複数SIMカード使い分け時代の到来? SIM CHANGER ⊿の衝撃

格安SIMの個性的なプランを良いトコ取りできる!?

文/二瓶 朗


SIM CHANGER ⊿(デルタ)とは?

 「SIM CHANGER ⊿(デルタ)」は、iPhoneおよびAndroidスマホ、そしてSIMスロットを内蔵したLTE通信が可能なタブレットなどとBluetooth接続することで、複数のSIMカードを自由に切り替えながら使えるようにするデバイスだ。

 SIM CHANGER ⊿には最大4枚のSIMカード(ナノSIMカード×2枚、マイクロSIMカード×2枚)を挿入できる。そしてモバイルデバイス側のSIMスロットに専用の「ブリッジカード」を挿入することで、両者はBluetooth通信でワイヤレス接続されることになる(ブリッジカードはiOS用とAndroid用の2種類が存在)。SIM CHANGER ⊿とモバイルデバイスの接続が完了したら、SIM CHANGER ⊿で利用するSIMカードを選択することで、そのモバイルデバイスは任意のSIMカードを介した通信が可能となる。

本体にはナノSIM2枚、マイクロSIM2枚の計4枚分のスロットがある。

 SIMカードの切り替えにはモバイルデバイス上で専用アプリを利用する。ポイントは、SIM CHANGER ⊿はSIMカードの情報をモバイルデバイスに送るだけで、それ自体が通信するわけではないということ。つまりこの製品は新手のモバイルルーターではなく、あくまでも複数枚のSIMを切り替えて使うための単機能ガジェットなのだ。なお、SIM CHANGER ⊿のこの基本機能は、NTTドコモが開発した「PSIM Suite(ピーシム スイート)」という技術を採用している。

 SIM CHANGER ⊿の本体サイズは80×50.8×45.8mmで、重量は約100gと非常にコンパクト。三角柱を横に寝かせたような形状だ。カバンに入れても場所をとらない。3400mAhのバッテリーを搭載し、1回の充電で約30日の連続利用が可能となっている。

SIM CHANGER ⊿はSIM切り替え専用ガジェットだ。

SIMを使い分けてモバイルワークを便利に、おトクに!

 このところ、大手キャリアよりも安い通信料で利用できる、いわゆる「格安SIMサービス」が花盛りだ。SIMフリー端末は珍しいモノではなくなり、キャリアで購入した契約・購入したスマホも条件を満たせばSIMロック解除が可能。格安SIMサービスの敷居は確実に下がったと言えよう。

 その結果、マニア以外でも複数のSIMを使い分けることで得られるメリットが出てきた。格安SIMサービスを提供する企業は“SNS利用が無料”などそれぞれ特徴のある個性的なプランを用意している。データ通信に特化して安価に使えるプランがある一方で、通話し放題のプランを備えたSIMカードもある。

 そこで、3大キャリアのほかにサブ回線として格安SIMを契約し、機会に応じて使い分けることで通信料金をセーブすることが可能となる。また、会社から支給されたSIMカードとプライベートのSIMカードを1台のスマホで使いたいと考える人もいるだろう。海外出張が多い人なら、海外通信事業社のSIMカードを差し込んでの通信・通話は日常茶飯事のはず。

 しかしスマホをはじめとするモバイルデバイスにはSIMスロットが1基しか搭載されていないことが一般的だ。ごく一部のAndroidスマホには複数のスロットを搭載する製品もあるが、まだメジャーとは言えない。使い方を変えるたびにSIMカードを入れ換えるのは手間がかかって現実的ではないだろう。また、SIMカードスロットもSIMカード自体も繊細な作りなので、SIMカードを何度も出し入れしていると故障の原因になりかねない。

 SIM CHANGER ⊿は、そういったSIMカードの交換の手間を省いて、複数のSIMを使い分けられるガジェットなのである。前述の通り、SIM CHANGER ⊿自体がLTE通信するわけではないため稼働時間も非常に長い。ブリッジカードを挿入したモバイルデバイスとリンクが完了次第、SIM CHANGER ⊿の存在を意識することなく、アプリからSIMを使い分けて賢く使えるというわけだ。

 なお、SIM CHANGER ⊿で利用できるSIMカードは、接続するモバイルデバイスに依存する。つまりモバイルデバイス側で動作確認の取れているSIMカードであれば、基本的にすべて利用可能だ。

 というわけで、このSIM CHANGER ⊿はさまざまな場所・スタイルで仕事をこなしているモバイルワーカーにとって便利なだけではなく、SIMカードを上手く使い分けて通信コスト削減を目指したい人にとってもふさわしい製品といえるだろう。

アプリから利用SIMを切り替えられる。

意外な人気でクラウドファンディングも大成功

 冒頭でも触れたが、このSIM CHANGER ⊿を製品化したのは、株式会社Cerevo。同社は発売に先駆けてクラウドファンディング「Makuake」を利用した資金集めを実施した。

 Cerevoからのコメントによれば、「クラウドファンディングは資金集めという側面だけでなくマーケティングに有効という面もあります。SIM CHANGER⊿はスマートフォンのヘビーユーザーの中でもさらにニッチなニーズをターゲットとした製品であり、そもそも需要があるのかを確認するという目的でクラウドファンディングを選択しました」とのこと。

 その結果、“物理的な挿し替えなしにSIMを切り替えられる”というコンセプトが多くの人の心を掴み、なんと出資を募った翌日には目標金額に到達してしまった。

 「これまでクラウドファンディングをいくつも手がける中で、クラウドファンディングは初日の伸びが非常に重要であるということは認識しています。また、今回の製品は『目標を達成してからのほうが安心して支援できる人もいるだろう』という狙いから、事業として成立しうる500~600万円という価格帯よりも低い250万円に設定していたため、早期の達成はある程度狙い通りでした。ただし、初日で本来の目標値をほぼ達成できたのは、予想以上の結果を得られたと手応えを感じています」(Cerevo)

 出資者には2017年3月中に製品が発送される予定で、出資者への送付完了後は直販サイトでの販売も予定されている。その際の価格は1万5000円前後だという。

 短期間でクラウドファンディングが成立したことからわかるように、このSIM CHANGER ⊿を欲しているユーザーは少なくない。複数のSIMカードを使い分けて活用する時代が間もなく到来するのは確実だろう。