者が利用すると中村氏は予測。2020年現在、国内法人のPC・タブレット出荷台数に占めるLET/5G通信内蔵PCの比率は約10%に留まっていますが、3年後の2023年にはおよそ23%、実に5台に1台以上のPCにLTE/5Gの通信機能が内蔵されると予想しています。

モバイル通信機能搭載PC環境の整備ひとつで次世代を担う人材のクオリティも大きく変わる

中村 モバイル通信搭載PCは常時繋がるといったメリットだけでなく、通信料金の公私分計や、PCとSIMカードの個別識別番号を紐付けることで“確かに会社が支給したPC”という認証にも活用できます。会計分離やセキュリティ面でもメリットが得られるのが大きな特徴です。これからの社会を担う学生たちは、学校で当たり前のようにクラウドやインターネットを活用して学ぶようになります。そういった世代の学生たちが社会へ出てきたとき、モバイルPCの常時インターネット接続は当たり前で、社内でクラウドなどの活用が遅れていると、それだけで獲得できる人材のクオリティにも差が出てしまいます。

出典 : MM総研

リアルとデジタルの融合で学び舎のカタチと教諭の働き方が大きく変わる

中村 生徒1人1台のコンピューター端末と高速なネット回線を全国の小中学校に整備する。そんな“GIGAスクール構想”により、教育現場のICT化が急激に進んでいます。とはいえ、学校の授業は日本が近代化国家としての道を歩み始めた明治時代から紙と鉛筆、ノートや教科書で行ってきた世界。明日からいきなりデジタル化するといったような急激な変化に対応するのは、難しいとも言われています。実際、過去20年近くに渡って議論が行われてきた教育のデジタル化ですが、いまだに実現には至っていません。しかし、新型コロナウイルスの流行で遠隔学習に注目が集まり、教科書やドリルなど日常の学びにデジタル技術を活かすことで学びのスタイルはもちろん、教員の働き方も大きく変わっていくと思います。

児童生徒の学びを最新PCでサポート
高性能PCでデジタルコンテンツ活用と教員の働き方

中村 政府が2024年に本格導入を計画するデジタル教科書やドリルなど補助教材のデジタル活用は、端末だけでなく高速なインターネット回線が必要不可欠ですが、デジタル化が進むほど、下りだけでなく上りでも高速回線が必要になるでしょう。デジタル化により、子供たちは多くのコンテンツをインターネットで広く表現するようになります。先生も、指導法や授業、小テストなど多くのコンテンツを生み出し、やり取りしていくことでしょう。学校のデジタル活用はダウンロード文化からアップロードを含む双方向に変化していくはずです。

 その時必要になる教員のIT環境を想像してみましょう。教科の学びだけ、テストの点数だけといったデータだけがインターネットでやりとりされるのでしょうか?家庭連絡、通知表、写真、動画、グラフ、デザイン、音楽、あらゆる学校活動から生み出されたコンテンツが、ネットを通じて必要な人々に共有されます。今回、児童生徒に配布する端末は予算制約がありました。しかし教員のPCはよりリッチな作業をこなすパワフルさが必要になってくるでしょう。学校のなかでも子供たちの作品は大画面のディスプレイにワイヤレスで表示するのが当たり前になりますよね。学校内にはコンテンツを作成、編集するスタジオ設備も欲しくなるのではないでしょうか。インターネットやクラウドを使いこなすほどに、手もとのPC環境をより高速に、高精細にとリッチな環境を求めていくのです。先生は、子供たちの個人情報を守るセキュリティや、作業を効率化するAIのサポートが必要になってきます。より高性能なPCが現場に必要になることは間違いないのです。

ワークスペースの分散で働き方そのものが変貌を遂げる

―― 新型コロナの流行で、在宅勤務やサテライトオフィスの活用といった具合に場所を選ばない働きかたである「テレワーク」が広がっていますが、同時にともすれば“労働生産性の低下”や“人材の育成、公平な評価の実現”など様々な課題も表面化してきています。経営や管理職の悩みもつきないのではないでしょうか。

中村 例えばIT企業の営業やSE、エンジニアリングなどの職種は、比較的スムースにテレワークにシフトしたのではないでしょうか。焦点は、テレワークを日常としたうえで、さらに業務や人材のマネジメントを進化させるか。会社の仕組みそのものの変革に取り組んでいる企業は、新型コロナ流行を追い風にむしろ進化し続けています。

 その時課題のひとつが広義の“セキュリティ対策”です。オフィスであれば、お互いが顔を合わせており、勤務状況が確認できることが当たり前でした。しかしテレワ―クの活用でオフィスという空間のなかで意識せずに守られていた情報漏洩や不正に対する対策が改めて必要になってきます。

インテル® vPro® プラットフォーム搭載PCなら従業員がどこにいてもサポート&メンテナンスが可能

中村 テレワークを推進する上でのセキュリティ対策は、技術を活用した対策も重要です。コロナ以前は、VPN接続やVDIなど従来型のセキュリティ対策が主体でしたが、EDRなどクラウド活用に適合した新しいセキュリティソリューションの活用検討も必要です。しかし、コロナに関係なくテレワーク推進上の基本的な対策のひとつとしてインテル® vPro® プラットフォームを搭載したPCを導入することも有効だと考えます。インテル® vPro® プラットフォームは、プロセッサーやチップセット、ネットワークインターフェースボード上にセキュリティ機能を実装するといったもの。BIOSレベルでセキュリティ管理が行えるため、PCの電源がオフの状態でもリモート操作によって電源をオンにしたりリモートコントロールを行ったりできます。例えば、オフィスの外で作業を行っていても、社内のエンジニアによるメンテナンスやアップデートの提供が受けられるといった恩恵があるほか、万が一の紛失や盗難時にもデータをロックしたり消去したりして流出を防ぐといったことも可能です。

 働く場所を問わない自由な働き方が当たり前となりつつあります。大切な情報を扱うPC端末だからこそ、企業がネットワークを介してアクティブに、安全に管理できる環境構築が重要になってきています。インフラを整え、業務を支える従業員の意識改革を進めるのは当たり前です。これからは、経営陣をはじめとする各企業のリーダーが、IT投資をより広く、深く理解し、自社への活用要点と実行度合いを明確に把握していくことが一層重要になってきます。3年後は、経営と従業員が一体となってIT活用を実行する企業が、新型コロナ流行を契機に大きく飛躍しているでしょう。